SIerとは?
SIer(エスアイヤー)とは、「システムインテグレーター(System Integrator)」の略称で、企業や官公庁などのクライアントに対して、ITシステムの企画・設計から開発、導入、保守運用までを一括して請け負う企業のことです。
建設業界におけるゼネコンになぞらえて「ITゼネコン」とも呼ばれ、プロジェクト全体を管理し、必要に応じて下請け企業に業務を発注することもあります。
IT業界の中でも特に大規模案件に関わることが多く、就活でも人気の業種です。幅広い業種に関わるチャンスがある点も、魅力のひとつです。
「SIer」と「SE」の違い
SIerとは、クライアントからの依頼を受けてシステム開発を行う「企業」のこと。その企業内で実際に手を動かすエンジニアがSE(システムエンジニア)です。
SIerは組織、SEはその中で働く人の役割を示す言葉なので、混同しないよう注意が必要です。
SIer(企業) SE(職種)
意味 システム開発を請け負う企業 システムを設計・構築する技術者
担当 プロジェクト全体の運営など 設計・開発・保守など
所属 法人(例:NTTデータなど) SIer内の技術系職種
SIerにおけるSEは、クライアントの要望をヒアリングし、要件定義や設計、開発管理などを担うことが多く、プロジェクトの上流工程を担当するケースが一般的です。
SierにはSE以外にも営業やプロジェクトマネージャーなどが在籍しており、多職種が連携して業務を進めます。
ピラミッド型の業界構造
SIer業界は、建設業界のようにピラミッド型の構造を持っています。大規模プロジェクトでは、上位の企業が全体を管理し、下位の企業が実作業を担当する分業体制が一般的です。
役割の違いは以下の通りです。
元請け:クライアントと直接契約し、プロジェクト全体を統括。大手が多い
下請け:元請けの指示で開発や設計などを担当。専門性の高い業務も多い
孫請け:実際のプログラミングやテストなどを行うことが中心
このような構造により、効率的なプロジェクト進行が可能になります。
SIerは大きく分けて5種類
SIerは企業の成り立ちや親会社との関係により、5つのタイプに分類されます。
・1.独立系
・2.ユーザー系
・3.メーカー系
・4.コンサル系
・5.外資系
分類を知り、企業の特徴や働き方の違いをつかんでいきましょう。
①独立系
独立系SIerは特定の親会社を持たず、様々な企業から案件を受託するSIerです。
中立的な立場で、さまざまな業界のシステム開発を手がけることができ、幅広い業務経験を積めるのが特徴です。
一方で、案件ごとに業界やシステムの仕様が異なるため、柔軟な対応力やスピード感が求められます。
代表的な企業にはTISや大塚商会などがあり、安定した経営基盤を持ちながらも自由度の高い開発環境が整っています。
②ユーザー系
ユーザー系SIerは、大手企業の情報システム部門が独立して設立された企業です。グループ企業向けのシステム開発が主な業務となります。
社内の業務内容や方針を深く理解しているため、ユーザー視点でのシステム提案がしやすいのが強みです。また、長期的なプロジェクトが多く、安定した働き方ができる傾向にあります。
代表例としては、みずほリサーチ&テクノロジーズ(旧:みずほ情報総研)などが挙げられます。
③メーカー系
メーカー系SIerは、NECや富士通といったハードウェアメーカーを親会社に持つSIerです。自社の製品や技術を活用したシステム提案を得意としています。
ハードとソフトを一体で提供できるため、技術力を活かしたトータル提案が可能です。また、自社製品に関する知識を深めながら働ける点も魅力のひとつ。将来的に、製品開発や提案の幅を広げる強みになっていくでしょう。
一方で、親会社の製品を使う前提があるため、提案の幅に制約が出ることもあります。
④コンサル系
コンサル系SIerは、企業の経営課題をITの力で解決するタイプのSIerです。業務改善や売上拡大などの目的に応じて、システム導入の初期段階から関わります。
例えば「業務を効率化したい」「デジタル化を進めたい」といった課題に対し、戦略の立案から提案、システム構築までを一貫して行います。
代表的な企業には、アクセンチュアやアビームコンサルティングなどがあります。経営視点とITスキルの両方が求められるため、論理的思考力や提案力を磨きたい人に向いているでしょう。
⑤外資系
外資系SIerは、海外に本社を持つグローバル企業です。英語力が求められる場面が多く、海外案件やグローバル展開を視野に入れたプロジェクトに携われます。
成果主義や実力重視の社風が強く、スピード感のある働き方が特徴です。先進技術の導入が早い企業が多いため、最新のIT動向に触れられる機会も豊富です。
代表企業としては、IBMやSAP、キャップジェミニなどが挙げられます。
SIerの主な仕事内容
SIerの仕事は、システム開発の各工程を企業ごとに以下のように分担しながら進めるのが特徴です。
・企画・提案
・要件定義・設計
・開発・プログラミング
・テスト・導入
・運用・保守
それぞれの役割について、順を追って説明していきます。
①企画・提案
SIerの業務は、まず「企画・提案」から始まります。これは、クライアント企業が抱える業務課題や改善ニーズをヒアリングし、最適なITシステムの導入を提案するフェーズです。
単なるシステム提供ではなく、業務の効率化や利益向上につながる仕組みを“提案型”で作り上げるのが特徴です。
技術力だけでなく、業界知識や課題解決力、そして高いコミュニケーション能力が求められます。SIerにおける「企画・提案」は、プロジェクトの成否を左右する重要な第一歩なのです。
②要件定義・設計
「要件定義・設計」は、クライアントの要望をもとに、システムに必要な機能や仕様を明確にする工程です。「誰が・何を・どのように使うのか」といった詳細を詰めていきます。
その後、決定した要件をもとに、システム全体の構成や画面レイアウト、データベースの設計などを行います。
この工程は、開発の土台となるため非常に重要です。論理的思考力とコミュニケーション力が求められる場面も多く、SEの役割が特に大きくなります。
③開発・プログラミング
「開発・プログラミング」は、設計書に基づいて実際にシステムを作り上げる工程です。要件通りに動作するよう、プログラミング言語を用いて機能を実装していきます。
品質やセキュリティ、保守性を意識したコーディングが求められるため、技術力が問われるフェーズです。また、チームで開発を行うことが多く、進捗管理やコミュニケーションも重要なスキルとなります。
ユーザーが使いやすく信頼できるシステムを実現する、SIerの中核的な業務です。
④テスト・導入
「テスト・導入」は、開発したシステムが正しく動作するかを確認し、実際の業務環境へ適用する重要なフェーズです。
テストでは、不具合がないか、仕様通りに動作するかを検証します。問題が見つかれば修正を行い、品質を高めたうえで導入作業へ進みます。
導入時は、クライアントの業務に支障を出さないよう慎重な対応が求められます。安定稼働のスタートを切るために、技術力だけでなく、丁寧なサポート力も欠かせません。
⑤運用・保守
「運用・保守」は、システムを安定的に稼働させ続けるための重要な業務です。導入後も、トラブル対応や機能の改善、定期的なメンテナンスなどを通じて、システムの信頼性を維持します。
業務の変化に応じて機能を追加したり、障害発生時には迅速な原因究明と復旧対応を行うなど、ユーザーに寄り添う対応が求められます。単なるサポートではなく、長期的な視点でクライアントの成長を支える“パートナー”的な役割を果たすのが特徴です。
日本の3大Sier
日本国内で特に規模が大きく、業界をけん引しているのが「NTTデータ」「富士通」「NEC」の3社です。
総資産(億円) 従業員人数(人) 国内本支店数 海外拠点
NTTデータ 約7兆2,000億円
(2025年3月時点) 約19万5千人
(グループ全体) 自社・親会社・子会社75社+関連会社22社 世界53カ国・地域・223都市
富士通 約3兆5,100円
(2024年3月時点) 約12万4千人 全国35か所 世界180カ国以上
NEC 約4兆2,200円
(2024年3月時点) 単独 約2万2千人/
連結 約10万5千人 全国55か所 50カ国・地域
この3社にはそれぞれ異なる強みや歴史があり、業界の中でも異なるポジションを築いています。以下で詳しく見ていきましょう。
①NTTデータ
株式会社NTTデータは、1988年に日本電信電話公社(現・NTT)から分離独立して誕生した、日本最大級のSIerです。官公庁や金融機関向けの大規模システムに強みを持ち、日本の社会インフラを支える中核的な存在です。
国内のみならず海外展開も積極的で、グローバルに事業を展開しているのも特徴です。安定性と技術力を兼ね備えた企業であり、社会貢献性の高い仕事に関心がある学生にとっては、魅力的な就職先のひとつといえるでしょう。
②富士通
富士通株式会社は、1935年創業の老舗総合電機メーカーであり、国内トップクラスのSIerとしても知られています。官公庁、医療、金融、製造など幅広い業種に向けたシステム提供を行い、社会や企業のデジタル変革を支えています。
特に近年では「デジタル革新企業」への転換を掲げ、AIやクラウド、サステナビリティ分野に注力しています。技術力だけでなくグローバル志向の強い企業としても注目されており、幅広いキャリアを描ける環境が魅力です。
③NEC
NEC(日本電気株式会社)は、1899年創業の日本を代表する電機・IT企業で、長い歴史と高い技術力を誇ります。SIerとしては官公庁、自治体、医療、教育など公共性の高い分野に強みを持ち、社会インフラのデジタル化に貢献しています。
近年はAIやセキュリティ、ネットワーク領域でも存在感を発揮し、グローバル事業にも注力しています。安定性と革新性を併せ持つ企業として、公共性のあるITサービスに関わりたい学生に人気の高い企業です。
SIerで働く魅力【3選】
社会を支えるやりがいを実感できる
SIerの仕事は、官公庁の行政システムや銀行の取引システム、医療・物流など、社会インフラを支える重要な領域に直結しています。自分が携わったシステムが多くの人の生活を支えているという実感を得られ、大きな達成感ややりがいにつながります。
「世の中の役に立つ仕事がしたい」という志向の学生にとって、SIerは非常に魅力的な業界でしょう。
安定した経営基盤と高めの給与水準
SIerは大手企業や官公庁を顧客に持つことが多く、プロジェクトも長期的な契約が多いため、比較的安定した経営基盤を持つ企業が多いのが特徴です。また、高度なITスキルや専門性が求められる分、給与水準も全体的に高めです。
特に大手SIerでは初任給や福利厚生も手厚く、安定した環境で長く働きたい人にとって安心できる選択肢となります。
幅広いスキルとキャリアが身につく
SIerの仕事は、企画から提案、設計、開発、運用まで一連の工程を経験できる点が大きな魅力です。技術スキルに加え、プロジェクトマネジメントや業界知識、コミュニケーション能力など、多角的なスキルが求められるため、成長の幅も広がります。
将来的にはITコンサルタントやマネージャーなど、多様なキャリアパスが描けるのも大きな強みでしょう。幅広いスキルを習得していきたいと考える学生には、魅力的な就業環境であるといえます。
SIerはどんな人が向いているか
SIerは、ITスキルだけでなく、コミュニケーション力や柔軟な思考力が求められる仕事です。そのため、以下のような特徴を持つ人に向いている傾向にあります。
・チームで協力して働くのが好き
・論理的に物事を考えるのが得意
・人と話すのが苦にならない
・新しい知識を吸収する意欲がある
これらの特徴を持つ人は、チームでの協力や変化への対応が求められるSIerの現場で力を発揮しやすいでしょう。自分の強みを活かしながら成長したい人にとって、Sier業界は魅力的な職場といえます。
SIerの将来性
デジタル化が急速に進む現代において、SIerはあらゆる業界のITインフラを支える存在として、今後も高い需要が見込まれます。特に官公庁や医療、金融など、景気に左右されにくい分野に強みを持つ点は、安定志向の学生にとって大きな安心材料です。
また、クラウド、AI、DX(デジタルトランスフォーメーション)といった先端領域にも関わる機会が増えており、時代の最先端でスキルを磨きたい人にも最適であるといえます。
将来的な需要も高く長期的なキャリアを築きやすい業界として、人気も高く注目されている業界の一つでしょう。
SIer業界に就職する際のポイント
SIer業界は企業ごとに事業内容や立ち位置が大きく異なるため、自分に合った企業を見極めることが重要です。
分類や特徴を理解し、将来のキャリアを具体的に描きながら選考に臨みましょう。
分類を確認する
前述のとおりSIerはピラミッド型の構造を持っており、大手が全体を統括する「元請け(一次請け)」、その下に位置する「二次請け」「三次請け」など、いくつかの階層構造があります。
元請けは顧客と直接取引を行い、要件定義や提案など上流工程を担うことが多い一方、下請けになるほど開発やテストなど実装工程に特化した業務が中心になります。
自分がどのような工程に関わりたいかによって、どの分類のSIerを志望するべきかが変わってきます。企業研究を通じて、自分のやりたい仕事に直結する分類かどうかを確認することが、ミスマッチを防ぐ鍵です。
親会社や取引先を確認する
SIerはグループ企業として親会社のIT戦略を担っていたり、特定の業界と強い取引関係を持っていたりすることがよくあります。
例えば、メーカー系SIerであれば製造業向けのシステムに強く、金融系SIerであれば銀行や保険会社向けに特化した知識やスキルが求められる傾向があります。
親会社や主要な取引先を把握することで、将来自分が関わる業界やプロジェクトの傾向も見えてきます。業界の専門性や志望動機との関連性を深める上で、企業の背景を知ることは非常に重要です。
求められる技術を理解する
SIerでは、プログラミングスキルに加えて、インフラ(ネットワーク・サーバー)、クラウド、セキュリティなど幅広いIT知識が求められます。文系出身でも活躍できるとはいえ、基本的なITリテラシーや技術に対する興味・学習意欲は必須です。
また、最近ではDX推進に伴い、AIやIoT、データ分析などの先端技術に触れる機会も増加しています。
就職活動時に「どのような技術に強みを持ちたいか」「どんな分野に興味があるか」を明確にしておくことで、企業選びや面接でのアピールにもつながるでしょう。
SIer業界への就職はビズリーチキャンパスにおまかせ!
SIer業界は、社会を支えるITの根幹を担う重要な存在です。仕事内容や業界構造を正しく理解することで、自分に合った企業選びができるようになります。
また、幅広い業界と関われる点や、成長できる環境が整っていることも大きな魅力でしょう。
将来性の高い業界で、自分らしいキャリアを描いてみてください。
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