資生堂の企業研究はOB訪問がポイント
資生堂では化粧品の製造や販売を行っています。商品を愛用している人も多いのではないでしょうか。日本国内だけではなく、海外にもファンがたくさんいます。そんな資生堂の内定を目指すには、企業研究が不可欠です。OB訪問をして、資生堂について深く理解しましょう。
しかし準備を行わずOB訪問をしても、十分な成果を得られない可能性もあります。そうならないよう、何をどう準備すればよいのか、ポイントや注意点を把握しておきましょう。
企業概要
資生堂は2018年時点で、140年以上の歴史があります。1872年、日本で初めての洋風調剤薬局として、創業しました。その後、1897年に化粧品業界にシフトしています。1902年には、日本で初めてソーダ水やアイスクリームの製造販売も行いました。
1916年から1926年にかけては、化粧品事業をメインとし、1927年から独自製品を販売するようになります。2018年には、グローバル展開やインターネットを活用したビジネススタイルを確立しました。
化粧品だけを取り扱っているわけではなく、幅広い事業展開を行っています。化粧品事業以外にも、レストラン、ヘルスケアや小売事業、教育や保育事業などを展開中です。
事業内容
資生堂の事業内容を理解しておくことは、OBにマナー違反と思われないためにも重要なポイントです。また、資生堂は化粧品以外にもさまざまな事業展開を行っています。OBからどのような事業に興味があるか問われても、落ち着いて答えられるようにしておきましょう。
そのためには、表面的な事業内容だけ理解するのではなく、各事業がどのような業務を行っているか詳しく把握しておくことが大切です。
化粧品
資生堂の代表的化粧品に「SHISEIDO」があります。プレステージブランドとして、世界中で販売されている化粧品です。また「クレ・ド・ポー ボーテ」や「bareMinerals」「NARS」「イプサ」などが知られています。
他にも、スキンケア、メーキャップ、サンケア、フレグランス製品を展開中です。フレグランス製品では、世界的に著名なデザイナーとのコラボレーションを行い、資生堂オリジナル製品を世に送り出しています。
コスメティクスの分野では、ドラッグストアや量販店などで中低価格帯の化粧品を販売。パーソナルケア事業では、ドラッグストアや量販店で低価格のスキンケア商品、シャンプーなどのヘアケア、ボディーケア商品などを取り扱っています。
プロフェッショナルは、ヘアケア、スタイリング、ヘアカラーやパーマ剤などの商材を、ヘアサロンに販売しています。
デジタル
デジタル事業では「ワタシプラス」というWEBサービスを運営しています。資生堂商品のオンラインショップでもあり、WEBを通して商品を購入可能です。ワタシプラスでしか購入できない限定商品も販売しています。資生堂のお店を探したい人のためにナビゲートサービスも行います。
資生堂の商品情報を提供すること、トレンド情報や化粧のハウツー記事などの情報も提供中です。資生堂グループの情報もチェックできます。
ヘルスケア
美容食品や健康食品などの販売を行います。美容食品として、ザ・コラーゲンや、医薬品、医薬部外品などを取り扱う、イハダというブランドもあります。ザ・コラーゲンは、20年以上のコラーゲン研究によって生まれたブランドです。主にドリンク、タブレットの美容食品といったラインナップとなっています。
イハダは肌トラブルの解決を目指すブランドです。特に顔を中心にした商品が多く、肌荒れや乾燥予防に関する医薬部外品、花粉対策の雑貨品を取り扱っています。尿素を配合したクリームやローションの、フェルゼアブランドなどでも知られるブランドです。
レストラン
レストラン事業も展開しています。資生堂パーラーは、1902年(明治35)ソーダファウンテンとして生まれました。レストランや喫茶店をはじめ、洋菓子などの食品、製造販売、食品の輸入販売、不動産の所有や賃貸、売買、仲介業や受託管理も行っています。
他にも、2018年10月1日にグランドオープンするファロ、1973年銀座にオープンしたフランス料理点ロオジエ、カクテルや焼酎、ワイン、ウイスキーや料理を楽しめるBAR/Sなどを展開中です。
小売
小売事業では、ザ・ギンザがあります。1975年に、セレクトショップとしてオープンしました。美意識の高い女性たちを満足させるため、服だけではなくアートやライフスタイルまで提案したお店です。
2002年、ザ・ギンザオリジナルの化粧品を販売するようになりましたが、2018年現在では、ブティック事業から撤退しています。
代わりにオリジナル化粧品の開発や企画や販売、卸売や、セルジュ・ルタンスブランドの輸入販売や直営店、空港の免税店における、資生堂化粧品の販売などを展開中です。
フロンティアサイエンス
フロンティアサイエンスでは、ヒアルロン酸や医科向けの化粧品の製造や販売、アミノ酸の分析受託などを行っています。資生堂は日本で初めて発酵培養法によるヒアルロン酸の製造を行いました。
1985年からは、ヒアルロン酸を大量生産をスタートさせています。資生堂のヒアルロン酸は原料に特徴があり、非動物性由来保証であることを徹底しています。
他にも、医薬品としてのヒアルロン酸の製造販売、膝関節注射、眼科用手術の補助剤としての癒着防止材、美容整形剤などには資生堂のヒアルロン酸が使われているのです。
教育
教育事業として、資生堂美容技術専門学校があります。美容師国家試験やエステシャン試験で全国と比較しても高い合格率を誇っているのが特徴です。美容師やヘアスタイリスト、ネイリストやエスティシャン、ビューティコンサルタントなどを目指す学科やコースが設けられています。
また、美容師通信科コースなどもあります。「美しく生きる」をかなえようという教育理念の元、毎年、多くの生徒が美について学んでいる学校です。
保育
事業内容として、事業所内保育所の開園や運営などのコンサルティングや運営を行います。会社設立は2017年で、2018年現時点では比較的新しい事業でしょう。
近年、仕事と育児の両立は社会的な問題が生じています。企業によっては、育児休暇などを設けている所もありますが、多くありません。育児待機の問題もあります。そのような問題に対し、資生堂では事業所内保育所という解決の提案を行っているのです。
主なサービスとして、プランニングのサポート、事業所内保育所設置へのコンサルティング、開園、運営などがあげられます。
店舗・サービス
資生堂美容室や、化粧品や美容サービス、撮影、美容レッスン、カフェ、美容セミナーを提供するSHISEIDO THE STOREの運営があります。資生堂提携のクリニック、生活の質の維持や向上のサポートを行う資生堂ライフクオリティビューティセミナーの開催など多くの事業を展開中です。
過去3年間の売上/利益推移
これからは資生堂の、過去3年間の売上と利益推移をみていきます。データは下記のサイトを参照しましたが、営業利益率は計算した後で、端数を切り捨てしています。
(単位/億) | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 |
売上 | 7,630 | 8,503 | 10,050 |
営業利益 | 376 | 367 | 804 |
当期利益 | 232 | 321 | 227 |
営業利益率 | 3% | 4% | 2% |
2012年、日本国内の消費が落ち込む状況でした。それでも政権が変わったことへの期待で、経済状況が少しだけ良くなりました。結果、化粧品市場全体では前年と同等となっています。
2013年は、化粧品市場全体が持ち直す流れも見えました。しかし、欧州の債務危機と失業率が尾を引いており、化粧品市場では苦戦しています。2014年は物価上昇の影響がありましたが、2015年になると、日本国内で回復の雰囲気も出てきています。
2017年は、日本国内で雇用などの回復が見受けられるようになった時期です。それに連れ、化粧品市場も回復しました。また訪日外国人によるインバウンド需要の好影響が出ています。
次年度の戦略
資生堂は2018―20年度経営戦略・計画「世界で勝てる日本初のグローバルビューティカンパニーへ」を2018年3月5日に策定しています。
基本情報
中期経営戦略では、ブランド事業の選択と集中などが掲げられています。コスメティクス・パーソナルブランド事業について、アジアを中心に成長を加速すること。プレステージファースト戦略として、資生堂の強みであるスキンケア商品における収益の基盤を強化し、シェアの拡大を図るとしています。
また、デジタライゼーションを加速すると共に、それを利用した新事業開発も視野に入れています。M&Aや専門家などの人材と融合し、イノベーションによる新しい価値を作ることも盛り込まれました。デジタルを利用すること、グローバル的な面での強化など、多くの目標が中長期計画に含まれています。
2018年の資生堂に関するトピックス
2018年、資生堂にどんな動きがあったか知るなら、ニュースをチェックしておきましょう。OB訪問でも、話題に出る可能性があります。
8K映像でも見えない美肌を作る化粧品を発売
9月1日、資生堂が自社ブランドのPLAYLISTから新商品を発売しました。特徴は「8K映像でも自信がみなぎる肌を演出できる」というものです。8K映像は超高精細であり、肌のちょっとしたトラブルでもはっきりと見えてしまいます。
テクニックも不要でプロレベルの仕上がりになるベースメイク製品です。ヒアルロン酸やコラーゲンが配合されており、全6品目で13品種。資生堂が運営するサイト「ワタシプラス」や「Amazon」「ロハコ」などで取り扱われます。
子どもたちが資生堂の工場で職場体験
8月2日、資生堂の久喜工場で職場見学・体験会が行われました。単純な職場見学ではなく、埼玉県が進めている女性活躍推進事業の一環となっています。
久喜工場では、シャンプーや洗顔フォームを製造。多くの女性社員が研究業務を行っている工場でもあります。同時に女性研究者を育てることについても力を入れているのです。久喜工場で勤務する女性社員が、業務の説明ややりがいについて子どもたちに語りました。
資生堂の化粧品でおしゃれに野球の応援をしよう
野球の世界でも、資生堂がユニークな試みを行っています。パ・リーグの球場で行われているもので、ほっぺたにハートマークでメイクアップを行いました。これは資生堂のセルフメイクアップブランド「インテグレート」と「パ・リーグの6球団」がコラボしたもので、勝利のハートメイクという試みです。
女性は野球観戦でもおしゃれに気を使いたいもの。インテグレードのメルティーモードチークを使ってハートマークを描くだけなので非常に手軽です。
2016年から、パ・リーグと資生堂は女性の応援文化を作る取り組みを行ってきました。その中で勝利の女神メイクを提案して好評でした。その成功が今回の勝利のハートメークにつながったのです。
化粧品業界の動向
資生堂のOB訪問へ行くなら、化粧品業界全体の情報も知っておきましょう。化粧品業界全体の影響に、資生堂も大きく関わっているからです。平成20年から27年までどのような状況だったか知ることで、資生堂の業績推移も見えてきます。
化粧品業界の業績推移
平成20年から24年にかけ、化粧品業界では大きな低迷はありませんでした。ただ、平成24年では少し低迷しています。平成25年から業績はアップし、平成27年まで徐々に増加傾向の流れとなっています。
外国人の化粧品需要で業績アップ
化粧品需要は、いつの時代でもあります。平成20年から24年にかけてはリーマンショックなどの影響により、日本全体が不景気に包まれていました。そのような時期だと、低価格で高品質な化粧品を求める人達が増えたことで業界全体が苦戦したのです。
平成25年、業績は増加しましたが、その背景にあるのは海外からの観光客などです。中国や韓国や台湾からの訪日外国人の爆買いなどが、化粧品業界の業績アップにつながりました。
また、平成26年に化粧品は免税対象費となったことも、購入増加につながっています。ただし、日本国内での需要は苦戦している状況です。そのため、海外展開に力を入れる企業が増加しています。
資生堂へOB訪問に行く前に準備すべき3つの項目
資生堂のOBに会う前に、きちんと準備をしておくと、質問の内容も深まります。OBが本気度を感じ取ってくれる可能性も高くなるでしょう。準備をしていなければ、そのときどきで対応することが多くなります。それでは充実したOB訪問と程遠いものになるでしょう。
事業内容と職種について深く理解しておきましょう
資生堂は化粧品だけではなく、複数の事業を行っています。その事業ごとに求められる職種が変わるのも当然です。総合職として、営業や、マーケティング、財務、経営管理があります。コーポレート企画では、総務人事やITなどの職種も資生堂を支える職種の1つです。さらに広告、宣伝デザイナーやコピーライターなども総合職になります。
一方でビューティーコンサルタントなどの仕事もあります。デパートや化粧品専門店、ドラッグストアなどで、カウンセリングを通し、化粧品を販売します。基礎研究から、製品開発、品質保証から安全までの研究を行う研究職も重要です。製品を開発するための生産という仕事もあります。
どんな働き方をしたいのかあいまいだと、OB訪問で仕事のことを深く聞くのはむずかしくなります。その点を考え、事業だけではなく、職種内容もしっかり把握しましょう。
企業理念も理解しておきましょう
企業研究を深めるには企業理念も理解しておきましょう。企業理念は企業の方向性を決める基準の1つです。資生堂グループでは「Our Mission Values and Way」という企業理念を掲げています。Our Mission、Our Values、Our Wayとそれぞれに意味があります。これも企業理念を理解する上で重要な情報でしょう。
OB訪問で企業理念を知っているかどうか聞かれるかもしれません。質問を考える時、企業理念を知ることで、深いものになります。また、資生堂にふさわしい人物かどうかの判断材料にもなるのです。そのことを踏まえ、企業理念を理解しておきましょう。
勉強不足にならないようビジョンをチェックしましょう
資生堂が将来的にどのようなビジョンを描いているかも理解しておきましょう。歴史もある程度、知っておいたほうがよいです。過去があるから現在の資生堂ができているからです。また、2018時点で、資生堂では、VISION2020という抽象機戦略を策定しています。この中長期戦略は、今後の資生堂の方向性を決めるものです。企業がどのような方向へ進んでいくか知れば、働いている場面をイメージしやすくなります。このようなビジョンを知ることで、評価が高まる可能性もあります。
OB/OGへの質問を準備
OBやOG訪問をするなら、質問は非常に重要です。質問次第で、勉強をしているかどうか分かるからです。ホームページを調べると分かるような情報や、資生堂だけではなく他企業にも通じるような質問では、OBやOGが、がっかりするかもしれません。
しかしあまりに高レベルな質問だと、新人レベルのOBやOGには分からない場合もあります。その点も考慮に入れた質問をぶつけましょう。
マッチング度をはかれる質問
資生堂に入社できたものの、働いてみて相性が悪ければすぐ辞めたくなります。どんなに優秀な人材でも誰にでもある問題です。相性がよいかどうか確かめるためにも、マッチングをチェックする質問をしましょう。
- ビューティコンサルタントを志望しています。スキルや性格も含め、どんな人が向いているでしょうか?
ビューティコンサルタントは、人と接する販売業です。対応次第で、資生堂全体のブランドイメージが決められる場合もある重要な仕事です。どのような人が向いているのか知っておきましょう。
- 営業職を志望していますが、特に辛かったことやよかったことなどがあれば教えてください
資生堂の商品はデパートからドラッグストア、スーパーまでありとあらゆる所にあります。営業マンの先輩が努力したからこその結果とも言えるでしょう。
営業だけではなく、ビューティコンサルトでも、デザイナーでも資生堂で働く上でよいことも悪いこともあるはずです。それを事前に知っておくことで、自分が資生堂に合っているかどうか確かめる判断材料となります。
企業研究に役立つ質問
OB訪問は企業研究の一環です。同時にホームページでは分からないことを素直にぶつけることができるチャンスです。企業研究に役立つ質問をすることで、深く資生堂を理解できるでしょう。
- ダイバーシティについて力を入れていると感じています。ダイバーシティへの取り組みで、よかったこと、悪かったことを教えてください
資生堂は女性社員が8割を越えています。また、性別や年齢に関係ない企業風土を作るためにダイバーシティに取り組んでいます。このダイバーシティへの取り組みについて聞くことで、実際の企業風土を知る材料になるでしょう。
- 中長期計画では、若者があこがれてやまない会社へという言葉がありました。その目標達成のために、どのような取り組みが検討されているのでしょうか?
資生堂の中長期計画では若者を対象にした取り組みも考えられています。どんな取り組みをするかは、若者として入社する自分の能力が活かされる可能性もあります。実際に中長期計画をチェックして、感じたことを質問にしても良いでしょう。
選考に役立つ質問
選考を有利にするためには、OBやOGから直接情報を聞くことは大切です。資生堂で求められる人材を考えて、質問をぶつけてみましょう。
- 今後、海外での事業展開に力を入れると感じています。その時、語学力はどの程度必要になるでしょうか?
資生堂ではグローバル事業を今後、強化する傾向にあります。海外志向が強い人にとってはチャンスでしょう。ただ、求められる語学力はどの程度なのか知っておいて損はありません。どのような語学が必要になってくるかも、OBやOGに聞いておくとよいでしょう。
- 化粧品事業にたずさわれる職種を考えています。そこで化粧品についてどれだけの知識が必要なのか教えてください。
資生堂のビューティコンサルタントになるなら、化粧品への知識が必要です。ただ、それは営業も同じことです。どれだけの知識が必要かは働いた人でなければわからない部分でしょう。勉強不足なのか、基礎的な知識をすでに持っているか確かめるためにも重要な質問です。
事業内容を理解しどんな職種を志望するか整理しておきましょう
資生堂で働くことを考えるなら、まずは企業研究をしっかり行っておきましょう。ビューティコンサルタントや営業、事務、また他の事業など、さまざまな職種があります。 その中で自分はどんな仕事をしたいか、ある程度、方向性を決めておくことも重要です。OB訪問では深い質問をするため、事前に資生堂研究を深めておきましょう。