日本の経済を支える日本銀行とは
日本銀行は政府機関や株式会社とは違う認可法人です。また、日本銀行は通常の銀行と異なります。紙幣の発行や政府の銀行、さらに銀行の銀行としての役割を持っています。日本の物価と金融システムを支える機関です。
日本銀行で働きたいと考えるなら、多くのライバルと競争をしなければなりません。そのためには情報を集めることが大切です。OB訪問本番の前に、準備の方法やポイントを押さえましょう。
企業概要
日本銀行は銀行券の発行、通貨や金融の調整を行います。銀行など金融機関の間で行うスムーズな資金決済の確保をしたり、信用と秩序の維持を担っています。
1882年(明治15)に、日本銀行条例に基づいて設立されました。昭和17年2月に、日本銀行法が制定されており、同年5月に改組が行われています。昭和に入ってからも、日本銀行法は何度か部分的な改正が行われました。平成9年6月には独立性と透明性を理念にし、全面改正されています。
事業内容
日本銀行は物価の安定、金融システムの安定という2つの目的を持っています。そのためにさまざまな業務を行います。OB訪問の前に業務内容をしっかりとチェックしておきましょう。
銀行券の発行や流通や管理
日本銀行は発券銀行と呼ばれ、銀行券を発行する機能を持った銀行です。銀行券とは日常生活で使われているお札や硬化などお金のことを指します。日本銀行は独立行政法人国立印刷局が製造した銀行券を製造費用を支払って引き取ります。金融機関は日本銀行の窓口から銀行券を受け取り、通貨として使用されるのです。
銀行券の発行は日本銀行にしかできません。また、安定供給を行うだけでなく、銀行券の枚数の検査や本物か偽物か、再生利用が可能かなどの鑑査業務を行います。このような業務を通して、銀行券の信認を確保しているのです。
決済に関するサービス
決済に関するサービスも行います。決済とは売買での代金の支払いや、経済的な取引によるお金の支払い、証券の受け渡しのことをいいます。そのやりとりをスムーズに行うためのシステムが決済システムです。日本銀行では、日本銀行券と日本銀行当座預金という決済手段を提供しています。
日本銀行当座預金では金融機関同士における賃金取引や証券取引代金の決済などで使われます。日本銀行と金融機関との間で行う貸出や、国庫金の受け払い、国債の発行なども日本銀行当座預金の入金、引き落としで決済が行われているのです。また、資金や国債などの決済を安全に行うためのコンピューターによるネットワークシステムの運営を行っています。
金融政策の運営
日本銀行の目的の1つに、物価の安定があります。物価の安定を行うためには金融政策が必要です。その金融政策を決めて実行することが日本銀行の主な業務の1つとなります。主な金融政策として、オペレーションという公開市場操作があります。
日本銀行が資金の貸付や国債の買い入れをし、金融市場に資金を共有。手形の売出しや保有する国債の買い戻し条件売却などを行い、金融市場から資金を吸収する資金吸収オペレーションなども、金融政策の主な業務としてあげられます。
金融システムの安定化
お金の受払や貸し借りを行う金融システムが、正常に機能するための業務を担当しています。金融システムが不安定では混乱してしまいます。そうならないよう金融機関に対して、業務運営、リスク管理の状況、自己資本の充実度や収益力の調査を行っているのです。
金融システムのリスク分析や評価も、重要な業務の1つとなります。金融機関が破綻した場合、他の金融機関に大きな悪影響を与えることになるからです。その時、資金不足の金融機関に資金を供給して安定化に努めます。
国の事務や対政府取引に関する業務
日本の資金、国庫金の事務などを行います。具体的には、税金、社会保険料の受け入れや年金、公共事業費の支払いについてです。国債の発行や国債元利金の支払い、外国為替市場での為替介入事務なども行うのです。このような業務のため、政府の銀行とも呼ばれています。
国際業務
国際業務では、経済や金融に関する国際会議に参画しています。国際会議では、対話、意見交換、国際金融に関するルールを作ることなどがあげられます。国際金融危機に対応し、経済と金融を安定化させる取り組みなどもあります。
2007年、リーマンショックにおける国際金融危機でも、海外主要中央銀行と一緒に米国連邦準備制度と通貨スワップ協定の締結などの対応を行いました。外為法の届出書や報告書に関する取扱、為替介入の実務など国際金融に関する国の事務も業務の1つです。
調査や研究など
金融経済情勢や金融市場や制度についての調査や分析や基礎研究を行います。適切な政策と業務運営を支えることが目的です。調査結果は四半期に一度の割合で、レポートなどにより公表されます。
金融や経済の問題に関する理論的、実証的に分析する研究などを行います。中長期的に行われる研究も多く、経済や金融に関する、あらゆる領域が含まれています。
他にも、景況感や消費意識や物価動向に関する意識、行動の調査も業務の1つです。アンケート調査を行い、その結果を政策や業務運営の参考にします。
次年度の戦略
日本銀行では、中期経営計画(平成26~30年度)の策定を行っています。
基本情報
-使命達成に向けた組織全体の取り組み
-業務遂行力の向上
-対外コミュニケーションの充実およびネットワーク構築の強化
金融経済情勢の変化を捉えること、金融政策運営を支えるため、金融経済情勢に対し、多様な視点から調査と分析を行うことが掲げられています。金融政策の効果、影響を分析し、スピーディに政策の企画の立案を行います。同時に必要な体制の整備への取り組みを表明しました。
金融システムの安定と機能性を向上すること、決済サービスを高度化し、金融のグローバル化に対応するための、日本の決済サービスを高度化することを計画しています。発券業務の新しい技術を取り入れるため、次世代自動監査機の導入を進めることを決めました。
他には、現金の流通経路の変化に対応し、実態の把握をして効率的な事務処理体制を構築することも掲げられています。また、グローバル化が進んでいることを考え、海外当局と連携し国際通貨金融システムの安定確保に努めます。
地域経済や金融への貢献や、信頼性を高めるため対外コミュニケーションを強化し、情報発信をするなどさまざまな戦略が練られているのです。
2018年の日本銀行に関するトピックス
2018年、日本銀行がどのような取り組みを行ったか知るには、ニュースをチェックしましょう。OB訪問でもニュースの話題が出るかもしれません。
超長期国債買い入れ規模を縮小
9月21日、日本銀行では超長期国債の買い入れ規模を縮小しました。これは金融緩和策の1つです。具体的には、残存期間が25年を超える国債の買い入れ金額を、600億円から500億円にするというものです。
この減額は国債買い入れの弾力化を決定した7月19日以来となります。ただし、残存1年超3年以下と3年超5年以下、10年超25年以下については前回に引き続き同じ金額です。
この通知で、新発40年国債利回りは1.025%となり、2017円11月以来の水準にアップしました。新発30年債についても2017年10月以来の0.885%となっています。
金融政策決定会合を開き大規模金融緩和策の現状維持を発表
9月19日、日本銀行が金融政策決定会合を開きました。そこで、大規模金融緩和策についての現状維持を決めています。短期金利は、年マイナス0.1%、長期金利を0%程度に誘導すること、上場投資信託の購入年約6兆円という政策が継続されます。この背景には、2%の物価上昇を達成させるために超低金利政策の継続が必要との判断があるようです。
前回の会合は7月でした。この時、金融緩和策の修正が行われています。長期金利の変動率に関し、0.1%からマイナス0.1%だったのですが、上下、倍程度に拡大しています。このことで長期金利がアップするのを容認した上での、国債市場の活性化が狙いでした。修正について効果が出ているかチェックし、継続することを決めたのです。
長期金利を0.2%まで引き上げることを決定
7月31日、日本銀行は金融政策決定会合で事実上の上限である0.1%近傍の長期金利を0.2%まで引き上げるとしました。同時に、政策金利は現在の水準で維持するというフォワード・ガイダンス導入を行っています。フォワード・ガイダンスとは、金融政策の方針を前もって表明することです。
2019年10月には、消費税率引き上げが予定されています。消費税引き上げによる経済や物価への影響は不確実です。そのことで、長短金利の水準を維持することを想定しています。
金融業界の動向
OB訪問の前に、金融業界の動向もチェックしておきましょう。金融業界は銀行や証券、保険会社からローンまでさまざまな業界が含まれています。
金融業界の業績推移
金融業界の業績は、平成17年から19年まで上昇しました。そして、平成20年から少し失速気味となり、平成22年まで停滞が見られます。平成23年から少し上昇を見せ、26年まで好調に業績をアップさせています。平成27年には、減少なっています。
マイナス金利策の影響で低下したがクレジットカード業界は好調
平成27年に業績が減退している理由として、日本銀行によるマイナス金利政策の影響が大きかったようです。利ざやに影響が出て、収益力が全体的に低下しました。また、地方銀行では人口が減ったことによる影響が大きいようです。そのため地方銀行で大規模な統合などが発生しています。
証券業界でも、円高などの影響で株式市場の景気もよくありませんでした。徐々に低下している状態です。損害保険については保険料率の改定による影響で収益力が回復しました。
消費者金融では、グレーゾーンが撤廃されたことや、改正賃金業法により市場縮小が起きています。クレジット業界は、インターネット通販の市場規模が大きくなるにつれ、利用者も増えています。結果、クレジットカード業界は好調を維持しています。
日本銀行へOB訪問に行く前に準備すべき3つの項目
OB訪問をするにあたり、押さえておきたいポイントをみていきましょう。
他企業と日本銀行の違いを把握する
日本銀行の目的は、基本的な目的が物価の安定や、金融システムを安定させることです。利益については、銀行券を発行することで保有できる国債や貸出金などから生まれる利息による収入です。
これは通貨発行益と呼ばれるものです。このように、通常の企業とは異なる部分が多いです。そのことを踏まえ、日本銀行の業務を把握しておくことはもちろん、銀行や金融機関を含めた通常の企業との違いについても理解しておきましょう。
どのような人物像が求められているか深く考えておく
求める人材像についても、ホームページに人事課長のメッセージが掲載されているため、確認しておきましょう。通常の企業では利益のために働くことが求められますが、日本銀行はそれ以上に「日本」という国のために仕事ができる人を求めています。
それは日本銀行が日本の経済に大きな影響をもたらすからです。お金の価値が急激に変われば、日本で混乱が起きてしまいます。投資や消費だけではなく、送金などもできないという状態に陥るでしょう。
そうならないために、日本銀行が調整しているのです。日本銀行の判断は、日本の経済を大きく動かすことになります。その点を含め、日本銀行ではどのような人間が求められているのか、深く考えましょう。
職種もチェックしよう
業務内容を理解することはもちろんですが、職種についても調べておきましょう。日本銀行には4つのコースがあり、総合職、特定職(業務分野特定タイプ)、特定職(専門分野特定タイプ)一般職と分かれます。
総合職は、政策や業務運営全般での活躍が求められます。産業や景気動向に関する調査、金融機関のモニタリングや発券業務などを行います。
業務分野特定タイプでは、決算、発見、考査・調査、文書などの業務を担当します。専門分野特定タイプでは、システムエンジニアリング、経済学や統計、法律、語学など1つの部署で担当するエリアの専門家として業務を行います。
一般職では、業務のアシスタントや実務のエキスパートとして仕事をします。自分はどのような職種を志望しているのか、OB訪問の前に考えておきましょう。
OB/OGへの質問を準備
OBやOG訪問は、企業研究をしても分からなかったことや疑問に思うことを質問するチャンスです。質問は、複数用意していくことをおすすめします。実際に働いている先輩から、たくさんの情報を引き出しましょう。
マッチング度をはかれる質問
日本銀行に自分が適しているかどうかをチェックしましょう。相性が悪ければ、たとえ働くことになってもつらくなるかもしれません。そうならないように、OBから情報を集めましょう。
-日本銀行で働く上で、一番プレッシャーを感じたことを教えてください。また、どのようにして乗り越えたのでしょうか。
日本銀行は日本の経済に大きな影響を与えます。深い知識が必要で、プレッシャーは大きいでしょう。OBも新人の頃は大きなプレッシャーを感じたかもしれません。どのような場合にプレッシャーを感じたのかを質問してみましょう。
また、そのプレッシャーをどのように乗り越えてきたかも参考になるはずです。仕事に対する心構えを知ることや、業務をイメージする際に役立ちます。
-配属先変更など、異動があると聞きました。その時、自身の希望も考慮いただけるそうですが、叶えられる割合はどれぐらいでしょうか。
日本銀行でも、配属先のローテーションがあります。ただし、配属先や異動のタイミングについては個人個人異なります。基本的には能力や適正を生かすことができる配属先になるようです。その時、自分の希望も考慮してもらえるという話があります。
その点を確認することで心構えもできるでしょう。また、配属のローテーションについて、希望があまり考慮してもらえないことが不満に思う場合は、自分にマッチしない可能性があります。
企業研究に役立つ質問
OB訪問は、実際に企業を知るために行います。企業研究を深めることで、質のよい質問もできます。何が自分に不足しているかも理解できるでしょう。
-日本銀行の企業風土や雰囲気、活躍している人の特徴などを教えてください。
日本銀行で、長期的に仕事をするには、職場の雰囲気がどのようなものかも聞いておきたいものです。企業風土や活躍している人の特徴を知れば、実際の職場をイメージしやすくなります。
また、日本銀行で出世をしたり、幹部を狙いたいと考えている場合は、活躍している人がどのような人かも質問してみましょう。
-女性にとって働きやすい職場作りを推進しているとお聞きしました。この制度について、十分に機能していると感じるでしょうか。また、不足していると感じる部分はありますか。
仕事と育児を両立できる取り組みを行う企業も増えました。将来的に、結婚や出産となった時、日本銀行では仕事と育児が両立できるのか知りたい人もいるでしょう。
日本銀行では、女性が働きやすい職場づくりのため、さまざまな制度が設けられていますが、それが十分であるかどうかは実際に働いている人でしか分からないものです。そのような制度を把握しておくことは、自身の生活や、キャリアプランを考える際の参考になります。
選考に役立つ質問
選考を突破しなければ、日本銀行では働けません。そのためOBに選考で有利になる情報を聞きましょう。ライバルよりリードするために、押さえたいポイントです。
-「自分でゼロからものを考える力」がある人を求めていることを知りました。業務の中で、そのような能力が必要とされるのは、どのような場面でしょうか。
何もない所から、自分で考え、課題をクリアしていくのは大変なことです。日本銀行では、そのような人が求められています。ゼロからものを考えるといっても、どのような問題があるのか、具体的に聞いてみましょう。
OBから参考になる場面を聞くことで、仕事に対する取り組み方や考え方などをイメージしやすくなります。また、どのように問題解決をしたのかも聞いておくと、求める人物像に近づけるでしょう。
-日本銀行で働く上で、一番必要な能力は何だと感じるでしょうか。
仕事をするには、さまざまな能力が必要です。スキルやコミュニケーション能力、メンタルの強さ、人間性などさまざまなことが求められます。日本銀行で働く上で一番必要な能力とは何か具体的に知れば、自分に不足しているものがみえてきます。