こんにちは、ビズリーチ・キャンパス編集部です。
毎年、就職人気ランキング上位を独占している総合商社。
ビズリーチ・キャンパスでは、これまで3回にわたって総合商社のビジネスモデル、ビジネス領域について解説してきました。
ありとあらゆるビジネス領域に幅広くポートフォリオをもちながら、「トレーディング」×「事業投資」の組み合わせたビジネスを展開しているのが総合商社でしたね。
そうした基礎理解をふまえたうえで、今回より総合商社の「ビジネス領域の総合性」を担保する要素のひとつ、グローバルな事業展開に焦点をあてたいと思います。 地球儀を7つの地域に区分したうえで、2回の記事にわたって、各地域で実際に総合商社がつくり上げてきた案件のなかから全16事例をピックアップして紹介します。
(なお、前回の記事で解説した「総合商社ビジネスの10領域」 をふまえ、それぞれの領域から少なくとも1つ以上の案件を紹介します。)
今回は上巻としてそのうち3つの地域、「東南アジア」「中国」「中東」の中から7つの事例に焦点をあてます。
これまでの基礎理解を土台にしつつ、実際に世界各国で展開されているケーススタディから総合商社への理解を深めましょう。
東南アジア
タイ、インドネシアなどASEAN中核国を筆頭に、人口・所得水準ともに成長を続ける東南アジア。
この魅力的なマーケットにおいて、総合商社も多くのビジネスを展開しています。
三菱商事:複合開発事業 @ミャンマー 【不動産】
2011年に民主化を達成し、「アジア最後のフロンティア」として今後の経済成長を期待されるミャンマー。
三菱商事はその中心都市・ヤンゴンにて、大手デベロッパー・三菱地所や現地企業と共同で複合再開発事業「Landmark Project」を始動させています。
オフィスビルや分譲住宅、ホテルや商業施設などの不動産開発をトータルに行い、ヤンゴン中心部に東京・丸の内のようなまちをつくりあげるというダイナミックな案件です。
【プレスリリース】
ミャンマー国ヤンゴン中心部に於ける大規模複合開発事業「Landmark Project」に着手
http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/pr/archive/2016/html/0000030582.html
伊藤忠商事:Dole事業 @アジア【食料】
2012年、伊藤忠商事は米Dole Food Company, Inc.よりアジア青果物事業、グローバル加工食品事業を買収することを決定しました。
現在はDoleブランドのもと、みなさんにとっても身近なバナナ、パイナップルなどの青果に加え、フルーツの缶詰め、ジュースなどの加工食品の生産・販売を行なっています。
はじめは思うように収益が上がりませんでしたが、2017年3月期の決算ではDole事業はV字回復し、同社の純利益ベースでの最高益更新に大きく貢献しました。
【プレスリリース】
世界最大の青果物メジャー・米国Dole社のアジア・青果物事業およびグローバル・加工食品事業の買収について
https://www.itochu.co.jp/ja/news/press/2012/1212251.html
三井物産:洗剤原料事業 @タイ【化学品】
三井物産はタイの大手石油会社 Thai Oil Public Conmany Limited グループと共同し、タイにLABIX Conmany Limited社を設立しました。
同社は洗剤の原料となるリニアアルキルベンゼンの製造・販売を展開しています。
三井物産はほかの地域でも洗剤原料プロジェクトを行なっており、それらとの組み合わせによるシナジー効果、バリューチェーン構築が期待できるとアナウンスされています。
【プレスリリース】
タイでの洗剤原料(リニアアルキルベンゼン)生産開始
https://www.mitsui.com/jp/ja/release/2016/1218949_8913.html
中国
鄧小平による改革開放以来、爆発的な経済発展を遂げてきた中国。
14億人近い人口を誇る、世界最大のマーケットです。
伊藤忠商事:CITICとの提携、病院経営事業 @中国【不動産、金融など】
伝統的に中国・アジア地域でのビジネスに強みをもつ伊藤忠商事。
2015年にはタイ最大の財閥・Charoen Pokphand(CP)グループ、中国最大の巨大コングロマリット・CITIC Limited(中国中信)グループとの3社間での戦略的業務・資本提携契約を結んだことを発表しました。
CITCは中国政府が間接的に株式の大半を保有する政府系巨大企業であり、伊藤忠商事はこの株式のうち20% (約1兆2,000億円に相当) をCPグループと共同して取得。
伊藤忠商事単体でみれば約6,000億円の投資となり、総合商社としては史上最大規模の巨額案件となりました。
金融やインフラ、不動産などの分野で強みをもつCITIC、そして飼料や食品などのマーケットで高いシェアを誇るCPグループとの協業を通じて、伊藤忠商事は得意とする「中国・アジア」×「非資源」の2軸での事業強化をねらいます。
中国国内にCITICとの合弁会社を設立して病院経営・ヘルスケア事業に参画するなど、具体的な案件も少しずつ動き出しています。
【参考情報・プレスリリース】
・事業紹介:CITIC・CPグループとの取り組み
https://www.itochu.co.jp/ja/business/alliance/index.html
・CITIC Medical & Health Group Co., Ltd.と医療・健康関連ビジネスにおける合弁会社設立に向けての意向書を締結
https://www.itochu.co.jp/ja/news/press/2016/160920.html
三菱商事:ITサービス @中国【ICT】
三菱商事は野村総合研究所 (NRI)との合弁会社として、上海を拠点にITソリューションを提供するiVision社を保有しています。
世界最大のマーケットである中国でビジネスを展開する企業を対象に、ITを駆使したコンサルティングやシステム開発・運用などの価値を提供する企業です。
2008年にはNRIとのジョイントベンチャーとしてエムシー・エヌアールアイグローバルソリューションズ社を設立し、それ以前から子会社として保有していたiVision社をその傘下に入れました。
三菱商事がもつ営業基盤や経営管理ノウハウにNRIの知見を組み合わせることで、ICT分野におけるさらなる価値創出を目指しています。
【プレスリリース】
三菱商事と野村総合研究所が中国でICTサービス事業分野の共同事業を開始
http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/pr/archive/2008/files/0000002355_file1.pdf
中東
世界有数のエネルギー供給地帯、中東。
石油や天然ガス、電力プラントなど、総合商社も数多くの大規模案件に参画しています。
三井物産:原油・天然ガス事業 @オマーン【エネルギー】
資源分野のポートフォリオに強みをもつ三井物産は、世界各地の資源権益に積極的な投資を行なっています。
中東の産油国・オマーンでは、三井石油開発 (三井物産の子会社) と共同して出資するMitsui E&P Middle East B.V.社を通じ、Block 9、Block 27、Block 3 and 4 と呼ばれる陸上鉱区における原油・天然ガス生産事業を推進しています。
こうした資源ビジネスは資源価格の変動に大きく左右されます。
事実、2016年3月期の決算では資源価格の低迷から三井物産が2,600億円、三菱商事が4,300億円の減損を計上し、創業以来はじめてとなる連結最終赤字に転落しました。
一方、鉄鉱石や石炭の価格が回復した2017年3月期の決算では、各社の資源分野の収益もV字回復を果たしています。
「資源一本足打法」と揶揄されるなど、資源分野への依存度の高さ、リスク・エクスポージャーの大きさを指摘される三井物産。
ヘルスケアなど非資源分野のポートフォリオ拡充を急ぎますが、一方では「強い資源をより強く」の方針も打ち出しています。
減損の可能性を見越したうえで資源投資を敢行できる三井物産は、やはり同分野に揺るがない強み・知見を持っていると言えるでしょう。
【参考情報】
・三井物産、オマーン国での石油ガス蒸留事業
https://www.joi.or.jp/modules/downloads_open/index.php?page=visit&cid=22&lid=1777
・三井石油開発 PROJECT
https://www.moeco.com/project/oman.html
・三井物産・三菱商事、「初の赤字転落」の深刻度(2016年、東洋経済 ONLINE)
http://toyokeizai.net/articles/-/112036
丸紅:電力IPP事業 @UAE【インフラ・プラント】
五大商社の一角をなす丸紅。
同社は伝統的に電力ビジネス分野に強みがあり、総合商社でありながら日本最大級の発電事業者としての顔も持ち合わせています。
丸紅が主に展開するのは、自社で発電所を建設・運営したうえで電力を電力会社へ売って収益を得る、いわゆるIPP (Independent Power Producer:独立系発電事業者) 事業です。
直近の案件として、2017年3月にアラブ首長国連邦 (UAE) における「スワイハン太陽光発電プロジェクト」が挙げられます。
丸紅は同プロジェクトに20%出資しており、JinkoSolar社・アブダビ水電力省と共同して1,177MWの太陽光発電プラントを建設・運営する見通しです。
ここで発電した電力を現地のアブダビ水電力会社に供給して収益化する、IPPのビジネスモデルをとっています。
また、UAEにおいて丸紅はすでに他4件の火力発電事業に参画しており、中東地域の電力供給に大きくコミットしていると言えます。
【プレスリリース】
アラブ首長国連邦・スワイハン太陽光発電プロジェクトの長期売電契約締結について
http://www.marubeni.co.jp/news/2017/release/201705291.pdf
最後に
今回は「東南アジア」「中国」「中東」の3つの地域に焦点を絞り、そこで実際に総合商社が手がけてきた7つのビジネス事例を紹介しました。
次回の総合商社・業界研究シリーズでは、本記事に続く中巻として「ヨーロッパ」「アフリカ」の2つの地域から4つのビジネス事例を取り上げたいと思います。
総合商社の業務内容を理解するうえでは、そのビジネスモデルを大枠で理解することだけでなく、過去の具体的なプロジェクトについて知ることも重要になります。
実際にOB訪問をしていくなかでも、その社員の方が過去にどんなプロジェクトを手がけたか、その案件を進めるなかで具体的にどんな業務・役割を担ったかをきいてみると、より総合商社に対する理解を深めることができるでしょう。この機会にぜひ、OB/OG訪問にトライしてみましょう。
【総合商社】業界研究シリーズ
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