商社と聞くと「グローバルに活躍できる」「若い時期から高収入が期待できる」などのイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。就職先として人気が高い業界ですが、その詳細な仕事内容を理解している人は少ない傾向にあります。本記事では商社業界の仕事内容や業界の動向や魅力などを詳しく解説します。さらに総合商社と専門商社の違い、各商社への就職難易度についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
商社業界とは?
商社業界とは「製品やサービスの売り手と買い手の間を取り次いで販売をおこなう」業界です。このような事業をトレーディング(仲介)といいます。商社業界が扱うものは幅広く、食品や原料、繊維、機械、インフラ、金融、保険、宇宙開発など多種多様であるのが特徴です。
またトレーディング以外にも、商材を売り出すために物流のネットワークを作ったり、商品製造の過程をサポートしたりする業務もあります。
商社は大きく「総合商社」と「専門商社」に分けることができます。特に総合商社においては「5大商社」「7大商社」と呼ばれる大手企業があり、就活生からの人気も高いのが特徴です。他業界に比べて年収も高い傾向にあることから、他業界からの転職希望者も多くみられます。
商社業界の仕事内容とは?
商社業界の仕事では、情報収集力を活用して市場分析やリスクマネジメントをおこなったり、豊かな資金力を使って事業投資をしたり、国内外での新たな販路構築などをおこなっています。大きく分けると以下の3つに大別されます。それぞれの特徴を解説します。
関連記事:【総合商社】業界研究「まず"トレーディング"から知ろう」仕事内容を解説
トレーディング
トレーディングとは、原料や製品・サービスなどの商材を扱って「商品を売りたい企業」と「商品を購入したい企業」の間を仲介し、その手数料を得るといったビジネスの手法です。商社業界特有の利益獲得手法でもあります。
穀物の買い付けから航空機の売買・リースなど規模やスケールに違いがあるものの、あらゆるジャンルを取り扱っています。
事業投資
事業投資とは、他社に自社の「人材・物・資金・情報」などの経営資源を投資して、その業界の価値を向上させるとともに、利益を得る投資手法です。例えば、石油やガス探鉱開発事業や、海外でのコンビニエンス事業などが該当します。最近では再生可能エネルギーの事業に力を入れている商社が増えています。
事業投資は各企業が長年築き上げてきたノウハウや情報網、取引先ネットワークを活用できるため、より大きな利益を得られるようになってきました。
事業企画や開発
トレーディングや事業投資だけでなく、事業企画や開発をおこなう商社も増えてきています。
市場のニーズを分析して、新しい商品やサービスの企画開発をおこなったり、顧客との関係を構築してさまざまなソリューションを提案・提供したりすることで、事業の成長を促しています。
商社とメーカーの違いとは?
商社も商品を販売するため、「メーカー」と混同されがちですが、商社とメーカーには次のような違いがあります。
・商社:他社製品の流通のための販路開拓や営業サポートをおこなう
・メーカー:自社製品の企画・製造・販売をおこなう
メーカーの中には独自のルートを使って、原材料の調達や商品販売をおこなう企業もあります。一方で、商社でも製造をおこなう場合もあります。メーカーだけでは担いきれない製造以外の業務を担っているのが、商社の役割のひとつです。
総合商社と専門商社の違いとは?
商社は「総合商社」「専門商社」の大きく2つに分けられ、それぞれに明確な違いがあります。
・総合商社:分野に限らずさまざまな商品を世界中で売買するほか、投資や開発にも携わる
・専門商社:特定の業界や商品カテゴリーに特化して、事業を展開する
総合商社はトレーディング事業以外に投資や開発もおこない、専門商社はトレーディング事業が主軸であるケースが多いです。しかし専門商社であっても、競争力を高めるために海外に進出したり関連事業に投資したりする場合もあります。
商社の業界動向
ここからは、商社業界の動向と将来性について解説します。注目すべきポイントは以下の4つです。
・事業投資、および事業経営の拡大
・デジタル化の促進
・M&Aの活発化
・非資源事業への移行
それぞれを解説します。
事業投資、および事業経営の拡大
商社のうち、特に総合商社は「ラーメンからロケットまで」と言われるほど業務範囲が広く、幅広い分野で事業を展開しています。また、トレーディング事業だけでなく事業投資をおこなうことで、その業界の価値を向上させてきました。
トレーディングから事業投資へのシフトが進んでいる背景には、グローバルな競争激化や、市場変化に対応するための戦略があります。安定した収益源を確保するためには、トレーディングだけでなく新しいビジネスモデルや成長分野への投資が重要視されています。
この事業投資において、近年では進出先が金融事業や医療・医薬品、病院経営にまで広がっています。
また投資先が拡大傾向にあるとともに、投資先へ経営人材を派遣してオペレーションをおこなう事業経営の事例が増加しており、これにより各商社はさらに安定した事業基盤を築き上げようとしています。
デジタル化の促進
IT業界をはじめ、さまざまな業界で「DX(デジタルトランスフォーメーション)化」の促進が進んでいますが、商社業界も例外ではありません。商社業界でもDX化を積極的に取り入れようとする動きがあり、以下のような取り組みが始まっています。
・ビッグデータの活用:ビッグデータをリアルタイムで分析して、市場の動向、顧客の需要を正確に予測
・AIによる意思決定支援:AI技術による価格設定、在庫管理などの自動化・最適化
・デジタルプラットフォームの活用:商品製造から販売までの一連の流れを関係者が情報共有できるシステムの活用
商社業界もデジタル化は必須となりつつある状況です。今後も、新たな技術の誕生に伴い、さまざまな業務がデジタル化されると想定されます。
M&Aの活発化
M&Aが活発化している背景には、国内市場の飽和状態と多様なビジネスニーズの変化があります。
商社は幅広い分野で事業を展開しているため、成長機会を求めて新たな市場や技術を取り込む必要がありますが、国内市場では一部の製品やサービスが飽和しています。そこで商社はM&Aを行うことで、事業拡大、新規顧客の獲得、ブランド力の強化、経営基盤の強化などを実現しようとしています。
またグローバルな競争が激化する中で、M&Aを通じて効率的に新規ビジネスモデルを導入し、リスクを分散させることも可能です。
商社業界では、持続可能な成長を実現するために、M&Aを戦略的な手段として活用しています。
非資源事業への移行
商社業界は「持続可能な開発目標(SDGs)」への取り組みや、「脱炭素」への流れを加速させています。その流れの中で、従来の資源事業から非資源事業への割合を増やすなど、新たなビジネスモデルへの切り替えを迫られています。
・資源事業:石油や金属などの天然資源の採掘・販売をおこなう事業
・非資源事業:食品、医薬品、デジタル技術など資源以外分野を使った事業
非資源事業への移行はSDGsや脱炭素への取り組みもある一方で、資源の価格変動のリスクを減らしたいといった企業の意図もあります。
商社業界における職種
商社業界には以下のような職種があり、それぞれ商社での役割が異なります。
1 営業やトレード
2 貿易・海外事務
3 事業企画
4 技術
5 物流・在庫管理
それぞれを解説します。
営業やトレード
商社の営業は、商品を売りたい企業と買いたい企業同士をつなげるパイプ役となる仕事です。基本的には外回りが多く、各社の担当者と関わりながら契約交渉をするなどの業務を進めていきます。
常に外部とのやりとりがおこなわれるため、自社の看板を背負っている自覚を持ったうえで責任感のある立ち振る舞いが求められます。特に、コミュニケーションスキルは営業職として必須スキルといえます。
貿易・海外事務
貿易・海外事務は、主に営業のサポートをおこなっています。営業担当者に変わり電話やメールなどの連絡をおこなったり、必要書類の作成などの事務作業を担ったりします。海外事業の割合が多い企業であれば、営業事務と貿易事務に分けられていることも少なくありません。
デスクワークが中心ですが、国内の企業だけでなく海外の企業と取引する機会も多いため、語学力は必須スキルです。日常会話レベルよりもさらに高い、ビジネスレベルの語学力が求められることもあるでしょう。あくまで目安ですが、TOEICなら700点以上あることが望ましいでしょう。
事業企画
事業企画はプロジェクト立ち上げのために企画を考える職種です。「自社の強みを生かして新たにどのような分野に進出するか」「過去の実績からどのような企業と取引するか」などを具体的に考えていきます。
また、事業投資の一環として、他企業への投資計画を立てるのも事業企画の仕事です。取引先企業の経営戦略に携わってコンサルティングの役割を担うこともあります。
技術
商社の技術職にはシステムエンジニアが在籍しています。システムエンジニアは、システムの開発のために顧客に対して要件定義をおこない、それを踏まえて設計、構築、運用、保守を担います。業務内容は幅広く、知識やスキルなどで関わる作業が異なります。
技術職はプログラマーとしてのスキルが求められるほか、システムの発注者となる顧客企業に対してヒアリングや説明をおこなう必要もあります。そのため、コミュニケーションスキルやマネジメント能力も必要です。
物流・在庫管理
物流・在庫管理も商社では重要な仕事です。商社が取り扱う商品の在庫を管理して、製造に必要な原材料や資源、部品などを細かく管理し、完成した商品を卸や小売店などのエンドユーザーに届けるための流通にも関わります。
現在ではネット販売も主流になっていることから、リアルとネットの両方の在庫管理をおこなう上で欠かせない仕事です。
商社業界の魅力・やりがい
商社業界は就職先として特に人気が高い業界です。そんな商社業界の魅力とやりがいを紹介します。
グローバルに働ける
商社業界は国内だけでなく、海外でも働くチャンスがあります。特に、総合商社の場合は、グローバル展開している企業が多いため、海外赴任や海外出張がある場合もあるでしょう。
海外勤務の場合、現地の社員だけでなく他国から派遣された競合他社の社員と顔を合わせる機会も多いです。そのため、語学力を生かしてグローバルな働き方を希望している人にとってはとても魅力的と言えるでしょう。
大規模な仕事を経験できる
商社は比較的大きな規模のプロジェクトが多いため、大規模な仕事をしたいと考えている人はやりがいを感じやすいでしょう。総合商社はさまざまな分野で事業を展開しており、国内外で高い利益を上げています。
ビジネスのスケールが大きいことで、他の業界では経験できないような仕事に関われるチャンスも多いです。高いコミュニケーションスキルやリーダーシップが求められますが、その分ビジネススキルを磨くことができます。
給与水準が高い
商社は他の業界に比べて給与水準が高いことも人気の理由です。その理由は、グローバルなビジネス展開をおこなうために必要なコミュニケーションスキルや、日本・海外それぞれに適した商業感覚が求められるためです。
またプロジェクトの規模が大きいことや、ビジネスモデル上商品の在庫を抱えるケースが少ないことから、利益率が高いのも特徴です。そのため、各種コストを社員に還元しやすくなっているのも理由のひとつです。
商社業界に向いている人
ここからは商社業界に向いている人の特徴を紹介します。商社ではどのような人材が求められているか、また、必要な資質についても理解しておきましょう。
コミュニケーション能力が高い人
商社に勤務する上で、必要なスキルがコミュニケーション能力の高さです。特に営業職では、取引金額・契約金額が高額になりがちであるため、取引先との良好な関係構築が欠かせません。相手のニーズを理解して、円滑なコミュニケーションをおこなう能力が求められるでしょう。
また、定期的な連絡や会食、コンペなどの業務外での付き合いも重要なポイントです。人と接することが得意で、誰に対しても萎縮せずに対応できる人が、商社においては重宝されるでしょう。
物事を最後までやり遂げられる人
物事を最後までやり遂げる「問題解決能力」を持っていることも商社に就職するには必要なスキルです。
規模の大きなプロジェクトを進める上で、毎回スムーズに案件が終了するとは限りません。規模が大きくなればなるほど、トラブルが起こるリスクも高まります。そうしたときに、状況を判断しながら自ら問題解決できる人が必要です。商社ではこうした人材が求められる傾向にあります。
心身ともにタフな人
案件によっては、一時的に個人にかかる負荷が高くなってしまうことがあります。また、イレギュラー対応が必要になることもあり、休日出社が必要になったり残業が多くなったりすることもあるでしょう。
そうしたときに、自分でストレス発散できる方法を知っており、適切なケアができる心身ともにタフな人材が商社には必要です。責任の重い仕事を任されることもあるため、ストレス耐性の高い人も向いていると言えます。
商社の就職難易度は?
最後に商社の就職難易度を紹介します。商社は人気の高い職種ですが、どのような学歴の人が就職しているのでしょうか。
7大商社
7大商社とは以下の7つの企業を指します。
・三菱商事
・伊藤忠商事
・三井物産
・丸紅
・住友商事
・双日
・豊田通商
総合商社
総合商社への入社には、基本的には大学卒業以上の学歴が必要です。グローバルな事業を展開している特性上、語学力を求められることもあります。
専門商社
専門商社は総合商社に比べて、就職難易度が低い傾向にあります。専門商社は、メディアなどでの露出が比較的少なく、総合商社に比べると学生にはあまりなじみがないかもしれません。そのため、特定の学生からの応募がメインになることから、総合商社に比べると倍率が比較的低くなる傾向があります。
もちろん大学卒などの一定の学歴は必要ですが、TOEICや日商簿記、貿易実務検定、通関士などの実務に活かせる資格を持っている人も内定をもらいやすい傾向にあります。
専門商社でもグローバルに活躍したい場合は、TOEICなどで一定の語学力があるとアピールポイントになるでしょう。
まとめ
本記事では商社業界の仕事内容や業界の動向や魅力などを詳しく解説しました。さらに総合商社と専門商社の違い、各商社への就職難易度についても紹介しました。商社業界は、業界ならではの仕事も多く、とても働き甲斐のある業種です。高い学歴が必要になるものの、専門商社では専門知識や資格の有無次第で採用されやすいようです。本記事を参考にぜひ業界を研究してみましょう。
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