<企業紹介>
武蔵コーポレーション
収益用不動産による資産形成のコンサルティングに特化した、プロフェッショナル集団。首都圏エリアにおいて、収益物件の販売からその後の賃貸管理、さらには出口戦略(売却)を含め、一貫した体制で賃貸経営をサポート。「三方よし」の経営を体現し、顧客およびその家族の将来にわたる経済、心、人生の安心を提供している。
<人物紹介>
大谷 義武(写真左)
代表取締役。東京大学経済学部を卒業後、三井不動産に入社。商業施設の開発・運営、オフィスビルの開発・運営など最先端の不動産業務に携わる。退職後の2005年、武蔵コーポレーションを設立。
黒田 漢(写真右)
東京大学教育学部卒業。2016年新卒入社。入社当初から社長室にて、マーケティング部門のリーダーを務める。2020年3月より、同部門のマネージャーに就任。
大学の友人に「何故そんな会社に?」と言われた。
——— 本日はお忙しい中お時間をいただき、ありがとうございます。まずは、黒田様が御社に入社した理由を教えてください。
黒田 漢(以下、黒田): 就職活動でデベロッパーを選択肢に入れていたのですが、人材紹介会社から三井不動産出身の社長がやっている企業があると紹介され、最初に社長と面接をさせてもらいました。そこで事業や理念について話を聞き、すごく面白そうだと思ったことが入社の理由です。
大谷 義武(以下、大谷): 黒田くんとは、入社前に食事にも行ったよね。当時は本社が大宮にあって、社員数は50~60人くらい。今よりもっと小さい会社だったので、東京大学の黒田くんが本当に入社してくれるのか不安でした。私も東大出身なのですが、だいたいみんな大企業に入るので。今でこそ弊社も東大出身者が増えましたが、当時は黒田くんも周りから「何で?」って言われたでしょ?
黒田: そうですね。やっぱり大手商社などに行く友達が多くて「何でそこに行くの?」と言われました。私はアメフト部だったので先輩がいる会社に入る仲間も多かったのですが、武蔵コーポレーションにはもちろん部の先輩もいませんでしたし。
——— それでも入社されたのは強い意志があったからですね。入社の決め手はどんなことでしたか?
黒田: 会社や社長の価値観に共感できたことがまず重要でした。もう1つは、大企業の説明会やOB訪問で話を聞くうちに、大企業だと自分の仕事が会社にどう関わっているのかわかりづらいと思ったからです。武蔵コーポレーションであれば、自分のやったことが会社や世の中に反映される実感を持てると思いました。
——— 黒田さんのケースを含めて、採用面接において大谷社長が心がけていることはありますか?
大谷: 素の自分、素の会社を出すことです。入社前のイメージと、入社後の実態にギャップがあると、お互いにとって幸せにつながらないと考えています。実物以上に大きく見せることもせず、ありのままで伝えることを常に意識しています。
黒田: たしかに、社長が同じ目線に立って話してくれたのを覚えています。父親や姉のこと、自分が育ってきた環境など、ほかではあまり聞かれないようなことを聞かれましたね。あと、社長が私の父に手紙を書いてくれました。
——— お手紙ですか、それはどのような想いから書いたのですか?
大谷: 就職って本人も不安ですが、1番不安なのは親だと思うんです。だからこちらの想いを伝えましたし「既存のレールでルーチンワークをするだけでなく、新しいことをつくっていけるご子息だと思います」というようなことを書いて、お父様に直接送りました。
——— それは親御さんも安心しますし、嬉しいですね。現在でもお手紙を書くことがあるのですか?
大谷: いやー、当時はまだ人数が少なかったからできましたが、今は中々難しいですね。
会社の理念をつくった「三方よし」の言葉
——— 黒田様が理念に共感されたとのお話もありましたが、大谷社長が経営において大切にしていることは何でしょうか?
大谷: 日本的な経営と言いますか「社員は家族」という考えを最も大事にしています。様々な経営判断がある中で「社員が幸せになるかどうか」を軸にしてきました。たとえ利益が上がることでも、社員が幸せにならないのであればやりません。
——— そう思われたきっかけがあったのでしょうか?
大谷: 私は元々三井不動産にいたのですが、大きな会社でしたのでお客様から直接「ありがとう」を言ってもらえる機会が中々ありませんでした。そのうちに、何のために仕事をしているのかが分からなくなり、世の中に直接貢献できるような、平たく言えば「ありがとう」と言ってもらえる仕事をしようと思って起業したんです。ただ残念ながら私はビジネスエリートではないので、本当に1人で、400万円を元手にゼロからのスタート。最初は経営の「け」の字も分からず、銀行から「試算表を持ってきてください」と言われて「何ですかそれは?」と言うくらいのレベルでした。
——— そこから現在の規模まで拡大してこられたのですね。
大谷: 順調にいったこともあれば、多くの苦労もありました。実は、事業が成長し社員数も拡大する中で、何のために会社をやっているのか分からなくなった時期もありました。世の中の役に立とうと起業をしたけど「やっぱり利益が大事かな」など色々と考えていたとき、ある人が「三方よし」という言葉を教えてくれたんです。関わる人みんなの幸せが大事で、その中でも社員が1番大事なんだと話してくれて、それで近江商人を知り、本を読んだりして学んだのが10年前くらいです。
——— では「社員は家族」という想いは10年続いているのですね。
大谷: そうです。弊社の売り上げは現在100億円を超えていますが、この業界では50億円を超えると上場するのが普通です。でも弊社は上場しないと決めました。IPOというゴールを目指すのではなく、社員のため、お客様のための会社であり続けることを大切にしています。
——— 「社員は家族」の理念を、黒田様はどういったところで感じますか?
黒田: 常に感じていますね。例えばオフィスはワンフロアで仕切りもないですし、役員室もありません。またルールもあまりなくて信頼関係で会社が動いていて、どうしたら全体がよくなるかを自分たちで考え、貢献していきます。やはり根本に絆があるから、このスタイルでうまくいっているのだと思います。また社員旅行など行事も多いですし、週に一度全員が集まる会議があり、理念の共有をしています。
——— 直近の社員旅行は、どこに行かれたのですか?
大谷: 毎年沖縄に行っています。やはり暖かいと開放的になるじゃないですか?寒いところに行っても凍えてしゃべらなくなってしまうので、沖縄がいいかなと。
背伸びをした、もう一歩上の仕事を任せる
——— 黒田様の現在のお仕事について教えてください。
黒田: 入社以来ずっと、マーケティングに従事しています。弊社の事業は収益物件の販売管理なので、投資物件を買いたい人、売りたい人を広告施策によって集めることがマーケティングの仕事です。
——— 若くしてマネージャーをされていますが、これまでを振り返っていかがですか?
黒田: 最初はどうしてもやりたいことばかりが先行してしまい、能力や時間が足らずにできないことも多い中で、できることを取捨選択してやってきました。それが今では人数も増え、実現できることが多くなってきました。マーケティングの精度もより高めることができ、今後の可能性も感じています。しかしその一方で、時間や人手があるために非効率になってしまうことも。規模が拡大しているからこその課題も感じています。
——— マネージャーとして黒田様が大切にしていることは何ですか?
黒田: これは社長や先輩から教わったことですが、後輩のモチベーションを最大化することです。テクニックを教えるにしてもモチベーションを上げる前提でやりますし、ちゃんと褒めたり、お礼を言うことも大切にしています。また、メンバーの上に立つポジションではありますが、自分の悪いところは改め、ときには謝る姿を後輩に見せていくことも意識しています。
——— 大谷様はマネジメントにおいて大切にしていることはありますか?
大谷: リーダーの役割は2つしかないと思っていまして、1つは方向性やビジョンを示すこと。もう1つは今黒田くんが申しましたように、モチベーションを上げることです。そのために、以前は厳しく怒ったりもしていましたが、今はそうではなくて99%褒めるようにしています。
——— なるほど、それは何故でしょうか?
大谷: 私なりの失敗の積み重ねでわかったのですが、怒っても効果はほとんどないんです。それでモチベーションが上がるならば怒りますが、目的は活躍してもらうことなので、そのためには褒める方がいいですね。
——— 黒田様をはじめ、御社では若くても責任ある仕事を任されていますが、それは会社の方針でしょうか?
大谷: 持っている能力に、少しプラスアルファした仕事を任せるようにしています。筋トレと一緒で、軽すぎては力が付きませんし、重すぎて「全然上がらない」という場合もトレーニングになりません。自分が背伸びした、そのちょっと上くらいのレベルの仕事をやり続けると、人間は伸びると考えています。それはマーケだろうと、営業だろうと、人事だろうと変わらないですね。
——— だから御社の社員は成長が早いのですね。
大谷: 例えて言うと、練習はあまりしないで、いきなり打席に立ってもらいます。黒田くんは1年目からマーケティングのリーダーとして5億円の予算を預かって頑張ってきました。ほかにも採用部門のリーダーは、新卒も中途も取り仕切って、こうしてビズリーチさんにお願いしたり、どこかのイベントに出たり、全部采配して実行しています。いきなり実践に出て経験を積めることは、弊社の強みだと思います。
大学を選ぶように、会社を選ぶべきではない
——— 黒田様の3年後くらいの目標を教えてください。
黒田: 会社の成長と自分の成長は、基本的に同じだと思っています。営業などほかの仕事をしたい気持ちはなくて、マーケティングの仕事や今支援している新規事業、エリア展開など、自分の役割をきちんと認識できる人間になりたいです。3年後は今任されている仕事をしっかり推進することが目標です。
——— 大谷社長は、黒田様や新しく入社する若手にどんなことを期待していますか?
大谷: 細々ながら拡大している中で、どこの組織でも会社の核になる人間が必要です。黒田くんは間違いなくそうなれる人間なので、マーケティングに加えて、組織を動かす経営の役割も期待しています。3年くらいのスパンだと、業務で輝かしい実績を残すだけではなく、会社の舵取りにも参画してもらいたいですね。
——— 最後に、今就職活動している学生にメッセージやアドバイスをお願いします。
黒田: 就職と勉強の違う点は、誰かがいいと言っていることが、自分にとっていい道じゃないかもしれないことです。テストだと、用意された正解に最短で辿り着くことがいいとされています。大学選びでも、特に東大生は「1番難しいから」という理由で選んだ人も多いでしょう。でも会社は偏差値で切れるものではないですし、興味、関心だけで切っていくものではなくて、価値観を共にする人達が集まって、目的や理念に向かって歩んでいくものです。だからこそ、自分だけの答をしっかりと掴むことで、腹をくくって進んでいけるのだと思います。大学を決めるように就職先を決めるのは、やめた方がいいと思います。
——— まさにご自身が就職活動で実行したことですね。それでは大谷社長もお願いします。
大谷: 自分にとって「いい」会社とは、自分に「合う」会社ではないでしょうか。事業が合うとか、社風が合うとか色々ありますが、500人規模くらいまでの会社だと、やはり社長との相性が非常に重要。トップの理念や考え方に共感できるか、ついていきたいと思えるかを大切にするべきだと思います。