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OB/OGが語る

Instagramを活用した “リアルな” 採用コミュニケーションへの挑戦!

コロナ禍によりオンラインでの就職活動が一般的になった今、企業は学生との距離感や温度差を解消するための新たなコミュニケーション手段を模索しています。そうした中、今回登場する3社が共通して始めた取り組みが「Instagramの活用」です。運営の手間やリスクの高さから多くの企業ではSNSに対して消極的になりがちですが、3社は一体どういった目的でInstagramを始めたのでしょうか。新たな挑戦に対する社会の反応や、気になる成果とは? 担当者同士が率直な想いを語り合います。

■伊藤忠商事株式会社
1858年に創業して以来1世紀半の歴史を重ね、現在は世界63ヶ国に約110の拠点を持つ大手総合商社に成長。繊維、機械、金属、エネルギー、化学品、食料、住生活、情報、金融の各分野において国内、輸出入及び三国間取引を行うほか、国内外における事業投資など、幅広いビジネスを展開している。
相馬 隆光
人事・総務部 採用・人材マネジメント室
2020年入社。分子生物学の研究を行っていたが、新たな枠組みや市場を創る業務内容に惹かれ伊藤忠商事へ。「前例のない仕事がしたい」と話したところ、予想外の採用担当に抜擢。これまでにない採用企画の立案・実行に挑戦している。

■コクヨ株式会社
1905年創業の黒田表紙店を前身とする、日本を代表する文具・オフィス家具メーカー。Campusノートをはじめとした定番ステーショナリーを製造するほか、オフィス空間のデザイン、コンサルティングでも多くの実績を持つ。現在は長期ビジョン「CCC2030」を策定し、創業以来継承してきた理念を「be Unique.」に刷新する等、全社で新たなビジネスモデルの創造に取り組んでいる。
山本 浩貴
ヒューマン&カルチャー本部 HR部 タレントリクルーティングユニット
2010年入社。ファニチャー事業本部にてワークスタイル提案や空間構築に携わる中で、社会人の「働く」という行為そのものへの興味を深め、その入口部分からアプローチしたいと自ら手をあげ採用担当へ異動。副業で低年次へのキャリア教育に従事する。

■イーデザイン損害保険株式会社
自動車保険を扱う東京海上グループのネット損保。最先端のテクノロジーやビジネスモデルをグループ内に還元する「東京海上グループ内のR&D拠点」としての役割も担う。社員300人規模だからこその機動力と、東京海上グループの総合力を活かし、これまでにない商品やサービスをクリエイティブに生み出している。
津田 元夫
HR部 リーダー
2006年同グループの東京海上日動に入社。約10年間営業に従事した後、公務員経験などを経て2019年にイーデザイン損保に入社。現在は採用業務全般を担うと共に、社員の働きがい向上等の重要性を強く感じ、カルチャー醸成プロジェクトにも参画する。

企業は、学生目線の採用活動ができているだろうか?

Instagram(以下、インスタ)の活用は、新卒採用ではまだあまりポピュラーではありません。まずはどういった経緯や目的があって取り組み始めたのか、それぞれ教えてください。

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相馬
きっかけは自分自身が就職活動をしていた頃にさかのぼるのですが、企業から採用情報やスケジュールが送られてくるのは大抵メールか自社HP経由ですよね。でも学生は普段メールを使う機会がほとんどなく、生意気ながら「もっと便利な方法で情報が得られたらいいのに」と感じていました。入社して採用担当になってからも、伊藤忠は「マーケットイン(消費者の立場から必要なものを提供していく考え方)」を大切にする会社なのに、採用活動は企業都合になっていると。学生にとってのマーケットインって何だろうと考えたとき、インスタやLINEを活用して情報発信できたらいいなと思ったんです。

山本
私たちコクヨは、伝えられる情報鮮度の高さからインスタを採用しました。発信場所のメインはやはり採用HPになりますが、HPは頻繁にリニューアルできないのでどうしても情報が古くなってしまう。今コクヨは変革の時期にあって、社内でもどんどん新しいメッセージや取り組みが発信されています。それなのに、HPに載っているのは3年前のコクヨ。それでは学生との間にギャップが広がってしまい、お互いアンハッピーですよね。鮮度の高い情報をビジュアルとともに伝えられるインスタは、使うメリットが高いと感じました。

津田
ギャップを埋めるという意味では、イーデザイン損保も近い理由かもしれません。保険・金融業界は商品性も似ているため他社との差別化が図りづらく、採用では社風や社員の人柄がとても大きな決め手になります。弊社でも説明会や座談会で学生さんたちと直接話すことを採用の核にしていましたが、コロナ禍でそれが制限されて「どうしたらリアルな社風を見てもらえるだろう」と悩んでいたんです。HPでももちろん発信しますが、山本さんがおっしゃったようにデイリーでは更新できません。学生が気軽に使えるという点からも、インスタは最適なプラットフォームでした。

ありのままの姿を見せて、ミスマッチをなくしたい。

山本
コロナの影響で言えば、最近の採用活動はどこか「エンタメ化」している印象があります。短い時間で、映像加工や演出を派手に加えて、いかに魅力的に伝えるか……でも、それだけだとすごく浅いなあと思うんですよね。企業には、受け手次第では良く見えるものも悪く見えるものもある。それを変に隠して良く見せるのではなく、リアルなところをしっかり伝えたいという思いは、コクヨも強く持っています。

「リアル」というキーワードが何度か出ていますが、インスタを運用するうえでのこだわりやルールはありますか?

相馬
ルールという点では、もちろん情報漏洩や、見る人が気分を害さない内容であることへのチェックは欠かさず行います。そのうえで大切にしているのは、いかに「日常のひとコマ」を切り取ったような業務風景を見せられるか。例えば伊藤忠では、朝8時前に出社すると無料の朝食が出るんですが、その写真を「こんなの食べてます」って投稿してみたり。ありのままの生活を映し出すことにこだわっていますね。
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津田
「素」を見せたいというのはありますね。社員に「インスタ用に写真を撮るよ」と言うと「スーツ着ます? ネクタイします??」と聞かれるんですが、普段スーツを着ているところなんて見たことないよ、と(笑)。実際に弊社は、金融系の堅いイメージとは違ってスーツを着ている人が少ないんです。発信用に繕ってしまうと本当の部分が伝わりませんから、毛玉のセーターでもいいから正直な素の姿を見せたい。 それから、見やすさ・使いやすさといったUI/UXにもこだわっています。弊社の本業においては、お客さまにインターネット経由で保険のお申し込みをいただいておりますので、その知見を採用コンテンツにも活かしているんです。実際、CX推進部のメンバーにもインスタの運用に加わってもらっています。

インスタでは、そうした会社の特長や“らしさ”も伝えることができるんですね。

山本
コクヨでも、リアルさに加えてまさにその「世界観」を大事にしたいと思っています。弊社は文房具の会社と思われがちですが、本質としては「創造性を刺激し、世の中の個性を輝かせる」ことを目指す企業です。これは文字で伝えるより、実際にはたらく姿を見てもらう方が断然伝わる。「個々人の個性が輝く」、そんな世界観が感じられるデザイントンマナや写真の仕上がりを意識していますね。

相馬
そういえばコクヨさんは、インスタライブでかなり大胆な企画をやっていましたよね。転職サイトに書かれたネガティブな口コミを取り上げて、社員に真相を突撃インタビューするという……

山本
はい(笑)。普通の人事なら絶対に隠したいような話ですけれど、実際に学生さんはそうした書き込みを読みますし、コメント一つで不安になってしまう。だからこそあえて取り上げ、それに対してコクヨがどう考えているかという姿勢を見せることが大事だと思うんです。その生々しい部分にまで共感してもらえたら、私たちと学生とのマッチング精度も高まります。

本日のインタビュー前にはみなさんで合同インスタライブも実施されたそうですね。

相馬
そうですね。今年度からインスタの運用を始め、他社さんのインスタアカウントは研究のためにも拝見させて頂いていました。その中で、コクヨさんとイーデザイン損保さんは弊社と取り組みの開始も同時期でしたし、コンテンツやクリエイティブにもこだわりが見えて面白いなと感じていたこともあり、お声がけをさせて頂きました。 コロナ禍という状況でなかなか合同説明会等にも足を運びにくい中で、企業同士が連携してキャリアを考えるきっかけを提供する、ということがやりやすい点もインスタのメリットだと考えています。

津田
イーデザイン損保としても、今回、お声かけを頂いたのは非常にありがたいです。
保険というビジネスに限らず、一つの会社の説明だけを聞いていても、そのビジネスの広がりや可能性が見えてこない部分もあると思うんです。そこで、いろいろなビジネス分野の企業が集まって、語り合うような機会は就職活動のためだけではなく、社会の構造を理解していくという点でも学生のみなさんにメリットを提供できるんじゃないかなと。
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山本
その点は非常に大きいですね。大きなビジネスを行おうと思うと、一社だけでは完結せず、いろいろな企業が連携して世の中に価値提供をしていることが多いです。 そういった一つのプロジェクトに関わっている企業同士でコラボしたり、これからの社会を別分野の企業同士が語り合うようなコラボができると、就活年次の学生だけではなく、 大学1・2年生が社会課題やキャリアを考えるきっかけを提供できる機会にもなるのではないでしょうか。
今回、伊藤忠商事さんに良い機会を頂けたので、こういった取り組みは継続していきたいですね。

新たな取り組みは、他の社員への刺激にもなる。

ちなみにみなさんの取り組みについて、社内からはどんな反響が出ていますか? 企業のSNS運営には否定的な考えの上層部も多そうですが……

相馬
最初に提案したときから、否定的な反応は一切なかったです。これはおそらく、新しいことや面白いことに興味を持ち、挑戦を後押しする社風が伊藤忠に根付いてるからでしょう。私は入社2年目ですがインスタ運営を任せてもらっていますし、しっかり考え抜いて運営方針やマニュアルを固めさえすれば、社内も納得して協力してくれます。
運用を始めてからの反響としては、社員が採用活動に興味を持つきっかけになったと感じています。当社商品のインスタ担当者からは「コラボしない?」なんてお誘いもありました。また、伊藤忠では総合職と事務職の2つインスタアカウントを運営しているのですが、事務職の人たちから「私たちの仕事を知ってもらえてうれしい」と言われることがありますね。というのも、人数比の関係で、これまではどうしても総合職の情報がメインになりがちだったので。学生からも情報が整理されていてわかりやすいと好評です。

津田
私の場合も、直属の上司である社長に企画を話したら、二つ返事でオーケーが出ました。意外だったのは、人事以外の社員が想像以上に協力的だったことです。ストーリーズを1日1本UPすると決めているのですが、採用担当だけでは無理だと思い社内で協力を募ったんです。そうしたら若い社員を中心に何人も手をあげてくれました。また、社員紹介の投稿を通じて別の部署の社員が「こんな仕事をしている人がいるんだ」と知れたり、採用活動自体に興味を持ってくれる社員も増えたりと、社内においてもプラスになっている部分があると運用してみてから気づきました。

山本
そうしたインナーブランディングの側面は確かに大きくて、インスタライブやリール動画も視聴数がやたら多いなと思ったら、実は社員が結構見ていた……なんてことも。採用活動自体に興味を持ってもらうのも一つの効果ですし、「社内でこんな新しいことをやっている人たちがいるんだ」と気づいてもらい、それが他の部署への刺激や後押しになるといいなと思います。

自分が望む働き方とは。身を置きたい環境とは。

最後に、インスタ活用や採用の取り組みを通じて気づいたことや、学生の方々に伝えたいことがあれば、ぜひ聞かせてください。

津田
これまでは良い人材を獲得すれば組織も成長すると漠然と考えていましたが、採用活動を担当するようになって、採用後の環境にも意識が向くようになりました。こうしたインスタや面接でのコミュニケーションを通じて私たちに共感し、せっかく入社してくれた人たちを裏切ってはいけない。もっとみんなが活躍できる土壌を作りたい。そう考えるようになったんです。そこで今年度からは、人事部の中で社内カルチャーの醸成やエンゲージメント向上に取り組むチームを発足させ、土壌づくりをスタートさせました。 保険会社は守られたルールの中で働くものだと考える方が多いかもしれませんが、イーデザイン損保はクリエイティビティが求められる会社。新しいことに挑戦し、つくり出すというやりがいを、多くの学生や実際に働く社員たちに感じてもらいたいですね。

山本
これからの時代、新たな取り組みや挑戦を応援しない会社は、どんどん淘汰されていきます。だからきっとどの会社も「チャレンジを応援する」と言うでしょう。そこで学生の方に考えてもらいたいのは、自分が一体どんな環境でチャレンジしたいかということ。例えば最初にもお話ししたように、コクヨは今、社内でさまざまな改革やビジネス創造が進行していて、「うまくいっていないことも沢山あり、みんな一緒に模索している」状況です。新しいことをしたいけれど、前例がないからやり方がわからない。どう応援するのがベストなのかもわからない。反対意見を唱える人もいる。それくらい形のない環境ですが、逆に言えば今ここで自分がチャレンジすれば、きっと5年後、10年後の主役になれる。自分が望む働き方と、会社の環境とのバランスを見ながら、将来のキャリアを考えてもらえたらと思います。

相馬
今のお話からも感じますが、就職活動は自分と企業が情報を出し合いながら、対等な立場でマッチングしていくことなんですよね。私自身が学生の頃は、企業に採用してもらうために、学生たちが必死に立ち向かっていくイメージを持っていました。でも企業から一方的に合否を出されるだけでは、必ずしも自身のキャリアに納得して働くことにはつながりません。お互いに共感し合い、合意を得ながら希望の道を探っていけたらベストですし、そのための新たなコミュニケーション方法に、今後も挑戦していけたらと思います。