<企業紹介>
伊藤忠商事株式会社
繊維、機械、金属、エネルギー、化学品、食料、住生活、情報、金融の各分野において、輸出入および三国間取引を行うほか、国内外における事業投資など、幅広いビジネスを展開。「マーケットインの発想」でお客様の要望に応えることを追求し、世界中の様々な地域でビジネスを展開している。
<人物紹介>
金山義憲
1999年入社
人事・総務部 採用・人材マネジメント室長 人材多様化チームリーダー
採用、育成、ニューヨークでの実習、給与・福利厚生、人事制度の企画、海外人事、アジア・太洋州の経営企画・人事など、幅広く経験。2020年より、18年ぶりに採用業務に携わる。
「相手目線」を大切に、新しいビジネスを創出
———本日はお時間をいただき、ありがとうございます。人事として幅広い経験をされていて採用をメインとする仕事は18年ぶりとのことですが、当時と比べてどのような印象がありますか?
しっかり業界・企業研究をしている学生の方が増えた印象があります。一方で、今も昔も根本的なところは同じだと感じました。学生の皆さんは自分自身と向き合い、どんな仕事をしたいか、それはなぜかを考え続け、会社は入社後にできること、将来実現できること、特色をたくさん提供した上で、お互いに会い、話し、決めていくというところは改めて同じだと安心しました。
———学生が情報を得る環境も変わりましたね。
そうですね。最も大きい変化だと思います。オンライン化が進んだことで情報量や得られる知識量は格段に増えています。情報が増えたことで、思いもよらない発見や会社との出会いも増えるので、とても良いことだと思います。その分、入手した情報を整理し、自分の中で消化した上で就職活動に臨むことがより大切になってきていると感じます。ぜひ広くでもいいですし、興味ある業界をとことん調べてみるなど、皆さんなりの情報収集、整理を行ってみてください。実はそれが会社に入った後に新しい仕事を進める上で役立つと思います。私たちもどんな情報が役立つか時期に応じてしっかり考えていきます。
———御社で働く若手には、どのような印象がありますか?
責任感があり積極的に新しいことをやろうと挑戦する気持ちを持った若手が多い印象です。当社は、商社の中では少人数ですので、社員一人ひとりの裁量と仕事の範囲が広く、それは若手も同じです。従い、自分の仕事への思いや責任感が強く、新しい提案ややりたいことに積極的になれるのではないでしょうか。会合や商談で相手や周囲が役職者の中でも、若手が臆せず積極的に発言していく場面も多いです。アジアにいて感じましたが、特に海外駐在では、多くの権限や機会が与えられ、例えば、厳しい環境不良地の中でもパートナー会社と共に考え、頑張って成長している若手も多く見てきました。
———では、御社で活躍されている方の特徴はありますか?
様々な社員がいるので一概には言えませんが、活躍している人は「相手目線」を持っていると思います。ビジネス柄、お客様の視点に立ち、相手のニーズや情報を聞き出し、集め、整理することが求められます。そしてそれを元に課題を見つけ、解決策や新しいビジネスへの道筋を組み立てて実行していきます。また、最も難しいのが解決策やアイデアを実行に移すことです。多くの関係者を巻き込み、了解を得て、調整を行い、実際のビジネスへ進めていく大きな推進力が必要です。差が出てくるのはこの点ではないでしょうか。会社として将来の収益につながること、他のビジネスへの展開、世間に役立つかを踏まえた上で、実ビジネスへの落とし込みへと実行できる人が活躍できるのだと思います。ビジネスの仕組みをつくっていく力や、相手にとってメリットを生むようにビジネスを仕立てていく力が強く求められていると感じています。
———その「実行できる人」「巻き込める人」とは、どのような人でしょうか?
「信頼」されている人だと思います。仕事における関係者は社内だけでなく、パートナー企業、銀行、行政など様々です。例えば、各国の有力ビジネスパートナーはその人となりを見て判断することもあり、「信頼できる人かどうか」が最も大事になってきます。では信頼できる人とはどういう人かというと、難しい話ではなく、例えば常に正直であるとか、誠実であるということです。そうすれば、この人に話すと相談に乗ってくれ何とかしてくれると思われるようになります。相手から信じて頼られる存在です。皆さんの周りでも、例えばリーダーがそうかもしれませんし、参謀的なポジションの方かもしれませんし、どこか相談したくなる信頼できる方がいるのではないでしょうか。
自分を曲げず、自然体で就職活動に取り組むべき
———面接や選考の過程で、どのようなことを意識されていますか?
面接で「何を学生時代に取り組んだか」を聞くことがありますが、取り組んだ結果以上に「何のためにやってきたのか」と「なぜそれをやったのか」という行動の動機の部分をより深く見ています。それは私だけでなく、ほかの面接官も同じではないでしょうか。部活でも、アルバイトでも、留学でも、やろうと思った動機に個性やその方の考え方の軸が出ますし、そこから、会社と学生がお互いに合うかどうかもわかると思います。あとは実行する上で直面した課題をどう乗り越えたかということも大切です。その過程において何を学んだかということを見ています。特に当社では厳しい場面や課題に直面する機会が多いと思うので、その点はよく見ています。そのため、学生時代の経験をデフォルメする必要はなく、ありのままご自身が考えていたことや感じたことをお伝えいただければと思います。
———デフォルメして伝えるとは、どういうことでしょうか?
その会社に入りたいという想いが先に立って、自分を無理に曲げてしまうことがあるように思います。その企業の求める人物像やイメージに合わせて自分をつくり込むことはしない方がいいと思います。自然体で自分が経験したこと、思うことを大切にして面接に臨めば、必ず相性が合う、うまくいく会社があります。やりたいことがあってその道筋に当社があるという方も、まだやりたいことはないけど前向きになれる部分があるから当社がいいという方も、どちらも正解だと思います。就活に不安がある方ほど、もしかしたらこういう人物像じゃないとダメ、こういう就職活動じゃなければダメだと固定観念に陥りがちではないでしょうか。正解は1つではないので、ここは自分目線で考えてみることをおすすめします。自分の軸の本質の部分を変えてしまうと、入社後に「こんなはずじゃなかった」と苦労することになりますから。
———商社がいくつもある中で、特に御社に合うのはどのような人でしょうか?
やはり当社は「三方よし」を企業理念にしているので、自分が良ければ良いのではなく、相手や周りのことを考えられることが大事です。お客様に信頼していただき、「伊藤忠商事さんなら」と思っていただけて初めて商売がうまく進んでいくと思います。そのためには、相手目線に立ち「自分のことをしっかり考えてくれるな」と思われることが大切です。
———御社が今、力を入れていることはありますか?
様々な情報から顧客のニーズを的確に捉え、それに応じた商品やサービス等を提供するマーケットインの発想です。既存のビジネスを大切にしながら、改めてマーケットインの発想でビジネスを捉え直していくことに力を入れています。そのために、多様な考え方や価値観を持った社員が活躍できる「厳しくも働き甲斐のある会社」を目指しています。少数であることから朝型勤務やがんとの両立支援をはじめとする健康経営によって、社員が生産性高く最大限の力を発揮できる環境づくりに努めています。若手の社員には、当社での成長可能性を実感できるような取組みを行っています。例えば、8年間のうちに異なる担当や海外派遣をするなどの育成ルールを各組織で策定した上で、部門長自らが若手への期待や育成方針を語り掛ける「キャリアミーティング」を各部門単位で実施しています。また、商品分野を超えて異動する仕組みや戦略的な人材配置にも取り組んでいます。
言語化するほど、自己認識が高まる
———これから入社する新卒社員に期待することは何ですか?
当社は展開しているビジネスに比して少人数であるので、個での仕事や、個で物事を進める場面が多くあります。一方、現在はマーケットインの発想に力を入れているので、例えば新しいビジネスをしようとした時に担当している商品のみでなく、個が強いからこそ横断的な意識が必要です。立ち上げたビジネスを海外展開するにも、やはり有力ビジネスパートナーは1つの商品ではなく様々な商品、つまり横断的な目線が入ってきます。新卒の皆さんは就職活動を経て入社されるので、最も横断的な視点を持っていて、様々な業界の特徴を見てきたばかりです。当社に入ったら「あのときあんなことを考えていたな」と、枠を作らない新しいアイデアや発想に期待しています。就職活動で色々な業界を回っていることは決して無駄になりません。ぜひその経験を活かして欲しいです。
———ファーストキャリアの選び方について、アドバイスをお願いします。
やはり自分を飾ることなく企業を選ぶことです。特にファーストキャリアはそこが大事だと思います。最初に入る会社は、社会人としての基礎や考え方、価値観、仕事の進め方の基礎となる場所です。仕事内容を見るだけでなく、そういった最初の大事なステージとして、飾らずに自分のやりたいこをを伝えた上で、共感できる企業を見つけて欲しいと思います。
———飾らずに自然体で考えるために、学生が自己認識レベルを高められる方法はありますか?
それは対話だと思います。自分で考えるだけでは限界があるので、OB・OG訪問でもいいですし、色々な業界の人と会って、対話をするといいのではないでしょうか。対話することは言語化することであり、言語化することは頭が整理されていくことになります。その繰り返しをたくさん行うことによって、自分自身で話しながら気づき、整理され、自己認識が高まっていくと思います。その結果、自分に合う会社もわかってくると思います。また、相手である会社目線で考えてみることも1つです。例えば「この会社から見たら、自分はどう見えるんだろう」とか「この会社の社員から見ると、自分はどう活躍できると映るんだろう」というように、自分を俯瞰的、客観的な目線で見つめると、より明確になっていくと思います。
———ありがとうございます。最後に、改めて学生にメッセージをお願いします。
その会社に向いている、向いていないと考えることも大切ですが、それは入社してみないと分からないものです。一方、それ以上にその会社の仕事や社風に「前向きになれるか、なれないか」という思考が大切だと思います。前向きになるということは自分から様々な挑戦をしようという意欲が沸くことにつながります。つらい時も乗り越える力になると思います。その視点を大切に新たな発見ある充実した就職活動になることを願っています。また、その結果の就職先が当社であれば大変うれしく思います。