【登壇者プロフィール】
株式会社ユーザベース 伊藤竜一
2007年 名古屋大学大学院を卒業後、リクルートに入社。
人材事業の大手向けメディア&ソリューション営業に従事し、2010年度には全国営業通期達成率TOP賞を受賞。
また、メディアと人材紹介を組み合せた顧客伴走モデルやwebマーケティング活用サービスを企画立案・商品化。
アドテク領域や大手営業部隊でのマネージメントも経験。
2016年からユーザベースに参画し、SPEEDA営業及びentrepediaやMIMIRの営業立ち上げに従事。現在はSPEEDA事業アカウントエグゼクティブチームの営業マネージャー。
2018年より副業も開始。
株式会社GA technologies (GA テクノロジーズ) CCO 川村佳央
2005年新卒でサイバーエージェントに入社、子会社の代表取締役社長を経て、2011年電通に移籍。2018年7月からGA テクノロジーズにジョインし、現在はChief Communication Officerの役割で全社のコミュニケーションの責任者を務める。ベンチャー→大企業→ベンチャーの反復横跳びキャリア。
5月21日に開催されたパネルディスカッションの様子を書き起こし形式でお伝えします。
まずは、それぞれの会社について簡単にご説明をお願いします
川村:
GA テクノロジーズは、「テクノロジー×イノベーションで、人々に感動を」というミッションを掲げるベンチャー企業です。不動産テックと呼ばれる領域で、事業を行なっています。昨年の7月に東証マザーズ上場し、売上高は前期で200億円、今期は予測で360億円程度の規模になっています。社員数は今月で350名になりました。新卒も46名入社し非常に伸びている段階です。特徴としては、全社員の40%にあたる約130名くらいエンジニア/デザイナー職なので、不動産領域の会社としては世界で見ても類をみないレベルのエンジニア比率だと思います。市場を創っていくという観点で、今日はお話しできればと思っています。よろしくお願いします。
伊藤:
ユーザベースは入社した翌月にあたる、2016年10月にマザーズ上場しています。急成長し続けているが、代表が健全な野望を持っていて、上場はあくまでも通過点と捉えている。アメリカやアジアの海外進出も含めて、「SPEEDA」という根幹サービスと「NewsPicks」というアプリを手がけながら世界で戦っていこうとしているフェーズにいます。経済情報で世界を変えるというミッションを掲げ、7つのルールで定めている「自由主義でいこう」「渦中の友を助ける」などのカルチャーを大切にしています。
なぜ新卒で入社した会社を選んだのか
川村さん:
いきなり昔話になりますが、10代は思い通りにいかないことだらけでした。中学受験は志望校に落ちて、結局第7志望の学校に進学。今度こそ、と思って挑んだ大学受験も行きたい大学だけ見事に落ちて、10代において自分にとって結構重要だと思っていた「受験という戦い」に負け続けてきました。なので、就職活動をする時には「これで、ビジネスの世界で何者かになれなかったら、僕の人生はいったい何なのだという」と、思いつめるまではいかないですけど、そういう思いを抱えていたんです。そういう考えから、入社したらスタートからガムシャラに突っ走れる環境を求めていたので大企業は見ておらず、ベンチャー企業(=成長産業で圧倒的に成長している会社/連続的、断続的に事業を生み出し続けている会社、あるいはそういうものを通じて世界を変えている会社)を見るようになった。そこで、インターネットが好きだったこともありインターネット業界を片っ端から調べて、今でこそおそらく数千社あると思いますが、当時はネットやネット広告で有望そうな会社はせいぜい20社ほどだったので、いくつか内定をいただいた中から会った社員の魅力が段違いだったサイバーエージェントに入社を決めました。伸びていく産業に身を置いて、その産業の中でも伸びていく会社で働くことで、自分自身も成長したいと当時思っていました。就活っぽいですけど(笑)
伊藤さん:
高校生まではガリ勉で根暗だった。こんな場で喋るようなキャラではなく、学祭でも裏で引きこもっているような感じだったが、高3の時に好きな人がいて大学入学後に告白をしてフラれるというのが僕の転換期となった。ここで、自分を変えないと人生が終わると感じ、自分を徹底的に鍛えられる場所を探した。家庭教師のアルバイトを始め、訪問販売をしながらブラックに5年ほど働いていた。その後、せっかく理系だったので院に進学後、営業職で就活をした。当時のリクルートエージェントの社長対談に参加したことをきっかけにリクルートに興味を持ち内定をもらいました。その他、日系大手企業でも複数内定していたが内定できた理由として「めっちゃ良い人だから」と言われ、語ってもらった内容が性格特性だったので、自分を認めてもらえて活躍の場があることを感じリクルートに入社を決意。
なぜ転職をされたのか
川村さん:
僕がサイバーエージェントに入社した2005年というのは、同期60名を含めて全社員数が500名弱という規模でした。それから6年間在籍してサイバーエージェントをやめる時でだいたい1,200名ぐらいだったと思います。メガベンチャーになっていく姿を内側で見られた経験は良かったし、実際に僕も社会人2年目で社内の新規事業プランコンテストに優勝して、子会社の社長を2年間やらせていただくなど、急成長のネット企業ならではの猛烈なスピード感の中でものすごい種目の数の経験ができたと思っています。で、なぜ辞めたのかと言うと、6年間の間に営業から子会社社長、営業マネージャー、そして広告主企業のマーケ部門への出向なども経験していく中で、「この会社でやれることは全部やってしまったのではないか」という感覚に陥っていました。大した実績も出してないのに、経験したことだけで満足感を得ていたんです。とんでもない勘違いです。なので、今までとは全く違う経験、逆の経験をしたいと思ったのです。その後、声がけいただいた電通に転職しました。電通は凄まじい会社で、人材のレベル、そこにある仕事やプロジェクト、どれをとっても驚異的な面白さと規模感でした。一方、CAで体験していたようなスピード感は正直あまりなくて、巨大な仕事をじっくりと仕上げていく職人といった感じでしょうか。思っていた通り、まさにCA時代とは全く違う経験ができました。しかし、その電通も7年勤めたあとに辞めてGAテクノロジーズに来るわけですが、その理由はやっぱり「僕はやっぱり根がベンチャー野郎だった」というか、新しい市場や産業を作りながら、その産業において企業も組織も人も成長させていく、というCA時代に経験したことを改めて30代後半になってやりたくなった、という感じです。「不動産テック」という聞いたこともないような領域ながら、凄まじい可能性のあるマーケットに挑んでいる今の会社に転職を決めました。
伊藤さん:
リクルートは本当にアグレッシブに好き勝手やらせてもらった。入社当時、20代でマネージャーになって年収1,000万越えようという目標を持っていたのですが、一応ぎりぎり達成した時に目標がなくなった。どういう自己実現や社会インパクトを出したいかを考えていられれば、良かったと思いつつ、初めの7年間で順調に成果を出してきたが、マネージャーになってから平凡な日々だった。組織作りでの悩みもあって、マネージャーに向いていないと感じる様になった。その後、求めていた環境が揃っていたユーザベースに転職。もう一度、自分が好きな軸で戦いたいと思っていた思考性としてもマッチして、失敗を機になっていますが、その中で自分の本当にやりたいと思っていたことに出会えたと思っています。
今振り返って大企業で良かったと思う点は何か
川村さん:
全ての物事って良い側面と悪い側面があるんですよ。大人や人事は嘘をついていないけれど本当のことを全部は言わないという手法を使うわけですよ。ベンチャーの人はベンチャー良いよと言うし、大企業の人は大企業良いよと言いますよね。だけど、それぞれ裏側もあると思っていて、僕はその裏側も正直に伝えてその上で学生ご自身に判断して欲しいと思っています。
サイバーエージェントでも電通でも新規事業を立ち上げた経験があるので、それを比較すると分かりやすいのですが、サイバーエージェントでは新規事業コンテストで優勝したあと、すぐに子会社の立ち上げ準備に入って1ヶ月足らずですぐに登記されました。すごいスピード感です。一方、電通では新規事業投資に関する委員会を通すのですが、まずその委員会の開催が月に1回で。今は分かりませんが当時はそうでした。通すのに半年、そこから立ち上げ準備して、、、といったスピード感で進んでいったので、インターネットビジネスのスピード感的にはちょっと遅いなぁと。その代わり、事業やると決まれば想像以上の予算が承認されたり社内の人脈を駆使した事業推進ができたりなど、動き出してからのダイナミックさはすごかったです。大企業って、物事が動いた時のスケールはやっぱり大きいですよね。それはベンチャー企業ではなかなか見られない景色です。ただ動きはどうしても遅い。小動物と大動物みたいなものです。この比較に答えや良し悪しはないし、結局のところ好みだと思います。僕らが決めることでもないし、こうして自分の体験を話すことはできるけど、学生の皆さんは好きな方を選べば良いと思います。
伊藤さん:
あえて、リクルートと比較したユーザベースの悪いところをあげてみますが、圧倒的にリソースですね。それは、投資の費用もそうですが、特に人ですね。ユーザベースはめちゃくちゃ優秀な人しかいないので、その分採用が遅延していて、とても困っていますね。(笑)売れるのが見えているのに全体最適の中でリソースが限られていて、売れるのが見えているのに絞らなくてはならないと言うこと、限られたリソースの中でハイパフォーマンスを出さなければならないというところ、これはスタートアップならではだと感じますね。そういうところはリクルートで新規サービスを立ち上げた時と比較して、一気にスケールする感じや大きなインパクトを与えられる様なものとは違ってきますね。ベンチャーであれば商品をとことん磨き込む必要があるが、リクルートの様な大企業では売る人が大勢いれば、そこまで磨き込んだものでなくても売れたりする。インパクトの大きさで言うと素晴らしいところです。
最後に学生へのメッセージ
伊藤さん:
今のユーザベースは当時のサイバーエージェントさんに近いのではないかと思うのですが、新卒採用のコンセプトは「20代社長をつくろう」です。なので、20代で社長張れるくらいの人を求めています。ただ、去年から新卒採用を始めたので、2019年4月入社が新卒第一号で、今まではインターンから入社する様な感じだった。そういう意味で新卒や中途という区切りはあまり意識していなくて、本当にユーザベースのミッションに共感してくれていて、カルチャーにフィットしていて、この環境で自分がパフォーマンスしたいと思っている人に来ていただきたいと思っています。そんな覚悟を持った人は、こういったベンチャーは良いのではないかと思っています。一方で、すでに市場があるところでもう一段上のチャレンジがしたいと思っている人は大手の土俵でも凄く魅力的かと思います。なので、自分がどんなことをしたいのかについてはとことん突き詰めて考えてみて欲しいですね。
会社で見るのではなく、事業やフェーズまでみて判断することをオススメしたいです。
川村さん:
今の世の中、圧倒的に働きやすくなっていますよね。良くも悪くも限界までやれる環境が減っていると感じます。その上でお伝えしたいことは2つ。
1つ目は、一番体力とやる気に溢れた20代をどう過ごすかは大事。経験と体験の積み重ねだと思うんですよね。その時、目の前のことを全力で頑張ればキャリアは積み上がっていくと思っています。20代は多少圧をかけてでも、多くの経験を積めるようなきつい環境(難しい課題がありそう、普通にやっても勝てない、競合が強い二番手、まだ分からないけどチャンスがありそう)を目指してみると良いかもしれないですね。
2つ目は、世の中には優れているベンチャー企業はたくさんあると思います。良し悪しはありませんが、一つだけ言うなら産業を創っている会社を選んで欲しい。自分たち自身が、そのマーケットのパイオニアになっていて、そのパイオニア自身がマーケットを作り続けてシェアを広げていくことに挑戦している会社。狭くても良いのでマーケットを作っているというのはとても強いので、そういう環境を探して欲しいと思います。
ただこれも、僕も含めて大人たちが言っていることを鵜呑みにするのではなく、ご自身で調べて、学んで、しっかりとした選球眼を持って企業を選んでほしいと思います。