就職浪人とは?
就職浪人とは、大学や大学院を卒業したものの、企業に正社員として就職せずに、翌年以降の新卒採用選考に再チャレンジする人を指す言葉です。形式上は「既卒」ではありますが、本人としては新卒採用枠での就職を目指して動いている、いわば「就活を続けるためのモラトリアム期間」といえます。
イメージしやすく言うと、同級生が社会人1年目として働き始める一方で、自分はフルタイムの仕事に就かず、アルバイトや短期インターンなどで生活費をまかないながら、本命業界・企業への内定獲得を目指して就活を続けている状態です。
履歴書上は「卒業後●カ月(または●年)は就職活動に専念していた」という形になり、その期間の過ごし方や行動内容が、その後の選考で必ず説明を求められるポイントにもなります。
また、就職浪人はあくまで「本人の選択によって、いったん就職しない道を選ぶ」という側面が強いのも特徴です。結果的に内定が得られずにそうなってしまうケースもありますが、「納得できる就職先を探したい」「今年は準備不足だったので仕切り直したい」といった理由から、意図的にこの道を選ぶ学生もいます。
いずれにしても、“卒業後も新卒就活を続ける人”を指す呼び方が「就職浪人」と考えると分かりやすいでしょう。
就職留年との違い
「就職浪人」が“卒業後にいったん社会に出ず、翌年以降の就活に専念する人”を指すのに対して、「就職留年」は“卒業要件は満たせる状態でも、あえて在学期間を1年延ばして学生のまま就活を続けること”を指します。
つまり、就職浪人は「既に卒業している既卒」、就職留年は「在学中の学生」という立場の違いが大きなポイントです。
企業によっては、在学中であれば形式上は“新卒”として扱われやすい一方で、留年理由については必ず聞かれますし、追加の学費や生活費もかかります。逆に就職浪人は、学生証がなくなる代わりに、時間の使い方の自由度は高くなります。このように、「どちらが得か」ではなく、自分がどの立場で就活を進めたいかという視点で違いを押さえておくことが大切なのです。
第二新卒との違い
「第二新卒」とは、一度は新卒で企業に就職したものの、入社からおおよそ3年以内に転職活動をする若手社会人を指す言葉です。すでに社会人経験があり、ビジネスマナーや基本的な業務を経験している点が特徴です。企業側も「ポテンシャルは新卒並みだが、社会人としての土台はある人材」として募集しているケースが多く見られます。
一方で、就職浪人はそもそも一度も正社員として就職していない状態で、卒業後も新卒枠での就活を続けている人のこと。社会人経験があるかどうかが、第二新卒との一番大きな違いです。選考で見られるポイントも変わってきます。第二新卒では「なぜ短期間で転職するのか」という退職理由やキャリアの方向性が問われますが、就職浪人の場合は「卒業後の期間をどう過ごしてきたのか」「その経験を今後どう生かすのか」が重視される傾向にあります。
就職浪人を選ぶ人の割合について
「就職浪人」という選択肢があるとはいえ、実際にそこまで踏み切る人は、全体から見ると多くはないというのが正直な印象でしょう。各種調査でも、大学卒業後すぐに正社員として就職する人が多数派で、進学や専門学校への進学、フリーター、ニートなどを含めた「非正規の進路」の中の一部として、就職浪人が含まれているイメージです。
ただし、文系・理系、大学のレベル、志望業界によって状況はかなり違います。特に人気業界にこだわる学生や、「今年は準備不足だった」と感じている学生ほど、就職浪人を前向きな“仕切り直しの1年”として選ぶ傾向があります。割合としては決して多数派ではないからこそ、選ぶ場合は「なぜその道を取るのか」「その1年で何をするのか」を自分なりにしっかり言語化しておくことが大切なのです。
※参考資料
・文部科学省「学校基本調査」
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
・e-Stat「学校基本調査 令和5年度 高等教育機関 卒業後の状況」統計表
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00400001&tstat=000001011528&tclass1=000001212520&tclass2=000001212545&tclass3=000001212553&tclass4=000001212555
・文部科学省×厚生労働省「大学等卒業者の就職状況調査(4月1日現在)」令和6年度
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/naitei/kekka/k_detail/1422624_00022.htm
・文部科学省×厚生労働省「令和5年度大学等卒業者の就職状況調査(4月1日現在)」
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/naitei/kekka/k_detail/mext_02766.html
就職浪人のメリット
就職浪人にはリスクもありますが、だからといって「絶対に避けるべき選択」とは限りません。学費がかかる就職留年と比べると金銭的な負担を抑えやすかったり、アルバイトや自己分析に時間を割きながらじっくり就活を練り直せる面もあります。また、一度は見送らざるをえなかった志望企業に、もう一度挑戦できるチャンスになることも。
就職浪人ならではの具体的なメリットについてみていきましょう。
【メリット①】就職留年と比べ金銭的な負担が少ない
就職浪人の大きなメリットのひとつが、就職留年と比べてお金の負担を抑えやすい点です。
就職留年の場合、もう1年分の学費や施設料が発生し、仕送りや一人暮らしの生活費も含めると、家庭への負担はかなり重くなります。一方、就職浪人はすでに卒業しているため、学費はかかりません。実家に戻ったり、アルバイトで生活費の一部をまかなったりすることで、支出をコントロールしやすくなります。
「もう1年就活を続けたい」と考えたとき、家計への影響を現実的に考えると、就職浪人という選択肢の方が取りやすいケースも少なくないでしょう。
【メリット②】就職活動に時間をかけることができる
就職浪人を選ぶと、就活に使える時間の「質」と「量」が変わります。授業やレポート、ゼミなどに追われないぶん、自己分析や業界研究、OB・OG訪問にじっくり取り組みやすくなりますし、エントリーシートの練り直しや面接対策にも腰を据えて向き合えるでしょう。
また、選考スケジュールを自分のペースで組み立てやすいので、「とりあえず片っ端から受ける」のではなく、本当に行きたい企業や職種に絞って準備することも可能です。時間的な余裕をうまく使えれば、1年目の就活よりも深く考えた上で応募先を選べるのは、就職浪人ならではのメリットといえます。
【メリット③】志望企業に再挑戦できる
一度不合格になった志望企業に、もう一度挑戦できるのは就職浪人ならではの大きなメリットです。選考で落ちた理由を振り返り、自己分析の掘り直しや、インターン・アルバイトなどを通して経験を積んだ上で再チャレンジできます。「なぜもう一度この会社なのか」「前回からどう成長したのか」を筋道立てて語れれば、その1年は単なる遠回りではなく、説得力のあるエピソードとなるでしょう。
本当に行きたい企業がはっきりしている人ほど、就職浪人の1年を“リベンジの準備期間”として活かしやすいといえるでしょう。
就職浪人のデメリット
就職浪人にはメリットがある一方で、覚悟しておきたいデメリットも少なくありません。
例えば、卒業後にあえて就職していないことを採用担当者がどう受け止めるか。同じ企業に再挑戦しても、前回以上に厳しく見られる可能性があること。さらに、一部の大手企業では選考基準から外れてしまったり、大学のキャリアセンターやインターンシップなど「学生向け」のサポートを十分に利用できないケースも出てきます。
そうした就職浪人ならではの”シビアな現実”について理解しておきましょう。
【デメリット①】採用担当者からマイナスな印象を受けやすい
就職浪人というだけで必ず落とされるわけではありませんが、採用担当者の目線が厳しくなるのは事実です。
「なぜ卒業時に就職しなかったのか」「その1年間で何をしていたのか」「同級生と比べてどんな価値を出せるのか」といった点は、ほぼ確実にチェックされます。ここがあいまいだったり、「ただ時間が過ぎてしまった」ように見えると、計画性や主体性に不安を持たれやすくなります。
就職浪人を選ぶのであれば、その期間をどう過ごすかを事前に設計し、選考の場で納得感のあるストーリーとして語れるようにしておくことが欠かせません。
【デメリット②】同企業に再挑戦しても不採用の可能性が高い
同じ企業に再挑戦できるのは就職浪人のメリットでもありますが、現実的には「一度落ちた企業に再び受かる」のは簡単ではありません。企業側からすると、前回の選考で「今の基準では採用見送り」と判断した相手を、もう一度受け入れるだけの明確な理由が必要になるからです。
そのため、「前回からどこが変わったのか」「この1年で何を身につけたのか」がはっきり見えないと、選考を通過するのは難しくなります。特に評価項目や採用人数が大きく変わっていなければ、同じ理由で不採用になるリスクも高いでしょう。再挑戦を考えるなら、単なるリベンジではなく「企業が採りたくなるほど成長できたか」をシビアに見極める必要があるのです。
【デメリット③】大手企業の選考基準から外れる可能性がある
大手企業を志望している場合、就職浪人は選考の入口で不利になるケースがあります。
多くの大手は「〇年3月卒業見込みの学生」といった形で募集対象を明確に区切っており、卒業後の既卒はそもそも新卒枠の対象外、あるいは「卒業から◯年以内」といった制限が設けられていることも少なくありません。また、応募フォーム上で在籍状況や卒業年度を入力した時点で足切りされてしまう企業もあります。
もちろん、既卒も歓迎する大手もありますが、「新卒カード」をフルに使えない企業が出てくるのは事実です。行きたい企業の応募条件は、就職浪人を決める前に必ず確認しておきましょう。
【デメリット④】大学からのサポートを受けることができない
就職浪人になると、学生のときに当たり前に使えていた大学のサポートが一気に減る、という現実もあります。
多くの大学では、キャリアセンターの個別相談や学内セミナー、学内推薦、大学宛てに届く求人票などは「在学生向け」のサービスとして位置づけられています。卒業後も一部の相談は受け付けてくれる大学もありますが、利用できるメニューが限られたり、イベント参加の対象外になることも少なくありません。結果として、情報収集や選考対策を自力で進める部分が増え、「何から手をつければいいか分からない」と感じやすくなる点は、就職浪人のデメリットといえるでしょう。
【デメリット⑤】インターンシップへの参加が難しい場合がある
企業にもよりますが、就職浪人はインターンシップに参加しづらくなるケースもあります。
多くの企業が実施している就業体験型インターンは、「大学◯年生対象」「在学中の学生限定」といった条件が付いていることが多く、既卒だと応募そのものができない場合も少なくありません。また、エントリーサイト上の学年選択で弾かれてしまうこともあります。
もちろん、既卒や社会人も参加できるインターンを用意している企業もありますが、選択肢が狭まるのは事実です。結果として、企業理解を深めたり、本選考前にアピールする機会を逃しやすくなる点もある、という側面も押さえておきたいところです。
就職浪人になる理由とは?
「就職浪人」と聞くと、内定が一つも出なかった人だけを想像しがちですが、実際の理由はもう少し複雑です。
大学卒業までに納得のいく内定が得られなかったケースはもちろん、大学院進学を前提にしていたものの入試に落ちてしまったり、就職留年をしたくても学費負担が難しいために卒業を選ぶ人もいます。また、「もらった内定先ではどうしても踏ん切りがつかない」と感じ、あえて就職浪人として仕切り直すケースも。
就職浪人という選択に至る具体的な背景についても知っておきましょう。
【理由①】大学卒業までに企業内定を受けられなかった
大学卒業までに内定が取れず、結果的に就職浪人になるケースは少なくありません。
例えば、就活のスタートが周りより遅れてしまったり、エントリー数が少なすぎてそもそも選考の土俵に乗れなかったり。志望業界を絞り込みすぎてチャンスを逃してしまうパターンもあります。また、面接が苦手で最終まで進んでもあと一歩届かない、学業や体調不良との両立で本格的に動ける時期が限られていた……といった事情もあるでしょう。「やる気がなかったから」ではなく、準備不足や戦略の甘さ、環境要因が重なった結果として、卒業時点で内定がない状態になってしまう人も多いのが実情です。
【理由②】大学院入試に落ちてしまった
大学院進学を前提にしていたものの、入試に落ちてしまい、そのまま就職浪人になるケースもあります。
研究職志望や専門性を深めたい理系学生に多く、「大学院に行くつもりだったから就活はほとんどしていなかった」というパターンが典型的です。第一志望の大学院以外をほぼ受けていなかったり、入試結果が出るタイミングが新卒採用の山場を過ぎていると、「気づいたら就活の主戦場を逃していた」という状況にもなりがちです。その結果、卒業後にあらためて就活をするしかなくなり、意図せず就職浪人という形になってしまう人もいます。
【理由③】就職留年を選択する金銭的余裕がない
就活がうまくいかず「もう1年チャレンジしたい」と思っても、就職留年という選択が現実的ではない人もいます。理由のひとつが、学費や生活費の問題です。
もう1年在学するとなれば、授業料や施設料に加えて、家賃や食費、交通費なども引き続きかかります。奨学金をこれ以上増やしたくない、親にこれ以上負担をかけられない、と感じている人も多いはずです。
その結果、「学生のまま就活を続けたいけれど、家計的に難しい」という事情から、やむを得ず卒業して就職浪人という形を選ぶケースがあります。実家に戻って生活費を抑えたり、アルバイトをしながら就活を続ける前提で、「留年」ではなく「卒業+就職浪人」を選ぶ、という流れです。
【理由④】内定企業が納得のいくものではなかった
内定は出たものの、「ここで本当にいいのか」とどうしても踏み切れず、結果的に就職浪人を選ぶ人もいます。
例えば、志望していた業界とは全く違う業界からの1社だけの内定だったり、仕事内容や勤務地、給与条件をよく調べていくうちに、「将来のイメージが湧かない」「長く続けられる気がしない」と感じてしまうケースです。説明会や口コミ、OB・OG訪問を通じて、いわゆる“ブラック”な噂が気になり始めるパターンもあります。「内定=ゴール」と割り切れず、納得できないまま入社するより、一度白紙に戻して就活をやり直したいという思いから、あえて就職浪人という道を選ぶ人も少なくありません。
就職浪人を選んだ際の就職成功のコツとは?
就職浪人を選んだからには、「ただもう1年受け直す」のではなく、その期間をどう価値あるものにするかが勝負どころです。卒業後の空白期間は、必ず企業から説明を求められるポイント。そのときに、「この1年で資格やスキルを身につけた」「アルバイトやパートで現場経験を積んだ」など、具体的な行動と成長を語れるかどうかで印象は大きく変わるのです。
就職浪人の1年を“プラスの材料”に変えるためのコツをみていきましょう。
【コツ①】就職浪人期間中にさまざまな資格・スキルを習得する
就職浪人の期間を「空白」ではなく「準備期間」に変える上で、資格やスキルの習得は分かりやすい武器になります。例えば、志望業界に関連する資格や語学、ITスキルなどは、履歴書にも書きやすく、面接でも「この1年で具体的に取り組んだこと」として説明しやすいポイントです。
また、資格勉強そのものが、計画的に物事を進める力や、コツコツ継続できる姿勢のアピールにもつながります。「ただ就職浪人していました」ではなく、「目標の企業に入るために、この能力を伸ばしていました」と言えるかどうかが、評価の大きな分かれ目になるでしょう。
【コツ②】アルバイト・パートなどの実践的経験も積んでおく
就職浪人の期間中は、アルバイトやパートなどで「現場の経験」を積んでおくことも大きな強みになります。
社会人と一緒に働く中で、ビジネスマナーや報連相、クレーム対応、後輩指導など、学生生活だけでは身につきにくい力が鍛えられますし、面接でも具体的なエピソードとして語れます。また、「生活費を自分でまかなうために働いていた」という事実は、責任感や自立心のアピールにもつながるでしょう。
就職浪人の1年を、単なるブランクではなく「実務に近い経験を積んだ時間」として説明できるようにしておくことが、選考での説得力を高めるポイントです。
まとめ
就職浪人も就活留年も、「もう1年就活を続ける」という意味では似ていますが、立場やお金の負担、企業からの見え方は大きく異なります。また、内定ゼロだけでなく、大学院入試の不合格や経済的事情、内定への違和感など、就職浪人に至る背景もさまざまです。大手の新卒枠から外れたり、大学のサポートが受けにくくなるなどのシビアな面がある一方で、時間とお金の使い方しだいでは、志望企業への再挑戦やスキルアップのチャンスにもなり得ます。
もし就職浪人を選ぶなら、「この1年をどう使い、どう語るか」まで含めて、自分が納得できる選択をしていきましょう。
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