東レとは
東レとは、合成繊維や合成樹脂をはじめとする化学製品や情報関連素材を取り扱う大手化学企業です。東洋レーヨン株式会社として大正15年(1926年)に設立され、1970年1月に社名を東レ株式会社と変更しました。
社名にある「レ」は、化学繊維のレーヨンを意味しますが、同社では現在、レーヨンの生産は行っていません。近年では炭素繊維のシェアで世界トップクラスを誇る企業になります。また、三井グループの中核企業としても有名です。
企業概要
OB訪問を行うにあたり、企業の事業内容は押さえておくべきポイントです。東レの事業内容とは、どのようなものなのでしょうか。
事業内容
東レでは大きく5つの事業を世界26カ国・地域で展開しています。ここでは事業内容を詳しくみていきましょう。
繊維
東レの繊維事業はナイロン、ポリエステル、アクリルの3大合成繊維全てを有し、原糸・原綿、テキスタイル、縫製品等、衣料用途から産業資材用途まで幅広く展開していることが特徴です。
その中でも、天然繊維の絹の構造を模倣した原糸開発から生まれた「シルック」は1963年に開発され、1964年に発売されました。現在でも進化を続けており、次の時代に続く「シルック」シリーズや東レ「シルック」きものなど、新しい姿を提案し続けています。
同じくして開発されたアクリル繊維の「トレロン」によって、セーターなど洗濯によって縮んでしまう衣類の不安を解消することにも成功しています。
機能化成品
機能化成品事業部では、樹脂・フィルム・ケミカル製品・電子情報材料の4つの事業分野で多様な素材を展開しています。
特にLCD用光学フィルムに関して、ベースフィルムだけでなく、高機能フィルム加工品などへの展開を進めるとともに、中国や韓国へもグローバルに拡販を推進しています。
ポリエステルフィルムや特殊有機溶剤の世界ナンバーワンメーカーとして高い国際的競争力を誇り、また、非石化原料由来の樹脂や次世代電池部材フィルムなど環境対応にも力を入れている事業になります。
炭素繊維複合材料
航空・宇宙用途と環境・エネルギー分野などの産業用途、スポーツ用途など、さまざまな用途で使用されているPAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維を展開しています。
東レは、世界最大のPAN系炭素繊維メーカーとして成長を続けています。現在では世界トップシェアの地位を得ていますが、さらに断固たる信念をもって研究を続け、航空機産業向けに加え自動車産業向けにも用途開発を進めています。
近年の東レでは、スポーツグッズの分野でも高い評価を得ています。航空機や自動車の軽量化による大きな省エネ効果も期待されており、地球温暖化問題解決に貢献する素材として注目を集めています。
環境・エンジニアリング
世界トップレベルの技術を有する逆浸透膜(RO膜)に加え、海水淡水化システム、環境関連機器、プラント・エンジニアリング、住宅・建築事業など幅広く展開をしています。逆浸透膜事業はグローバルに展開し、主なプラントの例として、中国や韓国、シンガポールやアルジェリアなどが挙げられます。
水不足の深刻化が予想される21世紀の水需要に対し、世界トップクラスの技術で水資源の確保にも貢献しています。例えば、逆浸透膜の水処理技術の全出荷量を水量換算すると、5,390万立方メートル/日となり3.7億人分の生活水を作り出すことができるのです。このような高い技術を世界での環境改善に役立てているといえる事業になっています。
ライフサイエンス
医薬事業、人工腎臓などの医療機器事業、DNAチップなどのバイオツールという3つの柱で事業拡大を目指しています。医薬・医療事業を中心として医療の質の向上、医療現場の負担軽減、健康・長寿への貢献といった社会ニーズに対応しています。また、分析・調査・研究などのサービス関連事業も行っています。
近年、ライフサイエンス研究の進化に伴い、医薬品の研究開発は迅速かつ効率化が求められています。そこで東レでは「アウトソーシング」の活用も行いながら、質の高いサービス提供に努めています。
過去3年間の売上/利益推移
これからは東レの、過去3年間の売上と利益推移をみていきます。データは下記のサイトを参照しましたが、営業利益率は計算した後で、端数を切り捨てしています。
(単位/億) | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 |
売上 | 21,044 | 20,264 | 22,048 |
営業利益 | 1,544 | 1,468 | 1,564 |
当期利益 | 901 | 994 | 959 |
営業利益率 | 4% | 5% | 4% |
日本における繊維生産の量は年々減ってきています。貿易で考えても、輸出量はかなり少なく、輸入量との差が広がるばかりの現状です。そんな低迷気味の繊維製造業界の中でも、東レは確実に成長を続けている会社だということが分かる表になっています。
次年度の戦略
・ 成長分野での事業拡大
・ グローバルな事業の拡大・高度化
・ 競争力強化
東レは公式HPにて、3つの基本戦略を掲載しています。「革新と攻めの経営」で成長を目指す会社が掲げた3つの基本戦略で、2019年度売上高2兆7,000億円を目指しています。営業利益率も9%を目標に掲げ、社員が一丸となって東レの目指す未来に向かっている途中です。
Chemistry(化学)を核に技術革新を追及し、「先端技術で世界のトップ企業を目指す」東レのこれからの成長には目が離せません。
2018年の東レに関するトピックス
東レに関する記事は多く、世間が注目していることが伺えます。その中でいくつか気になる記事をみていきましょう。
今秋開業施設にボーイング787初号機を展示
2018年10月12日、中部国際空港内に開業予定の複合商業施設「FLIGHT OF DREAMS(フライト・オブ・ドリームス)」のコンテンツ展示エリア「FLIGHT PARK(フライトパーク)」にボーイング787初号機が3台展示される予定です。
このボーイング787の製造には、多くの日本企業がかかわっています。その中でも炭素複合材の材料は全て東レの素材を使用しており、機体の軽量化に大きく貢献しています。
航空宇宙産業を夢見ている子供たちが、わくわくできるような施設になることが期待されます。世界に誇れる航空機の一部に東レの素材が使われていることを実際にみて体感できる貴重な場所になることは間違いありません。
ドライEX素材を使用したテニスウェアを選手が着用
ユニクロと共同開発したドライEX素材でテニスウェアを開発、数々の試合で優勝経験のあるテニス選手フェデラー選手が着用することが決まりました。今後の年間主要トーナメントに、ユニクロのグローバルブランドアンバサダーとして出場します。
この高機能ドライEX素材とは、特殊構造により通常のドライ機能素材よりも吸汗速乾性に優れ、発汗による蒸れやベタつきを防ぎ、試合中の快適さをキープすることを目的として開発されています。試合中のベストコンディションを保つサポートをしてくれます。
車輛内素材としての使用は世界初
マツダから発売される「アテンザ(2018年大幅改良モデル)」に東レの開発した新素材が使用されます。「Ultrasuede(R)nu(ウルトラ・スエード・ヌー)」というスエード調人工皮革で、アテンザのインストルメントパネルとドアパネルに採用され、車輛内素材として使用されるのは世界で初めてです。
車輛内素材に求められている染色堅牢度や耐摩耗性といった機能性と、スエードタッチのきめ細かく滑らかな風合いや銀面調の豊かな艶といった感性を両立された素材として各方面からも高い評価を受けています。これからの活躍にも興味が持てる素材になります。
繊維業界の動向
繊維業界の動向についてみていきましょう。しっかり繊維業界の動きを把握することで、今後の就職活動に役立ってくれるはずです。
繊維業界の業績推移
経済産業省「工業統計表」によると、平成28年の製造品出荷額等は3兆8,148億円で、2014年頃からゆるやかに回復傾向にあります。
しかし、1991年のピーク時の数字が12兆8,500億円ということもあり、そのころと比べると出荷額は大幅に減ってきています。繊維業界全体が依然として苦しい環境下にあるのは間違いありません。
自動車向けなど産業用を中心に回復傾向
繊維業界全体の低迷の理由の中で、海外の影響力は大きいです。中国や東南アジアから安価で大量輸入があり、さらに衣料品全般の伸び悩みを背景に業績不振に陥ってしまいました。
こうした動向から、日本の繊維大手は大型のM&Aに乗り出します。東レは2013年に炭素繊維大手の米ゾルテックを約600億円で買収、さらに繊維・水処理膜大手の韓国ウンジンケミカルも約400億円で買収しました。
東レの展開する炭素繊維はホンダの新型燃料電池車(FCV)に採用されることが決まり、現在では燃料電池本体の電極基材用カーボンペーパーや高圧水素を貯める貯蔵タンクに使われています。
東レは、日本の繊維業界最大手というだけでなく、さらには世界トップクラスの炭素繊維メーカーとして環境対応車向けの材料開発を積極的に進めていることも回復傾向に進んでいる要因のひとつになります。
東レへOB訪問に行く前に準備すべき3つの項目
東レをさらに深く知り、OB訪問で内定を優位に進めたいと考えている学生は多いです。事前にきちんと準備をすることで、OBにも好印象を与えることができます。ここでは重要なポイントを3つ挙げています。
東レの人材育成制度について理解する
東レでは人こそが最大の経営資源と考え、「企業の盛衰は人が制し、人こそが企業の未来を拓く」という信念の下、幅広い人材育成に努めている会社といえます。
最先端の専門知識を有し、世界を舞台に活躍する人材を育成する為、全階層・分野の社員を対象に、営業力からマネジメント強化の研修までを実施しています。その中でも特徴的な制度を紹介します。
事務系新入社員の工場配属制度(7ヵ月間)
事務系新入社員は配属決定後に、メーカーの原点である工場でモノづくりの流れや素材の知識を学びます。工場勤務を経験することで、技術部署や生産部署との連携が取れる人材を育成することを目指しています。
海外研修制度
国際ビジネスパーソンの育成を目的に、海外の大学や研究機関で専門知識を学んだり、経営学修士取得、現地関係会社にて実務研修を受けることができます。
東レ経営スクール
東レおよび東レグループの将来の経営者の早期育成を目的として、若手課長層を対象に企業経営のノウハウを習得し、他社事例の研究やグループ別共同研究を行うことで、経営についてトップへの提言することを行っています。
このように、多彩な人材育成制度が存在し、人を育てることを徹底している東レだからこそ、入社してからの自分自身のキャリアプランに大きく繋げていくことができます。研修制度を確認することで、入社してからの理想とする自分を想像し、その実現に向けて自分の頑張ることがみえてきます。
企業研究・業界研究を深める
東レとしての企業研究はもちろん、繊維業界全体の研究も徹底しておこなうべきです。それにより、OB訪問の際に的確な質問することができ、有益な時間を過ごせます。
先ほども述べたとおり、繊維業界の規模は縮小傾向にあることは明確で、繊維事業以外の事業を展開して巻き返しを図っている企業が多いです。各社とも培ってきた繊維技術を活かし、今後はさらなる事業拡大とグローバル展開に注目が集まっています。
そこで、企業研究・業界研究を徹底し、まずは自分がどの事業分野で活躍したいのかを明確にしてから質問を考えることで、OB訪問で先輩に「しっかり勉強してきている」と感心してもらえたり好印象を与えることができます。
親身になってくれるOBを探す
OB訪問に行く際にはOB探しをしなくてはいけません。インターネットを使って探す方法が代表的ですが、ゼミ・サークルの先輩、あとは家族や親せきなど身内からみつけることができればチャンスです。
このOB探しには、絶対に手を抜かないでください。OB訪問は選考や内定に関係ないと思っているかもしれませんが、東レのOB訪問は評価対象になっています。実際に、OBの方から届いた訪問のお礼に対する返信メールの中には、その学生の評価とともに人事の方に伝えるという旨が記載されています。
OBの方は当然忙しい中で時間を作ってくれていることを忘れないでください。事前に準備をきちんと行い、真摯な態度で接することで、OBの方もより親身に対応してくれます。東レの社員の方は親身になってくれる方が多く、学生からの評価も高いです。
社風が合っているか・自分が働いているイメージが湧くかなど、今後の選考を見越して面接の志望動機にも繋がるような有意義な時間にしましょう。
OB・OGへの質問を準備
OB・OGへの質問を事前にしっかり考えていくことで、不明な点や不安に思ったことの解消だったり、自分の熱意のアピールをすることができます。意味のある質問をしっかり考えて、準備をしてからOB訪問に臨みましょう。
企業とのマッチング度を確認できる質問
- 先輩からみられて、東レの風土をひと言でいうとどのようなイメージですか。
業界でも最大手の企業となると、やはり気になる質問です。自分の理想としている企業のイメージと合っているかをしっかり確認しましょう。
- 東レでは基本的に1つの素材を担当すると聞きましたが、その担当する素材は変更になったりしますか。(頻度や自分の希望が叶うのか)
いろいろなことに挑戦したい、成長したいという夢を持って入社される方は多いはずです。一つの素材を徹底的に学び、向き合うことで会社に貢献をしていくという東レの方針の中でも、社内のジョブローテーションの制度が整っているかは気になるところです。意欲ある学生が入社後にガッカリしないよう、いろいろチャレンジができる環境なのかは確認しておきましょう。
- 東レで20代前半までに海外の顧客と接点を持てるような仕事をするためには、どの部署を希望するべきですか。
東レでは海外でも展開している素材が多くあり、今後もグローバル化が進むのは明確だからこそ、海外で活躍したいというキャリアプランを持っている方は聞いてみるべき質問です。海外を見据えて仕事に取り組もうとしている姿勢もアピールできることになります。
企業研究に役立つ質問
- 東レで実際に働いてみて感じる業界の課題と将来性はどのようにお考えですか。
繊維業界自体が生き残りをかけてグローバル化を進めている中で、実際に社内にいる社員からみた業界の課題・将来性は気になる方も多いと思います。 東レでも5つある事業で着々と新商品の開拓や新しい試みをしていることはネットでも確認できますが、入社して2~3年程度のフレッシュな社員の視点での感想を聞き、面接に向けての準備に役立てましょう。
- 人材育成に力を入れている御社では海外研修にもチャレンジできる制度が整っていると聞いていますが、どの程度の語学力を必要とされていますか。
海外で活躍するためのステップとして海外研修を目標とする方もいるのではないでしょうか。その場合には必ず語学力は必要になってくると思います。研修にチャレンジする段階での語学力のレベルはチェックしておくことで、内定の為の語学対策に活かすことができます。
就活の進め方に役立つ質問
- 繊維業界には多くの企業がありますが、東レを選んだ理由はなんですか。
実際にその企業に就職している方の志望動機は適切だと人事担当が判断したケースが多いので、この質問をすることで自分自身の志望動機の参考として考えてみてください。もしかしたら企業研究ではみつけられなかった東レの魅力を発見できるかもしれません。
- 御社を希望している場合に、繊維業界の中でここをよく研究しておいた方がよいといったアドバイスを頂けますか。
働いている方ならネットで知ることができる業界の動向以上に、日々研究をしているはずです。現状を知っている方たちだからこそ、実際に仕事を始めるにあたって必要な知識も細かく理解されています。具体的な話を聞くことで、自分の今やるべきことも分かります。
会社の理念に共感する学生が活躍できる
東レは、若くから大きな仕事に挑戦できる、自由闊達な企業文化を伝統とする会社です。これからも進化・発展を続けていくために、社員一人ひとりが新しい東レを創出する気概を持ってイノベーションに挑戦していく必要があります。
「素材で世の中を変えたい」そして「世界を舞台に活躍したい」という気持ちを持ち、会社の理念に共感できる学生なら活躍できる場は十分用意されています。
会社説明会や座談会では、企業のよい面にスポットライトが当たりがちですが、OB訪問では実際の会社のよい面はもちろん、悪い面も知ることができます。入社してからギャップを感じてしまうリスクを事前に防ぐことができる最短の方法なのです。
せっかくのOB訪問のチャンスを存分に活かし、具体的なイメージを持ってこれからの就職活動に挑むことが大切です。