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OB/OGが語る

情報収集で、「偏食」していませんか?【戦略コンサル特別寄稿:第2回】

全4回連載の第2弾。戦略コンサルティングファームである株式会社コーポレイト ディレクション(CDI)の方からご寄稿をいただきます。選考を通して見られているポイントについて、学生が持ってしまいがちな一般的なイメージとのギャップを、現役コンサルタントの生の声として語っていただきます。

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佐藤 沙弥  Saya Sato
コーポレイトディレクション(CDI) マネージャー

京都大学経済学部卒業後、コーポレイトディレクション(CDI)に入社。 ネットベンチャーや流通・小売業、サービス業等において、新規事業立案、事業再生支援、マーケティング戦略立案、事業デューディリジェンスなどのプロジェクトに従事。CDIの新卒採用活動にも携わる。
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 今回取り上げるコンサルタントに必要な素養は、情報を集める力です。ここでは、定量情報と定性情報の両方を含めて情報と呼ぶことにします。

 私たちはニュースなどで日々情報を集めますが、それはなぜでしょうか。興味のある話題について最新の動きを押さえる目的もありますし、単純な知識欲という理由もあるでしょう。もう一段掘り下げると、頭の中に蓄積された情報は、結局のところ何の役に立つのでしょうか。
これを理解するために知っておいていただきたいのが、「仮説思考」という考え方です。


効率的な情報収集は、仮説「検証」のため


 仮説思考とは、問いに対する仮の結論(=仮説)をあらかじめ決めてから、検証のための論理を組み立てたり情報を集めたりするアプローチのことです。仮説は、立てた段階ではいわば「思い込み」です。それを論理的に検証する(つまり、「それ、本当?」を繰り返す)プロセスを通して、柔軟に軌道修正を加えながら、「思い込み」をより確からしい結論に仕上げていきます。

 仮の結論が無い状態とは、ゴールがどこにあるかわからずに走っているようなものです。そんな状態で全力疾走などしようものなら、労力・時間・資金の無駄遣いを招きます。仮説思考は、様々な問題解決における効率性を大きく高めてくれる、大変有用なアプローチです。

 仮説は軌道修正が必要になる場合が大半なので、証明のために必要な情報を効率よく集める必要があります。このための方法論は、多くの本や記事で述べられているように思います。ロジックツリー※やピラミッドストラクチャー※といった言葉で説明されるような、あらかじめ検証のための論理を組み立て、必要な情報を特定してから収集に当たる手法です。また、よりテクニカルなweb検索スキルなども、効率を上げるためには大変有効です。
※ロジックツリー:ロジックツリーとは問題の原因解明や、解決策立案のために、問題を論理的に関連した要素ごとにツリー上にMECEに(モレなくダブりなく)分解していく方法。
※ピラミッドストラクチャー:ロジカルシンキングの一種。1つの主張を頂点に複数の根拠をピラミッドの下層に配置されるように組み立てる手法。


 一般的に情報収集スキルと言うと、目的のためにいかに効率を上げるかに着目されることが多いと思います。確かに、新人コンサルタントでもよくあるのが、「たくさん情報を集めたけれど、結局何が言いたいんだっけ?」という状態になってしまうことです。情報の海に溺れ、仮説思考ができていません。これでは、睡眠時間も短くなってしまいます(笑)。

 でも、ここで少し考えてみましょう。仮説検証のための情報は、仮説が合っているか間違っているかを示すことはできても、「よい仮説」そのものを生み出すことはできません。それでは、そもそも仮説はどのように生み出せばよいのでしょうか。
 お気付きの通り、ここでも役に立つのが情報です。ただし、仮説検証のための情報と比べて、役割も集め方も異なります。
 つまり、「仮説検証のための情報収集」と「仮説構築のための情報収集」では、性質が全く異なるのです。


仮説「構築」は、シャワーのように情報を浴びて初めて可能になる


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 では、仮説構築のための情報収集はどうすればいいのでしょうか。結論を申し上げると、残念ながら、「ひたすら」集め続けるしかないというのがシンプルな答えです。

 仮説の構築は、頭の中の情報を組み合わせてアウトプットをすることだと捉えることができます。良いアウトプットのためには、当然ながらインプットの量と質が伴う必要があります。インプットが積み重なっていない状態で唸って考えていても、よほどの天才でなければ何も生まれません。

 「アイデアのつくり方」という古典的な本があります。それまで才能に依存すると思われていたアイデアをひらめく「仕組み」を言語化した本として大変有名です。仮説構築はアイデアをひらめくことと大変似ているので、この本に書いてあるひらめきのプロセスはそのまま仮説構築に適用できます。

 この本のメッセージは、「よいアイデアは、ひたすら情報を集めて、嫌になるほど考えた後に、天から降ってくるようにして生まれる」という大変シンプルなものです。ひらめきの天才と言われるような人も、総じてこのプロセスを経ていると語られています。
 この本で情報収集に関して一貫しているのは、「ひたすら集める」ということです。情報の蓄積や整理の方法は紹介されているのですが、集め方については「ひたすら」としか説明がありません。効率的な近道は存在しないのです。

 実際のコンサルティングプロジェクトでも、仮説を作る段階ではとにかくシャワーのように情報を浴びます。書籍や業界誌を片っ端から読むのはもちろん、自分の眼で見に行くことや体験することも非常に大切にします。
 わかりやすい例を挙げると、小売のプロジェクトであればとにかく店に出向き、張り込んでお客さんをじっくり観察することもあれば、食品のプロジェクトではまずはひたすら食べてみることもあります(太ります笑)。
 また、世の中にまとまった形で存在しない情報を、「汗をかいて集める」ということも積極的にやります。こちらも例を挙げると、クライアント社員の行動を把握するために日報を一枚一枚読んだり、電柱の所在箇所を調べて地図にひたすらプロットしたり・・・挙げだすときりがないのですが、「ひたすら」という点が共通します。

 このようなプロセスは、一見すると無駄に思える、大変愚直なものです。しかし、この愚直なプロセスから得られた自分たちだけの発見を踏まえて初めて良い仮説が生まれ、そうしてやっと効率的な情報収集の段階に入ります。初めから効率性ばかりを追求していては、見えなくなってしまう物事がたくさんあると考えています。

その情報は、事実ですか?それとも意見ですか?


 仮説構築のための情報収集にあたっては、本、新聞、インターネット上の情報、人の話、等々、まずは何でも食わず嫌いせずにインプットすることが肝要です。この「食わず嫌い」というのは意外と難しく、多くの情報を手軽に入手できる今の世の中では、気を付けないと偏りが出てしまいます。「情報の偏食」に陥らないために私が気を付けたいと思っているのは、次の2点です。

①事実と意見を区別する
②一次情報に触れる

当たり前のことのように思えるかもしれませんが、いざ実行しようとすると意外と難しいと思います。

①事実と意見を区別する

 物事を正しく認識するために、情報が事実であることはとても大切ですが、「事実」「事実の推測」「誰かの意見」を明確に分けて認識したり発言したりすることは、本当に難しいです。ですが、これらを明確に区別する癖をつけないと、事実(もしくは事実に近いもの)にたどり着くことはできません。
これらを区別しようとする意識で、文章を読んだり人の話を聞いたりしてみましょう。多くの発見が得られるのではないでしょうか。

 一番気を付けたいのは、「誰かの意見」に偏重した情報です。その意見は明確な根拠に立脚しているでしょうか。また、ごく一部の事象や咄嗟の感情的な反応を、あたかも全体を表す事実であるかのように語っていないでしょうか。客観的な根拠の乏しい意見は、質の良いインプットにはなりません。

 それでは、明確な根拠のある他人の主張・所感・主観はどうでしょうか。
他人の物の見方自体から学べることはたくさんあります。しかしながら、やはり「事実」もセットでインプットしていかないと、自分なりの物の見方は生まれないと思います。
また、他人の物の見方は、正しい根拠に基づいていたとしても、その人のフィルターがかかっています。色々な情報をひたすらインプットする段階では、「事実」は「誰かの意見」と同じくらい、また場合によってはそれ以上に、自分の周りを正しく照らし、思考を深める助けをしてくれることがあります。特に数字は、主張の真偽や規模感を把握する上で、非常に強力な助けになります。

 インターネット上の情報を中心に、「誰かの意見」は非常に発信されやすくなっていると思います。だからこそ、自分なりの物の見方を醸成するためには、「事実」をより積極的に取りに行こうとする姿勢が求められていると感じます。

 「誰かの意見」をインプットとして活用する場合は、「〇〇という立場の人がXXという根拠に基づいて△△という意見を持っている」というように、あくまで客観的な事実として捉えることをお勧めします(この記事の内容自体、そのように捉えるといいかもしれませんね)。


②一次情報に触れる

 一次情報とは、自分が直接見聞きした情報や、ある目的のために自分が初めて収集した情報を指します。他の誰の取捨選択や解釈も受けていない、本当に生の情報と言えます。

 当たり前のことですが、直接見聞きしなければわからないことはたくさんあります。また、それを目の当たりにしてあなたが抱いた所感は、あなただけの「絶対に間違いの無い事実」です。一次情報とそこから得られる所感は、自分だけの仮説を作ることに大きく貢献してくれます。
 よく、「とにかく現場に行きなさい」と言われるのは、まさにそこで得られる一次情報に価値があるからです。また前述のように、コンサルタントが自分で体験したり、情報を「汗をかいて集める」ことを重視したりするのも、まさにこのためです。

 もちろん、「事実」や「一次情報」だけが情報として良質であるとか、それだけ収集していればいいということではありません。何も意識せずに情報を集めていると「事実」「一次情報」から遠ざかってしまいやすいからこそ、バランスを取るためにこういった情報を積極的に取りに行った方がいい、ということです。


仮説「構築」にこそ、情報収集の真価がある


 仮説の検証と構築では、どちらの方がより価値があるのでしょうか。もちろん両方が必要ですが、私は、仮説構築の方がより本質的な価値があると考えています。

 仮説検証であれば、論理に従い効率的に行うことが求められるので、いずれは人間よりも機械の方が得意な領域になるかもしれません。一方で、仮説構築の基礎となる情報には、過去に他人と話したことや、自分が感じたことなども含めた、あらゆる人生経験が該当します。
 つまり、人間ひとりひとりごとに、構築される仮説は違うのです。また、さらに遡ぼると、「答えるべき問い」を設定する着眼においても、同じことが言えると思います。

 仮説構築と問いへの着眼は個々の人間に依存し続けます。これが、コンサルティング会社がチームでプロジェクトを組む大きな理由の一つだと思います。もちろん仮説検証のための役割分担としてチームを組んでいる側面もあるのですが、それは本質ではありません。「これだ!」という筋の良い問いや仮説が生まれるのは、自分ひとりで考えているときではなく、他の様々なバックグラウンド・人生経験を持った人と一緒に考えているときです。コンサルティング会社に残り続ける価値は、「優れた問い・仮説を生み出せる集団」というのが一つの方向性かもしれません。


毎日触れる情報こそが、あなたの「頭をつくる」


 コンサルティングプロジェクトでは優れた問いや仮説を生み出すための情報収集に全力を尽くしますが、やはり時間は限られているので、普段からの情報蓄積がきわめて重要になります。体づくりにおいて普段の食事のバランスと質が重要であるのと同様に、「頭づくり」においても、普段から触れる情報のバランスと質が物を言うのです。

 コンサルタントに向いている人の特性として挙げられるのが、好奇心の旺盛さや知識欲の高さです。普段からまずは何でも体験してみる人、本でも新聞でもインターネットの情報でも何でも食わず嫌いせずに片っ端から読むことをいとわない人、などです。生きることや遊ぶことと情報収集がリンクし、心から楽しんで情報を集めている状態です。

 それは、必ずしも毎日ニュースを見ろということだけではありません。日々の生活の中で様々なことに興味を持ち、まっさらな気持ちで楽しんで一次情報に触れ、誰かのフィルターを通した情報には「それ、本当?」の精神を持って接する。そのようにして蓄積された情報すべてが、人生のどこかのタイミングであなたを助けてくれる可能性があります。その繰り返しによって、自分の眼に映る世界はより真実に近づいていき、また、優れた問いや仮説を生み出す感度も磨かれていきます。

 自分の論理を崩し得る情報すら貪欲に集めに行く姿勢を持たなければ、本当に良質な問いと仮説は生まれません。情報収集の価値は、仮説の証明を効率的に行うだけのものでは決してなく、自分だけの問いと仮説を探求するために、自分の人生経験や価値観まるごとを育てることにあると捉えています。だからこそ、普段からバランスと質に気を付けたいものです。

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■寄稿企業:株式会社コーポレイトディレクション
1986年に外資系戦略コンサルティングファーム出身の10名で設立された戦略コンサルティングファーム
「日本企業の真の変革」を目指し日本企業の特性に合ったコンサルティングアプローチの追求、既存の戦略コンサルティングの枠にとらわれない新たなサービス展開を行う。

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なぜロジカルシンキングが必要か、ロジカルに説明できますか?【戦略コンサル特別寄稿:第1回】

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