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業界研究

【総合商社】業界研究 「総合商社の本質とは?”事業投資”を理解しよう」

毎年、上位大学の優秀な学生が殺到する「商社」業界。皆さんの業界研究をサポートすべく、総合商社のビジネスモデル、今回は特に「事業投資」について解説します。

こんにちは、ビスリーチ・キャンパス編集部です。

そのビジネスフィールドの広範さについて、「通信衛星からミネラルウォーターまで」とまで言われる総合商社。
その商材の多様さゆえ、就活生にとってそのビジネスモデルの実態をとらえることは非常に難しいものになっています。

ビズリーチ・キャンパスでは、総合商社を志望する学生の皆さんのお手伝いをすべく、
総合商社のビジネスモデルや選考対策、OB訪問対策について解説しています。

前回は総合商社の伝統的なビジネスである「トレーディング」に焦点を当て、その仕組みを解説しました。

総合商社のトレーディングとは、
【中間業者として需要と供給をマッチングさせるとともに、取引のなかで物流や金融などの機能価値を提供しながら、スムーズな商流をつくり出す事業】
であるということ、ご理解いただけたかと思います。

今回は総合商社のもうひとつのビジネス、「事業投資」を解説します。
また、「トレーディング」「事業投資」それぞれに対する理解を踏まえたうえで、総合商社のビジネスモデルの本質を明らかにしたいと思います。


総合商社のビジネスモデル(復習)

前回の記事でも解説したとおり、
総合商社のビジネスは「トレーディング」と「事業投資」の2つのアプローチの組み合わせによって収益をあげるモデルをとっています。


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高度経済成長期以前の総合商社はその収益の多くをトレーディングによってあげていましたが、
1990年代にはインターネット技術の発展を背景に「商社外し」が見られるようになり、
総合商社のトレーディング収益は縮小傾向をたどるようになりました。

バブル崩壊も重なって業績悪化に苦しめられた総合商社各社は、
より時勢にマッチしたビジネスモデルへとその姿を変えるべく、「事業投資」という打ち手を選び取りました。
こうした紆余曲折をへて確立されたのが現在の総合商社のビジネスモデル、すなわち「トレーディング × 事業投資」という稼ぎ方です。


総合商社の「事業投資」とは何か

総合商社の「事業投資」とは、【継続的・多面的な経営参画を念頭におきながら、ある企業へ投資を行うこと】であり、
総合商社が新たなビジネスを創造していくための重要なアプローチ方法です。


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事業投資において、総合商社はまず目をつけた企業の株式を買収します。
すなわち、その企業が発行する株式の一部を取得・保有し、その企業の大株主になるのです。
このとき、総合商社はその企業の業績や将来性などをトータルに考慮し、投資先の選定や出資比率の決定などを行います。

総合商社は株式を取得して資金を注入するだけでなく、投資先企業の企業価値を最大化すべく、その経営に総合的かつ継続的に参画します。
総合商社の社員を派遣する、総合商社がもつ経営ノウハウやネットワークを提供するなど、様々な手段を用いてその企業のバリューアップを図ります。


事業投資の収益構造

事業投資ビジネスにおける総合商社のねらいは大きく2つ、「直接的な利益」「間接的な利益」とに分けることができます。

ここでの「直接的な利益」とは、①取込利益や配当金、キャピタルゲインを指します。

取込利益とは会計上の概念です。
「投資先企業の利益の一部を、会計上では自社の利益としてカウントしてよい」というルールがあり、
それに基づいて自社の利益として取り込むことができる利益のことを指します(定義は簡略化しています)。
取込利益の大きさは、出資先企業の利益の大きさはもちろん、その株式のうち何%を取得しているかに応じて決定されます。

【例】カンロ株式会社(三菱商事グループ)
三菱商事は、キャンディやグミでおなじみのカンロ(株)の株式を27.77%保有しており(2016年末時点)、
同社の2016年度の純利益は500,590,000円なので、三菱商事の取込利益は500,590,000×27.77%=約1億3900万円ほどになると想定できます。
※算定方法などは簡略化しています。
【参考】カンロ株式会社 有価証券報告書 (第67期)
http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS01460/e9e9bb6c/7457/449f/a817/e94bd096bec4/S1009UJE.pdf

また、株式を保有することで分配される配当金、株式の売却の際に生じるキャピタルゲインなども、総合商社が得られる「直接的な利益」のひとつです。
ひとまずここでは「株式の取引のなかで生じる利益」として把握しておきましょう。

一方、総合商社のねらいとしてさらに奥が深いのが「間接的な利益」、すなわち②グループ会社としてのシナジー効果です。

ここでのシナジー(synergy)とは、複数の企業が協業することで得られる優位性のことを指します。
総合商社は多数の企業に分散投資することによって、前述の取込利益・株式利益だけでなく、異なる事業のかけ合わせ=シナジー創出をねらっています。
総合商社を核にして企業グループを形成することによって、
総合商社と投資先企業、あるいは投資先企業と投資先企業のあいだでのシナジー効果が期待できます。

このシナジー効果こそ、総合商社の事業投資がその強みとするポイントです。


ケーススタディ(伊藤忠商事株式会社/株式会社ファミリーマート)

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以上の解説をふまえ、ここからは実際の総合商社の事業投資案件から理解を深めましょう。
今回はケーススタディとして、伊藤忠商事のファミリーマート事業を取り上げます。

伊藤忠商事株式会社は1998年に株式会社ファミリーマートの一部株式を取得し、コンビニ事業投資を開始しました。
現在、伊藤忠商事株式会社はユニー・ファミリーマートHDの株式のうち34.67%を保有する筆頭株主となっています。
両者は出資関係にあるのみならず、今年2月に伊藤忠商事の高柳浩二副社長がユニー・ファミマHD社長に就任するなど、
人材派遣はじめ様々な経営参画を行っているようです。

【参考】ユニー・ファミリーマートHD 有価証券報告書 (第36期)
http://www.fu-hd.com/ir/library/securities_reports/1702_hokoku.pdf

このファミリーマートへの事業投資例において、伊藤忠商事は会計上の取込利益を得ています。
また、同社の株式を保有していることによって得られる配当金も収益のひとつです。

その一方、ファミリーマートをグループ企業とすることによって、伊藤忠商事は多くのシナジー効果を獲得していると考えられます。
イメージしやすいものを2つ、例として簡略化して取り出してみましょう。

①「ゆで卵」
どこのファミリーマートでも販売されている、ゆで卵。
ラベルの裏面には「販売者:伊藤忠飼料株式会社」とあります。
同社は伊藤忠商事のグループ会社であり、畜産事業や食品事業を行っています。

一方、食料品を多く扱うコンビニにおいては、生産拠点から店舗まで商品を効率的に輸送することも重要です。
伊藤忠商事は、食品流通事業を展開する株式会社日本アクセスにも出資しており、同社の93.77%の株式を保有しています。

これらのグループ企業を合わせて考えると、それぞれの事業投資先企業のあいだにシナジーがあり、
そのつながりによって消費者の手元に届くまでのバリューチェーン(原料調達から消費者の手元に届くまでの一連のビジネス)
を構築していることがイメージできます。


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※あくまでイメージです
※事業の構造は簡略化しています

②「ファミマTカード」「Famiポート」
伊藤忠商事株式会社はクレジットカード事業を展開するポケットカード株式会社に出資しており、
先日リリースされた公開買付けによって同社株式の46%を保有する筆頭株主となる予定です。
ポケットカード株式会社はファミリーマートで使用できる「ファミマTカード」事業を行なっており、
実店舗レジでのスムーズな決済環境の提供に貢献しています。

【参考】伊藤忠商事 プレスリリース
https://www.itochu.co.jp/ja/news/press/2017/1194451_1672.html

また、伊藤忠商事はファミリーマート店内情報端末「Famiポート」事業を展開する
株式会社ファミマ・ドット・コムにも出資しています。
スポーツ観戦などでチケットを購入する際、こうしたサービスを利用されている方も多いことでしょう。

これらを前述のゆで卵の例と合わせて考えると、伊藤忠商事が「消費者との接触点」であるファミリーマートを核にしつつ、
食品の製造・卸売や消費者向け金融サービスなど、多様なビジネスを組み合わせながら展開していることが見えてきます。


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※あくまでイメージです
※事業の構造は簡略化しています

この伊藤忠商事の例にみられるように、総合商社は様々な業界での知見を活かして複数のバリューチェーンを組み合わせ、
より幅広くシナジーを創出することで収益の最大化を狙っていると理解することができます。

事業投資とはそのためのアプローチ方法のひとつであり、
ほかの企業に対して出資・経営参画することで新たなビジネスを創出することでもあります。


総合商社のビジネスの本質「総合性」

ここまで、実例を交えながら総合商社の「事業投資」について解説してきました。

最後に「トレーディング」「事業投資」それぞれの仕組みをふまえ、
簡単なまとめとして総「合商社のビジネスの本質」について考えてみましょう。

総合商社のビジネスモデルは、大きく2つの「総合性」によって定義されます。

第一に、扱っている商材の幅広さ、「事業領域の総合性」があげられます。

総合商社はありとあらゆる商材を取り扱っており、さまざまな業界で数多くの企業と関係を持っています。
このように、自社の資産を数多くの企業・事業にバランスよく分散投資することで
ポートフォリオを最適化しているのが総合商社の特徴のひとつであり、「総合」商社と呼ばれる所以のひとつでもあります。

この「事業領域の総合性」によって、総合商社はより多様なシナジー効果が期待できるとともに、
経営上のリスクを最小化することができます(例えば、エネルギー分野で赤字を出してしまっても、
そのほかの分野で黒字になっていれば企業全体としての業績は一定の水準を保つことができます)。

第二に、ビジネスの手法の幅広さ、「アプローチ方法の総合性」が特徴です。

総合商社はトレーディングと事業投資を核にしつつ、さまざまなアプローチ方法をとって収益の最大化を目指します。
資金の提供や商材の受け渡しにはじまり、人材の派遣やノウハウ提供、営業活動のサポートなど・・・

このようにさまざまなアプローチを取ることで、総合商社は多様な企業と協業しながらバリューチェーンを構築しています。
総合商社自身が生産能力をもたない代わりに、ありとあらゆる手段を講じてビジネスを創造していくことができるということです
(ただし、これは「総合商社だけでは何もできない」ことの裏返しでもあることに留意すべきかもしれません)。


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おわりに

前回の記事ではトレーディングを、
そして今回は「事業投資」を中心に、総合商社のビジネスモデル全体を解説してきました。

シンプルに定義してしまえば、現代の総合商社とは【ビジネスとして成功するなら ”なんでもやる” 】企業です。
そこに商機(と、もちろん適法性)があるならば、どんな分野でも・どんなやり方でも飛び込んでいくことができます。

この総合性=”なんでもやる” ことこそが現代の総合商社の強みであり、
さまざまなビジネスを創造していく原動力であるといえるでしょう。

これまでの解説でビジネスモデルの基礎をつかんだあとは、実際に総合商社ではたらく方々にOB訪問をしましょう。
みなさんの理解が正しいかを検証するとともに、総合商社での実際の業務についてより深く理解し、
説得力のある志望動機・自己PRを構築できるようになるはずです。

一次情報を得て、自分の未来を見つけに行こう

採用ホームページやニュースなどのメディアを読んで、業界・企業研究に励むことはとても大事なことです。 しかし、それらの多くは二次情報に過ぎません。何かしらのバイアスがかかっており、正しい情報であるかどうかは自身で選択していかなければなりません。

情報収集で重要なことは、「どれだけ新鮮な一次情報」を得られるか、ということ。 そしてその一次情報を得る手段としては、「とにかく人と出会う」ことが重要になります。

ビズリーチ・キャンパスでは、様々な社会人と出会える機会をご用意しています。 学生ならではの特権を使って、今しか聞けない話を聞きに行ってみませんか?

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