#私の就活 では就活を終えた先輩たちが自分の就活を振り返った体験記をお届けします。第一回は外資メーカー内定者です。
“就活”なるものが始まっているらしい
梅雨が近づき、少しずつジメジメし始めた5月の中頃でした。何かの折に何気なく(情報感度の高い)友達とご飯を食べており、そこで彼が“就職活動”に力を入れ始めたことを知りました。「絶対やった方がいいよ、早く始めて損はないよ」という彼の言葉になんとなく疑問を感じたのを覚えています。とはいえ暇だし、まぁいっか。大学院生として研究生活にも慣れ始め、少しずつ手持無沙汰になってきていたので半ば彼の言葉に流される形で就職活動を開始しました。メールやチラシなどで存在を確認していた数ある就活イベントのうち、予定の合うものを一つ選んでとりあえず参加してみることにしました。
―外資系の企業やベンチャー企業への就活はこのタイミングで始まるらしい。
―多くの企業で夏のインターンが採用に直結するらしい。
―とりあえずみんなコンサルと投資銀行を受けるらしい。
受け売りの情報をいくつか手にし、私の就職活動は始まりました。
とりあえず戦コン -就活とは情報戦であるー
「研究やバイトも忙しいから全部に手を出すのは大変そうだな。知識が皆無の金融業界には抵抗あるな。企業を外からサポートする職業だといろいろ学べてセカンドキャリアの裾野が広そうだな。なによりなんとなくかっこよさそうだな。」などの適当な理由から、コンサル・外銀・ベンチャーと大きく3つに分けた選択肢の中からとりあえずコンサル、中でも戦略コンサル、いわゆる戦コンを中心に応募してみることに決めました。具体的には、マッキンゼー、BCG、ベイン、ATカーニー、ローランドベルガー、Strategy&、ADLの大手戦コン7社を中心にエントリーしました。あくまで研究やバイトに優先を置いていたので、特別に対策するわけでもなく、なんとなく「社会経験になるかな」くらいの気持ちで挑むことにしました。とはいえ、理系院生のバックグラウンドや学部時代の部活動でのリーダーシップ経験がなんとなく選考に有利そうだと感じていたのは事実で、「どこか1社ぐらいのインターンは行けるでしょ」と高を括っていました。
実際に選考が始まると案外ESはすんなり通ることを知ります。真偽は不明ですが、学歴フィルターとしての役割のみで内容は見られていない、なんていう話もありました。企業によって選考フローは異なりますが、多くの場合その次のステップはwebテストや筆記試験です。私にとってここが最初の難関でした。処理能力やひらめきには多少の自信をもっていた私ですが、出題される問題が意外と解けない。しかも合格のボーダーがやたらと高い(らしい)。なんとこの時点で半分程度の戦コンは落選しました。
次に待ち受ける選考ステップは、グループディスカッション、いわゆるGDでした。人と話し合うことや意見をまとめることに関してはより一層の自信を持っていた私は、ここがアピールポイントだと言わんばかりに意気揚々とGDに挑みました。GD後の手応えもWebテストの時とは段違いで、「これは絶対に通っているでしょ」と自信を持っていました。しかし手元に続々と届いたのは、企業からの不合格を知らせるメールばかりでした。不合格の理由やフィードバックもないため、納得ができないままほとんどの戦コンはここで終わりとなってしまいました。
多くの企業ではWebテストやGDの次のステップ、一部の企業ではESの次のステップとしてケース面接があります。ざっくり説明すると、実際のビジネスケース(に近いもの)にまつわるデータや様々な前提条件を提示され、何か施策を打ちなさい、あなたならどうしますか考えてください、というものです。事前に書店で対策本にさっと目を通し、「あとはなるようにしかならない」と挑んだ私でしたが、このケース面接がかなりまた難しい。制限時間は短いのに、何から考え始めれば良いかすらもわからない(おまけに面接官である現場のコンサルタントはなんだか威圧感がある)。まったくと言っていいほど歯が立たず、この時点ですべての戦コンが不合格となりました。
一切対策をしなかったとはいえ、「俺って思ったよりも能力がないんだな」と落ち込んでいると、例の彼からご飯に誘われました。いつものような何気ない食事のつもりで臨みましたが、ここで私は多くの事実を知ることとなります。まず、webテストや筆記試験には詳細な傾向と対策が存在し、なかには問題の答えじみたものが出回っている場合もあるということ。私が丸腰同然で挑んだテストは、他の多くの人は傾向と対策、場合によっては解答といった強力な武器を所持して挑んでいました。アンフェアな選考の裏側に愕然としたのを今でも覚えています(もちろん、そういった情報がなくても選考に通る人は通るので私のおつむが足りていなかったのは悲しくも紛れもない事実です)。次に知ったことは、GDにはアピールすべきポイントが明確に存在し、それは企業によって異なる場合もあるということ。ただただ自分のやりたいように議論をするのではなく、用意したアピールポイントに沿って戦略的に議論を進めていく必要がありました。そしてなにより、これらの選考にまつわる膨大な情報を共有するコミュニティがあり、そこではケース面接の練習なども盛んにおこなわれているということ。多くの就活生が就活団体や就活ビジネスを展開する企業のサービスを利用し、場合によってはこのコミュニティに所属するための選考があったりするそうです。就活は情報戦なのだ、と痛感しました。就活の現場は情報を持たざる者は真っ先に切り捨てられる戦場なのです。
傾向と対策、それからマッチング
バッサリと不合格をくらい続けた戦コンではありましたが、同時に「何か違うなぁ」という違和感じみたものを感じていたのも事実でした。本当にここにいきたいのかな、本当にやりたいことってこれじゃない。戦略コンサルの選考が落ち着き始めたこの時期から、自分自身を見つめなおすことに取り組み始めました。自分のやりたいことって何なのか、自分の強みや弱みは何なのか、一人でじっくり考えてみたり、先輩や友人に相談してみたり、時には各種就活サービスを利用してみたりして、いわゆる自己分析を深めていきました。(もともと体育会のバックグラウンドを持っていたこともあって)仕事のリアクションとして結果に対して直接責任をもつ事業会社の方が自分の波長に合うのではないか、そう思い始めていました。このタイミングで私の次なる戦場は、既に選考が始まっていた外資ITサービスや外資メーカーへと移っていきました。
戦コンでの失敗から、情報収集とそれをもとにした傾向と対策の分析を愚直に行いました。同時に自分のやりたいと感じていることや自分で強みと感じていることが企業のどんなビジョンとマッチングするのかを確かめていく作業も丁寧に行いました。これらの成果を各フローに落とし込むようにして挑んでいくことで、将来のキャリアを前向きに選んでいくように感じられてすごく楽しかったのを覚えています。それから、これは無意識的にではあるのですが、戦コンの選考を通じて選考プロセスへの慣れのようなものを手に入れていました。論理的な思考の枠組みやGDのセオリーなどを、優秀な就活生と触れ合うことで自然と身に付けていたのだと思います。これらを総合したおかげか、結果として最も自分にマッチしていると感じていた企業の内定直結インターン(某外資メーカー)に参加できることになりました。そこでもこれまでと同様に情報収集並びに傾向と対策の分析を行い、キャリア選択に対する自分のスタンスをしっかりと相手企業に伝える姿勢で挑みました。その結果、なんとインターン選考を通過して内定をいただくことができました。これにて、「就活っていうのが始まっているらしい」と感じてなんとなく始めた私の就活は終わりを迎えました。秋も深まり冬の足音が聞こえ始める季節でした。
だらだらと長くなりましたが、私の就活を振り返って得られる反省をまとめると、
①まずは情報を集めること。
時間の許す範囲でとりあえずいろんな現場に足を運び、目ざとい知り合いに相談して情報を集めることから始めるべきです。就活コミュニティの選抜等もとりあえず受けてみるのがよいと思います。コミュニティに入れば得られる情報の質と量が大幅に変化していきます。情報を持たずに丸腰で挑んでいくことは賢い方法とは言えないでしょう。
②次に自分自身を見つめなおすこと。
自分がどんなことに興味・関心を感じるのか、何をするのが楽しいのか、将来どうなっていたいのかを自分の中で明確にしていくことは、企業とのマッチングの手助けになるだけでなく、納得感を持って就活をすることにつながります。この意味では、最初の段階で様々な業種の企業と接点を持つのは良いことかもしれません。頭で考えるのに加え、肌で感じたものから新しいビジョンが開けるかもしれませんし、選考に慣れておいて損はありません。
これら2点を就活開始のタイミング、できれば春になった時点から意識できると就職活動においてスタートダッシュを決めることができると思います。私の場合は、幸運にも意中の企業に拾ってもらうことができましたが、十分な準備と心構えを早くから用意して進んでいくことがより早くから就活を成功させるコツだと思います。後は、実際にやりながら自分の中でアップデートを重ねていくことができるはずです。長くなりましたが最後まで読んでいただいてありがとうございます。この記事を読んでくださった方の就活がうまくいくことを願いつつ、終わりにさせていただきます。
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