金融業界の現状と動向
金融業界とは
金融業界と聞いて、まず思い浮かぶのは銀行ではないでしょうか。しかし、金融業界には銀行以外にも様々な領域が含まれます。
「金融」とは本来、「金」を「融資」することからそう呼ばれていましたが、
現代ではその取引が複雑になっており、様々な形でお金の流れが生まれるようになってきました。
そのため、金融業界には証券や保険、物を貸出するリースまで含まれます。
金融業界の市場規模
金融業界は、日本経済の中心的な役割を担い続けています。
銀行、証券、保険、資産運用といった分野を含めた金融市場は、規模が非常に大きく、多様なサービスを提供しています。近年は、低金利環境や少子高齢化、デジタル化の進展により、従来型のビジネスモデルに変革が求められています。
特に、フィンテック企業の台頭や異業種からの参入が活発になっており、金融サービスの形も多様化しています。今後もデジタルシフトがさらに加速し、新たなビジネスモデルの構築が進むことが予想されます。
このように、金融業界は変革の最前線に立つ魅力的なフィールドです。就職活動中の学生にとって、多様なキャリアパスと社会的意義を持つ業界として注目されています。
金融業界の動向
現在の金融業界は、急速なデジタル化と新たな社会的要請に対応するため、大きな変革の時期を迎えています。
特に注目されるのが、フィンテック(FinTech)の進展です。AIやブロックチェーンなどの先端技術が、決済や融資、資産運用といった分野で活用され、金融サービスの形態を大きく変えつつあります。これにより、従来の金融機関もビジネスモデルの再構築を迫られています 。
また、サステナビリティへの対応も重要な課題です。ESG投資や気候変動リスクへの対応が求められ、金融機関は環境・社会・ガバナンスに配慮した経営方針を強化しています。これに伴い、関連するリスク分析や情報開示の重要性が増しています 。
さらに、金融庁は「資産運用立国」を掲げ、個人の資産形成を支援する政策を推進しています。これにより、金融機関は顧客本位のサービス提供や、資産運用の高度化を進める必要があります 。
このように、金融業界はテクノロジーの進展と社会的要請の変化に対応しながら、新たな価値創造を目指しています。就職活動中の学生にとって、これらの動向を理解し、自身のキャリアプランに活かすことが重要です。
金融業界の代表的な領域
金融業界は、銀行、証券、損害保険、ローン・消費者金融、クレジットカード、リース、その他金融業界に分割することができます。
その中でも主要な、銀行、証券、損害保険、リースについて説明していきます。
銀行
銀行は、預金という形でお金を集め、それを融資することで利子を得るという仕組みで成り立っています。
銀行業界は、さらに以下のように大別することができます。
・メガバンク(都市銀行):全国で大規模展開し、極めて大きい預金・貸出金のやり取りを行う
・地方銀行(地銀):特定の地域を中心に営業活動を行う
・信託銀行(信託):現金だけでなく、顧客の株式や不動産の管理なども行う
・信用金庫(信金)/信用組合:特定の地域・業種を営業範囲とし、出資者である会員・組合員から預金を集め、相互扶助の理念のもと中小・零細企業や個人に融資する
<<企業紹介>>
証券
証券会社は、顧客の株式売買を仲介することで手数料収入を得るという仕組みで、収益を生み出しています。
個人向け、法人向けでそれぞれサービスを展開しており、個人顧客向けには幅広い証券商品を案内するなどの動きが活発になってきています。
一方、法人向けには、企業の株式や債券を引き受けることによる資金調達支援や、M&A(企業の買収・合併)への助言・仲介といった「投資銀行業務」も行っています。
<<代表的企業紹介>>
保険
保険とは、将来起こるかもしれない危険に対し、保険料を加入者が公平に負担しあい、万一の事故の備える相互扶助の精神から生まれた助け居合の制度です。
保険会社には、大別して生命保険と損害保険があり、生命保険は「人々の生存、または死亡による損失に対する保険」を提供しており、
損害保険は、自動車保険や火災保険、地震保険といった「モノに関する損失に対する保険」を提供しています。
そのほかに、医療保険やがん保険などもあります。
<<代表的企業>>
リース
リースとは、わかりやすく言うと、レンタル事業のことです。顧客が要求する物的財産を購入し、それを期限付きで貸し付けることで利益をあげています。
扱う商材は航空機、医療機器、工作機器、パソコン、楽器、太陽光パネル、船舶、店舗設備など、多岐に渡ります。
そのリース取引をメインとして事業を行っている企業をリース会社と言います。
<<代表的企業>>
クレジットカード
クレジットカード業界は、消費者と加盟店の間で「キャッシュレス決済」を仲介するビジネスモデルです。カード会社は、カード発行を通じて決済インフラを提供し、利用者からの手数料や加盟店からの決済手数料で収益を上げます。
最近では「ポイント還元」や「スマホ決済」との連携を強化し、利便性やセキュリティの向上に力を入れています。また、与信管理やリボ払い・分割払いといった金融サービスも重要な収益源です。
デジタル化の進展とともに、データ活用やアプリサービスの強化を進める企業も増えており、若手人材にも多くの活躍機会があるでしょう。
<<代表的企業>>
・三井住友カード株式会社(SMBCグループ)
・株式会社JCB(日本発の国際ブランド)
・楽天カード株式会社(ネット系カードで急成長)
・株式会社クレディセゾン(セゾンカード)
・イオンフィナンシャルサービス株式会社(流通系)
政府系金融機関
政府系金融機関は、民間金融機関では十分に対応できない分野や政策的な目的を担う公的な金融機関です。主に中小企業支援、インフラ投資、住宅金融、国際協力、農林漁業支援などを目的に融資や保証、投資を行います。
営利よりも公共性・政策性を重視しており、景気変動時や災害発生時の資金供給などでも重要な役割を果たします。また、地域経済の活性化や日本企業の海外展開支援など、広範な分野で日本経済の基盤を支えています。
公務員的な安定性と社会貢献性をあわせ持ち、公共性の高いキャリアを志向する就活生に人気があります。
<<代表的企業>>
・日本政策金融公庫(中小企業や創業支援に強み)
・日本政策投資銀行(大型インフラ・産業支援)
・国際協力銀行(海外インフラ・国際展開支援)
・商工組合中央金庫(中小・組合系企業支援)
・住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)
アセットマネジメント
アセットマネジメント(資産運用)とは、個人投資家や法人、年金基金などから預かった資金を、株式・債券・不動産・投資信託など様々な資産に投資し、運用するビジネス領域です。
運用成果に応じた報酬を得るモデルで、長期的なリターンとリスク管理が重要視されます。近年では、ESG投資やサステナブルファイナンスへの関心も高まっており、社会課題と向き合いながら資産を増やすスタイルが広がっています。
グローバルな視点でマーケットを分析し、高度な金融知識と責任感が求められるため、経済への興味関心が強い学生に向いている分野です。
<<代表的企業>>
・野村アセットマネジメント株式会社(国内最大手クラス)
・大和アセットマネジメント株式会社(バランス型運用に強み)
・アセットマネジメントOne株式会社(みずほ系、総合運用力)
・ブラックロック・ジャパン株式会社(世界最大級の運用会社)
・日興アセットマネジメント株式会社(グローバル展開を強化)
ベンチャーキャピタル
ベンチャーキャピタル(VC)とは、成長が期待できるスタートアップ企業に対して出資を行い、その企業が上場(IPO)や売却(M&A)することで投資利益を得るビジネスモデルです。銀行などの融資と異なり、ハイリスク・ハイリターンな投資が特徴です。
出資だけでなく、経営支援や成長戦略のサポートも行うため、金融知識だけでなく事業開発やマーケティングに対する理解も求められます。近年では、テクノロジー系スタートアップや環境・社会課題に取り組む企業への投資も活発化しており、ダイナミックな成長を目指す学生にとって非常に刺激的なフィールドです。
<<代表的企業>>
・ジャフコ グループ株式会社(日本最大手クラスの独立系VC)
・SBIインベストメント株式会社(SBIグループのVC部門)
・グロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社(成長支援型投資に強み)
・インキュベイトファンド株式会社(アーリーステージ特化型)
・WiL(World Innovation Lab、日米をまたぐグローバルVC)
金融業界で働く魅力
金融業界は、専門性の高い知識を身につけられるだけでなく、社会や経済を支える実感を得られる点が大きな魅力です。
銀行や証券、保険など多様な業態があり、法人営業やリスク管理、資産運用など職種も幅広く、自分の適性に合ったキャリアを築くことができます。また、社会貢献性の高い業務やグローバルな活躍の場も多く、成長意欲の高い学生にとってやりがいの大きい業界でしょう。
安定性や福利厚生の充実度も就職先としての魅力を高めています。
金融業界で求められる能力
ここまで金融業界の概要を紹介してきました。
では、就活生が金融業界で求められる能力とはどのようなものなのでしょうか?
金融業界は、就職活動では大量採用が特徴ですが、大量採用とはいえ求められる人材のレベルは高いです。
求められる能力として、3つの能力が挙げられます。
①コミュニケーション能力
多くの仕事で対人のやり取りが必要となります。顧客の悩みを解決するためには、円滑なコミュニケーションを取れる能力が必要です。
顧客が本当に困っていることや、隠れた潜在ニーズを引き出すには、的確な質問や相手の考えを引き出すような会話力が必要です。
また、領域の性質上、まじめで礼儀作法のしっかりした人柄が好まれる傾向があります。
②正確性
金融業界の仕事は、その事業の性質上、一つのミスが特に大きな過失につながりやすいといえるでしょう。
そのため、大雑把な性格よりは、着実に正確な仕事ができる人材が好まれる傾向があります。
逆に言うと、緻密な作業が苦手な人は向いていないかもしれません。
③信頼関係構築力
顧客にお金に関する悩みや困りごと、企業であれば経営の内情を話してもらうためには、顧客と信頼関係を築くことが大切です。
顧客を第一に考えて行動できる誠実な人柄であることが求められます。
この他にも、フィンテックの台頭など変化の激しい業界だからこそ、
新卒の人材には変化に柔軟であったり、情報感度を高く持って自分の頭で物事を考えて行動できるというような素質が求められています。
金融業界を目指すための選考対策
金融業界は専門性や信頼性が重視される業界であり、就職活動でも高い準備力が求められます。業界研究や自己分析に加え、企業ごとの特徴に応じた対策が必要です。
金融業界を目指すための選考対策についてみていきましょう。
まずは選考フローをチェック
金融業界を目指す上で、まず重要なのが各社の選考フローとスケジュールを把握することです。
多くの金融機関では、夏・秋に実施されるインターンシップが本選考の前哨戦となるケースが多く、インターン参加者に対して早期選考ルートが案内されることもあります。特に大手銀行や証券会社はエントリー開始時期が早く、3月の広報解禁と同時にES(エントリーシート)や適性検査の提出が始まります。企業によっては2月中に面談が始まることもあるため、スケジュールを見落とさないよう注意が必要です。
まずは志望企業の採用ページや各種就活サイトなどで選考スケジュールを確認し、逆算して準備を進めましょう。
自分に合った採用コースを見極める
金融業界では、職種やキャリア志向に応じて複数の採用コースが用意されているのが一般的です。代表的なものとして「総合職」「エリア総合職(地域限定職)」「専門職」などがあり、それぞれ求められるスキルや配属先、キャリアパスに大きな違いがあります。
「総合職」は、全国転勤や海外勤務を含む広範な業務を担う幹部候補としての採用であり、経営層を目指す長期的なキャリアが想定されます。一方で「エリア総合職」は勤務地が限定される代わりに、転勤が少なく地域に根ざした働き方が可能です。また、「専門職」ではIT、マーケティング、リスク管理、資産運用など、特定分野の知識やスキルが重視されます。
企業によってはコース間の異動が可能な場合もありますが、基本的には入社後のキャリアの方向性を大きく左右します。志望動機やライフスタイル、働き方への希望と照らし合わせながら、自分に合った採用コースを見極めましょう。
エントリーシート・面接でのポイント
金融業界の選考では、「信頼感」や「論理的思考力」、「誠実さ」といった人物面が重視されます。
エントリーシートでは、これまでの経験を通じて得た責任感や粘り強さ、チームでの協働姿勢などを、具体的なエピソードでわかりやすく伝えることが重要です。また、「なぜ金融業界なのか」「なぜこの企業なのか」という志望動機には、業界研究・企業研究を通じた納得感のある回答が求められます。
面接では、落ち着いた受け答えや礼儀正しさも評価対象になるため、事前に模擬練習をしておくと安心です。堅実で信頼を感じさせる自己表現を心がけましょう。
金融業界への就活に役立つ資格
金融系企業で仕事をするにあたり持っていると役に立つ資格を紹介します。
ファイナンシャルプランナー
ライフプランニングを行うことができる資格です。
個人だけではなく、家庭向けに資産などの情報を元にしてどのくらいのお金が必要となってくるのか、ということも相談に応じます。
ファイナンシャルプランナーは金融業界で仕事をしている人がもっとも目指す資格でもあります。
宅地建物取引主任者
金融機関というよりも、不動産業で需要の高い資格ではありますが、不動産信託に関わってくる業務を行う場合には、取得をしておくと良いです。
投資会社への勤務を希望している場合、専門的な知識が必要となってくるので、宅地建物取引主任者の資格があるとスムーズな契約を行うことができます。
銀行業務検定試験
金融業界全般の仕事に関わる知識が求められる資格です。業務別に20系統35種目に分かれています。
銀行での勤務を希望する人であれば、取得をしておいたほうが良い資格です。
難易度はファイナンシャルプランナーよりも低く、誰でも受験をすることができる資格です。
証券アナリスト
証券取引のスペシャリストの認定が証券アナリストです。近年、将来への不安から株式や債権などに投資をする人が増加しており、高い需要があります。
そういった人に対して、相談にのることができます。
民間の資格の中ではかなりレベルが高いので、合格率も低いです。しかし難関だからこそ、取得をしていれば就職の際にはアピールになります。
中小企業診断士
財務、会計、法務、IT、経営理論などの幅広い知識が必要となる資格であり、金融業界では推奨資格になっていることが多いです。
企業のコンサルティングを行うことができますが、融資を行う場合にはその企業の業績などをチェックする必要があるので、
融資関連の仕事を希望する場合には、様々な視点から融資を行う企業を見ることができるので、取得をしておくと良い資格でもあります。
本で金融業界の情報を集めるなら
本で金融業界の情報を集める際に、おすすめの本を紹介します。
・金融業界大研究 (著者:齋藤 裕)
・先輩に聞いてみよう! 金融業界の仕事図鑑 (著者:加藤孝治,小林博之,西村優里)
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