メリルリンチ日本証券は投資銀行
メリルリンチ日本証券は、アメリカのバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの100%出資です。名前こそ「証券」とありますが、日本の証券会社のように「個人」の顧客ではなく「法人」、「機関投資家」を顧客としてさまざまな金融サービスを提供しています。
昨今の投資銀行業界では、債権・株券での収益が見込めず、さらに取引の透明化が求められそれによるITシステムへの投資が重なり、どこも以前のような収益を上げられずにいます。
その中でメリルリンチ日本証券は、特に「リサーチ」に関しては優秀であることが業界でも認められており、そこからつながる事業を展開して収益を上げ、より高いレベルのサービスに活かされています。
そんな外資系投資銀行「メリルリンチ日本証券」のOB/OG訪問に備えて、必要な事業内容を確認して理解を深め、貴重なインタビューの機会を有意義なものにする方法を考えてみましょう。
企業概要
1972年にメリルリンチが日本で証券業免許を取得して本格的に営業を開始したのがメリルリンチ日本証券の前身「メリルリンチ証券・東京支店」です。
その頃から個人向けの「リテール」取引はほとんどなく、法人向けの「ホールセール」専業でした。その後、山一証券の営業基盤を引き継いだものの、2006年にリテール部門を営業譲渡し、現在のようなホールセール専業の証券会社となりました。
事業内容
メリルリンチ日本証券は、ホールセール専業のため他の証券会社とは業務内容が異なります。グループの主業務である「投資銀行」としての業務が多く、他の投資銀行より少数精鋭での遂行でも有名です。
投資銀行業務・資本市場業務
メリルリンチのインベストメント・バンカーは、まず第一に顧客のニーズを的確に把握してその資本調達戦略の立案・執行をサポートし、また業界ごとの専門知識に基づき企業の合併・買収などについて戦略的なアドバイザリーサービスを提供しています。
主な業務は、国内外における資本調達、発行体と投資家双方の顧客の要求を満たす最も好ましい市場の選定、デリバティブ・転換証券といった革新的な金融手法や負債の管理による資本の増強、ここの顧客のニーズに対応した高度なリスク管理手法の提供、企業の合併や買収・分割その他の選択肢に関する戦略的アドバイスや、そのために必要な資金の調達です。
メリルリンチの場合は各分野に関するアナリストが詳細な分析とナレッジをもとにリサーチ業務を行なっておりそのリサーチをベースに各サービスが提供されています。
金融市場業務
メリルリンチ日本証券では卓越したセールスとトレーディングの力を結集し、顧客が投資効率を向上させベンチマークを凌駕できるようサポートします。以下のいずれの商品分野においても、流動性・業界最高水準の洞察や分析、競争力ある価格、付加価値を提供しています。
「債権・通貨・コモディティ業務」で取り扱うのは、金利・クレジット・資産担保証券・負債管理・通貨・コモディティ・デリバティブなどの商品で、幅広いリスク管理手法も提案しています。
「株式市場業務」では多様な株式や株式関連商品のセールスやトレーディングを行なっていますが、それには現物株式のほか先物・オプション・転換証券・さらには高度なポートフォリオ分析や電子取引なども含まれます。
また海外の関連会社を通じ、個別取引やポートフォリオの資金手当て・株式の賃借・清算・決済・報告・保管といったサービスを提供しています。
リサーチ業務
メリルリンチ日本証券のリサーチ部門の評価は世界トップクラスです。それは、世界のアナリストが注目する機関投資家のための専門誌「インスティテューショナル・インベスター」のランキングで2011年が1位、2012年・2013年が2位となっていることからもその優秀さがわかります。
アナリストの資質、世界中に張り巡らされた情報網と情報源の豊富さ、ビジネスについての徹底した理解がこの評価を支えています。クライアントが適切な投資判断できるようにするために十分な情報を提供し、そのために各アナリストも専門性を磨くべく普段から情報収集やスキルアップに励んでいます。
株式・債権・金利・グローバルな新興市場債権など高度に専門的なナレッジを持つ約700名のアナリストが、約3,400銘柄の株式と約1,200の債権発光体に関して詳細に分析し、63カ国の経済予測と36コモディティ・51通貨を調査しています。
過去3年間の売上/利益推移
これからはメリルリンチの、過去3年間の売上と利益推移をみていきます。データは下記のサイトを参照しましたが、営業利益率は計算した後で、端数を切り捨てしています。
(単位/億) | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 |
売上 | 393 | 499 | 501 |
営業利益 | -7 | 4 | -3 |
当期利益 | -20 | -27 | -21 |
営業利益率 | -5% | -5% | -4% |
次年度の戦略
投資銀行の将来は、明るいとメリルリンチ日本証券はみています。しかし、短期的には厳しい状況が続くため予断を許さないでしょう。そのためには確立している現在の各事業を基盤に着実に収益を重ね、よりコストに目を配ることで対応できると考えています。
2018年のメリルリンチ日本証券に関するトピックス
メリルリンチ日本証券は投資銀行である以上、Webサイトに掲載されるトピックスのほとんどは、企業の格付けやどの政策が業界にどのように影響するかといった予測です。めずらしいそれ以外のトピックスをいくつか見てみましょう。
福利厚生や年収
現在メリルリンチ日本証券に勤務している企画営業の20代男性は「同世代の他の人よりはかなり多額の報酬だと思う。上司の年収を聞いてもやはり一般的に誰もが羨むレベルである。成果を出すほど報酬は増え、年次はあまり関係なくなってくるので、そういった環境がよいという人なら報酬面で不満はないと思う。」といいます。
仕事の達成=社会への貢献と考えれば、成果を出すほど仕事ができる、報酬が増えるということになるでしょう。つまり「成果を出せるようになるか、実際にどれくらい出せるか」が非常に客観的に計られる社風であり、それを奨励し成長する人材がより多くを手に入れるようです。
また、他の20代男性正社員は「中途入社の管理職にはキャリアパスが金融出身でない人もいます。女性の管理職も大勢いますし、キャリア形成は自分次第でどうにでもなる社風であり、バリバリ仕事をやっていきたいという人には最適な場所ではないかと思います。」と、やはり成果によってキャリアや報酬が得られるという見解は一致しています。
総じて日本企業に比べ、目にみえる成果を求められる、またその成果を出せるような人材になることが求められているようです。そのためにどれくらい時間と手間をかけ、自分を高めていけるかが重要です。
メリルリンチ日本証券の強さは「多彩な個性の連携」にある
メリルリンチ日本証券の投資銀行部門・投資銀行部でに勤務する高木里沙さんは、2016年入社ながら今はM&Aや資金調達等をお客様に提案する仕事を担当しています。
さまざまな調達方法の中で特に実際の資金集めでは、ただ出資を募るだけでなく企業の成長性を論理的に説明し、ビジネスの内容に賛同いただいて初めて出資に結びつくため、非常にやりがいを感じるといいます。
またクレジット営業部の秋葉愛子さんは2014年卒。入社以来機関投資家向けのセールスを担当し、現在は債券によるソリューション提供を行う部門に所属しています。
機関投資家に対して投資判断の材料となるようなマーケット情報の提供や新しい商品、株式や債券・社債・デリバティブなど多岐にわたる金融商品を取り扱っています。
債券市場はマクロ経済に左右されるため、日本にいながらも世界の政治事情の変化を意識して仕事をしなくてはなりません。その「ダイナミズム」が魅力だといいます。
秋葉さんはこれまでに3段階の成長があったと考えています。1つめは「何ができて何ができないかをはっきりさせる」、2つめは「社会人基礎力、再建の営業基礎力への知識を固める」、3つめが「自分にしかできなことを探す」というそれぞれの段階ごとに、先輩への質問や相談を通して得た、国内の他部門や研修で訪れたロンドンやニューヨークオフィスとのネットワークを活かせるようになったそうです。
投資銀行では部門が違えば何もかも違うといいます。それは多彩な個性が存在するということ。この個性がネットワークを通じて連携すれば、より多くの知見を得ることができます。
投資銀行は「個人プレー業界」というのはただの先入観であり、メリルリンチ日本証券の強さは部門を超えた個性・専門性の連携の強固さであるといえます。
投資銀行業界の動向
もともと投資銀行が生まれたのはアメリカです。そのため投資銀行業界はアメリカの大手都市銀行が牽引しており、日本をはじめ多くの支店を持ちたくさんの顧客を相手にしていますが、トレーディングにおける収入は合計すると少しずつ減少しています。
投資銀行業界の業績推移
世界最大手投資銀行12行の投資銀行業務とトレーディング収入を見ると、2009年が2,200億ドルだったことに対して2017年では1,500億ドルにまで減少しています。これは特に「債券」による収入の減少によるもので、2011年におよそ現在の750億ドルにまで落ち込み現在に至るまでほぼ横ばいです。
しかし、このような状況でもバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチを含むアメリカの投資銀行は堅調に推移しています。ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレー、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチはいわば「勝ち組」、収益を圧迫しているのはヨーロッパの投資銀行です。
バークレイズやクレディ・スイス、ドイツ銀行などの準最大手行は、その事業構造からも今後厳しい状況が予想されています。
カギになるのはIT投資をまかなえる別事業の存在
ヨーロッパで導入された「金融商品市場命令(MiFID)」は透明性の向上を促し、そのため取引の電子化が進み広く入手可能な価格データが増え、投資銀行の収益が圧迫されています。以前は価格情報そのものが投資銀行のいわば「商品」であり、それまで顧客はそれらを高いトレーディング手数料を支払うことで得ることができたためです。
また情報の巨大化により必要なIT技術はより高度となり多額の設備投資が必要になりました。アメリカ大手投資銀行はそれを賄うだけの事業を持っていますが、ヨーロッパの投資銀行にはありません。それに加え住宅市場の不振、より低い即応能力がさらに拍車をかけています。
そう考えると投資銀行もITも、世界のトップを担う企業はアメリカにあります。今後も投資銀行業界はアメリカ大手に牽引され、より「勝ち組・負け組」の構図ははっきりしてくるでしょう。「勝ち組」にはバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ系のメリルリンチ日本証券も含まれています。
世界規模でのニーズは高まり、さらに新規事業を手がけることになれば、その成長には大いに期待できます。メリルリンチ日本証券で仕事をするということは、そんな「世界で通用する仕事」をするチャンスがあるということです。
メリルリンチ日本証券へOB訪問に行く前に準備すべき3つの項目
外資系投資銀行であるメリルリンチ日本証券のOB/OGを訪問しインタビューすることは、単なる情報集めというより「内定獲得」の方法の一つと考えられます。インタビューで戸惑うことのないよう、事前にしっかり準備しましょう。
投資銀行業界でのキャリアを具体的に想定する
世の中にいわゆる「仕事」はたくさんあります。ただ収入や待遇が違うだけです。そんな無数にある「仕事」を選ぶときに大切なのは、より優先するべきものは何かをわきまえることです。
投資銀行、とりわけ外資系の大手投資銀行勤務の経験はそれだけでも大いに役立つキャリアですが、成果によってはより難易度の高い・責任の重い仕事にチャレンジすることができます。
それを達成すればさらに難しい仕事があり、そうしているだけで一つのキャリアができ上がっていきます。メリルリンチ日本証券での経験を活かして、スタートアップに携わったり他業種のトップに就く人もたくさんいますが、それはそうして学ぶことがそれだけキャリア形成に有効だということです。
もしメリルリンチ日本証券に入社したら、どんな仕事をしたい、それを使ってどんなキャリアを積んで社会に貢献したいのかをよく考えてみましょう。
今の自分の力を、得意・不得意、将来の夢とそれに必要な能力などを客観的に分析し、自分なりに将来のキャリアを具体的に考えれば、自ずとメリルリンチ日本証券でどんな仕事ができるか、またしたいかがわかってくるでしょう。それがわかれば、OB/OG訪問でのインタビューでも焦点を絞り、的を射た質問ができるはずです。
事前にチェックできるインタビューをチェックする
今はネットで実にたくさんの記事を読むことができます。Web版日本経済新聞や転職・就職サイトの特集記事では、メリルリンチ日本証券で実際に働く社員がテーマに沿ってさまざまなことを教えてくれます。
公式Webサイトの「採用情報」からは部門ごとにアナリスト・アソシエイトからヴァイスプレジデントに至るまでさまざまな仕事に携わる先輩方のナマの声を聞くことができます。それらの内容からさらに企業としてのメリルリンチ日本証券の理解を深めることができるでしょう。
また、メリルリンチ日本証券に在籍した経験のある人が、社外で活躍するのも珍しくありません。検索サイトから「メリルリンチ日本証券」と検索するだけでも「メリルリンチ日本証券アナリストを経て・・・」といった文面がヒットするはずです。
その数に驚くかもしれませんが、それがメリルリンチ日本証券の「人材の層の厚さ」といえます。メリルリンチ日本証券で経験を積むとこんな考え方ができるようになるのか、など新たな気づきが得られるかもしれません。
チェックするときにはその「経歴」にも注目しましょう。その先輩は、その経歴があってこそ素晴らしいコメントを残せたのです。また、そのキャリアを自分に当てはめて想像してもよいでしょう。その際に不明な点があれば、必ずOB/OG訪問時のインタビューでは尋ねましょう。
OB/OGへの質問を準備しよう
いくらOB/OGが可愛い後輩に会うとはいえ、外資系投資銀行社員という忙しい身です。貴重な機会なのですから、お互いに少しでも有意義な時間にしたいものです。そのために準備できること、あらかじめ考えておくべきこと、できれば実際に質問したい内容を準備しましょう。
もちろんインタビューを経て変わることもあるでしょう。事態や状況・情報の移り変わりによって柔軟に変える、これも社会人となるための大切なポイントです。
少数精鋭のメリットとデメリットは?
他の大手投資銀行と比べ、メリルリンチ日本証券は社員数が少ないことで有名です。その分、少数精鋭となるためこなさなくてはならない一人当たりの業務は比較的多いと想像できます。
- 毎日多くの仕事を、どのようにしてこなしていますか。
メリルリンチ日本証券では、他の外資系企業と同様「成果を出せば正しく評価」されます。そのためには時間をかけて勉強することも、貴重な経験をするためのチャンスを得ることも必要です。
しかし、1日には24時間しかありません。どんなことにどれくらいの時間をかけているのか、実際のところを知っておきたいものです。具体的に1日の大まかなスケジュールを知ることは、その忙しさを具体的に感じやすくします。
また、それによって得られるメリットがありますが、それは具体的にどのようなことなのでしょうか。
- 少数精鋭だといわれますが、それによって得られるメリットはどのようなことでしょうか。
事前に突き詰めて検討し、より具体的に「望むキャリアにどのように活きますか」としてもよいでしょう。得られる経験が多いのは大歓迎です。しかし、大量の経験を先輩方はどのように身につけていくものなのか、気になるところです。
利用できる「仕組み・ルール」を知ろう
メリルリンチ日本証券ほどの企業になると、企業にとって本当に必要なのは「優秀な人材」であることはもはや常識です。優良な企業ほどそんな優秀な人材が働きやすい環境を整備するためのさまざまな「仕組み」を用意しているものです。
例えば、キャリアアップのための留学や新たな資格取得のためのプログラムや、女性なら妊娠・出産の際の育児休暇とその後の復帰プログラムなど、その優秀さを如何なく発揮するためのサポートがあります。それは、自分のキャリア形成にも大いに役立ちます。
メリルリンチ日本証券の一員でいることは、そんな恩恵も受けることができるということ。そうして得た力が自分のキャリアに役立ち、同時にメリルリンチ日本証券の顧客の利益になります。そのため、OB/OGにはこんな質問をしてみてはどうでしょう。
- 投資銀行部門を希望していますが、その後他の部門を経験することはできますか。
それによって、希望がどの程度聞き入れられるのか、自分の思惑が現実的なのかどうか、またそのための具体的な「やるべきこと」がわかるでしょう。また、先輩方にその経験があるならぜひ尋ねておきましょう。それを現実的に自分に活かすことができるかもしれません。
成果に応じた報酬や待遇が得られる環境を求めるならメリルリンチ日本証券がおすすめ
投資銀行は日本にもありますが、多くがリテール取引の多い証券業が大半であるため、いわゆる「投資銀行業務」をはじめとする金融の経験は比較的限られるかもしれません。しかしメリルリンチ日本証券なら、投資銀行発祥の地アメリカの大手金融機関「バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ」系の外資系です。
外資系企業では、多くが成果を求められます。成果を出せばそれだけの報酬や待遇が得られ、さらに高いキャリアへの道が開かれます。もしバリバリ仕事をしてキャリアを積みたいなら、これほど恵まれた環境はありません。
また、メリルリンチ日本証券は他のアメリカ系投資銀行に比べ社員数が少なく、仕事あたりに得られる経験や知識の量が自ずと多くなります。それこそ性別や学歴に関係なく、成果を上げることができれば正しく評価されるのです。そのためには大変な努力が必要ですが、その環境が整備されていますから努力の甲斐があります。
収入と具体的な勤務実態、それによって得られる経験・知識とそれを活かしたキャリア形成。どれが欠けても現実的ではありません。望むキャリアを想定し、それから知りたい仕事のことを尋ねるチャンスです。このOB/OG訪問をしっかり活用し、将来に役立てましょう。