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OB/OGが語る

東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)人事部担当部長が語る、人生100年時代のキャリア選択とは

健康寿命が延び、これからは人生100年時代が来ると言われる。働き方も多様化し、人生そのものも多様化している現代において、“最初の就職先”を選ぶ時に考えるべきこととは。JR東日本で、働き方改革を推進する中川氏にお話を伺った。

<企業紹介>
関東、東北、甲信越地方を中心に、5方面に延びる新幹線をはじめとした鉄道ネットワークを有し、1日に1,750万人が利用する世界最大級の旅客鉄道会社。鉄道事業、生活サービス事業、IT・Suica事業、鉄道車両製造事業の4つの事業フィールドを経営の柱とし、多様な事業を展開。2018年7月発表のグループ経営ビジョン「変革2027」では、これまでの「鉄道を起点としたサービスの提供」から「ヒトを起点とした価値・サービスの創造」への転換を掲げ、海外プロジェクトをはじめ新たな成長戦略に果敢に挑戦している。

<人物紹介>
中川 晴美
人事部 担当部長
1991年入社

1987年の国鉄分割民営化で誕生したJR東日本が、事務系総合職の女性社員の採用をスタートし3年目を迎えた年に入社。採用や宣伝などの業務でキャリアを重ねたのち、自らの出産・育児の経験を活かしつつ、ダイバーシティ推進の初代グループリーダーとして、女性社員の活躍推進等に取り組む。その後、横浜支社人事課長、千葉支社総務部長を経て、2016年より現職。多様な社員がそれぞれの能力を最大限発揮しながら、いきいきと活躍することのできる企業を目指し日々奮闘している。


社会現象を生んだ体験がその後の会社人生を切り拓く力に。

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— 今日はよろしくお願いします。記憶をさかのぼっていただき、就職活動のお話から伺えますか?

よろしくお願いします。就職活動の際は、普段の生活とダイレクトにつながっていて、日常生活がそのままヒントになるような仕事がしたいと考え、流通やメーカー、マスコミなどかなり幅広い業種の企業を回りました。その中で、当時国鉄分割民営化で誕生して5年目を迎えたばかりだったJR東日本は、活力に溢れており、様々なことにチャレンジできる可能性に満ちていると感じて入社を決めました。

— いまのご自身のターニングポイントとなっているような印象的なお仕事はありますか?

これまでを振り返り、自身のターニングポイントとなったのは、入社7年目で担当した宣伝の仕事と、17年目で担当したダイバーシティ推進の仕事です。 宣伝の仕事で特に印象に残っているのは「ポケットモンスター・スタンプラリー」です。お客さまに山手線をはじめとする各駅を周遊していただき、駅に設置したポケモンのスタンプを集めていただくという、今でも子供に人気のイベントですが、1997年にこの第一回目の企画を担当しました。当時は一体どれほどのお客さまにご参加いただけるか想像もつかず、不安の中で苦労と試行錯誤を重ねながら企画を練り上げましたが、いざラリーがスタートすると、各駅のスタンプ台にはあれよあれよという間に数十メートルの行列ができ、山手線にはスタンプ帳を持った子供たちが溢れました。その様子を見たとき、鳥肌がたつほどゾクゾクしたことを今も忘れません。結局7日間で約10万人のお客さまにご参加いただき、テレビ局をはじめマスコミ各社が取材にきて、「社会現象」などともうたわれました。 独身だった当時はまさかその数年後に、自分も娘を連れてポケモン・ラリーに参加するとは思いませんでしたし、ましてやその後20年以上も「当たり前」のように続く夏休みの定番イベントになるとは思いもしませんでした。

— 達成感も大きかったでしょうね。

大きかったですね。仕事のやりがいや醍醐味を知った経験でした。今考えると、この経験がその後も育児をしながら仕事を頑張り続ける原動力になったのだと思います。 今でこそ女性は出産後も仕事を続けることは当たり前の時代になりましたが、当時はまだ結婚や出産を機に退職する女性がとても多かった時代でした。でも、「仕事って本当に面白い、頑張った分だけダイレクトに返ってくるんだ。簡単にやめたらもったいない。とにかくやれるところまで頑張ってみよう」と思えるようになりました。 若い時期に仕事に情熱を注ぎ、やりがいや達成感を味わう経験は、「あの時あれだけ頑張れたんだから自分はもっとできる」といった自信の「ものさし」となり、その後の会社人生に大きな力を与えてくれると感じています。

後輩たちの選択肢を増やしたい。

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— 育児休暇からの職場復帰はスムーズにいきましたか?

大変ではありましたが、上司や職場の同僚、家族をはじめ、周囲の多くの方々に支えていただいたおかげでなんとか仕事を続けることができ、今でも心から感謝しています。 2007年に人事部にダイバーシティ推進の専任組織を立ち上げることになり、出産・育児の経験もあったことから、その初代リーダーをアサインされました。これが私のもう一つのターニングポイントになりました。 実は、それまでずっと長い間、子供といつも一緒にいてあげられないことの罪悪感にさいなまれていました。母親が仕事を続けることで、子供にとって経済面以外にプラスになることはあるのだろうかと悩み続けていました。けれども、ダイバーシティ推進グループの課長になった時、当時10歳になった娘が、「お母さん、おめでとう!」と書いた垂れ幕のさがったくす玉の下で、スーツ姿ではにかむ私の絵を描いてお祝いしてくれました。その時、これまでの迷いがすーっと取れたような気がしました。 「恩送り」という言葉があります。お世話になった方々に直接恩返しはできないけれど、「一人でも多くの後輩女性たちが、育児と両立しながら仕事を続けていくことのできる会社にすることが、これまでお世話になった方々へのご恩返しになる」と思い、並々ならぬ情熱をもってこの仕事に取り組みました。 今は多くの女性たちが子育てをしながら溌剌と仕事を続けていますが、もしも以前の私のように悩んでいる女性がいたら、「母親が働いていても子供にとってプラスになることは必ずあるよ」と言って背中を押してあげたいです。

‐ダイバーシティ推進では、どのような取り組みをされたのですか?

当社のダイバーシティ推進の第一歩は、「女性社員の活躍の場の拡大」と「仕事と育児の両立支援」に向けた取り組みでした。というのも、今でこそ当社では7,000名以上の女性社員が鉄道現場をはじめとする様々な部署で活躍し、例えば山手線の車掌の4割は女性となっていますが、約30年前にJR東日本が誕生したときには、全社員数に占める女性社員の割合はわずか0.8%、700人にも満たないほどでした。365日休みなく早朝から深夜まで稼働している鉄道の現場で、女性社員の活躍の場を拡大するには、設備や制度の整備や風土醸成などいくつもの大きなハードルがあったのです。 例えば駅社員や電車の車掌・運転士などの仕事は、宿泊を伴う不規則な勤務形態で、特に朝晩のラッシュ時間帯に一番多くの人手が必要になります。ですから短時間勤務制度一つ導入するにおいても、デスクワークだけの企業とは違う苦労がありました。当時は現場から公募で集めたワーキンググループのメンバーとディスカッションを重ね、現場の状況を丁寧にヒアリングして打開策を協議するなどして、両立支援制度の拡充や、24時間保育が対応可能な事業所内保育所の開設などに奔走する毎日でした。 そうした努力の甲斐あってか、入社10年後の女性社員の定着率は、現在9割近くまで伸びています。後輩たちの人生の選択肢を増やすことができた喜びを感じます。

次の当たり前をつくろう。

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— 今後の目標を伺えますか?

当社を取り巻く経営環境は今激しい変革の時を迎えています。外部環境においては、さらなる人口減少やネット社会の進展、自動運転技術の実用化などにより今後鉄道による移動ニーズが減少する恐れがあります。更に内部環境においては、現在全社員数の3割弱を占める国鉄時代に採用された社員が、あと5年ほどの間に定年退職を迎えることとなり、社内では急激な世代交代が進み、技術継承が急務となっています。 先に発表した中期経営ビジョン「変革2027」では、こうした変化を逆にチャンスと捉え、一人ひとりが変革の担い手となって、果敢に新たな挑戦を続けていこうと社員に訴えかけています。 業務革新による更なる生産性向上や仕事の高度化、ダイバーシティ推進による社員の活躍フィールドの拡大、業務遂行体制や働き方の見直し、労働条件の向上など、社員が仕事を通じてより達成感や充足感を感じられるような様々な施策を、時間軸をもちながら精力的に実施していくことで、「変革2027」に掲げている「社員の働きがいの創出」と「社員と家族の幸福の実現」に寄与したいと考えております。

— 具体的にはどんな取り組みをしますか?

当社グループには、「世のため人のために働きたい」という高い志を持った優秀な社員がたくさんいます。しかしながら、鉄道は内部完結する仕事も多く、どうしても内向き志向になりがちだといわれています。こうした内向き志向を打破し、社員が自らの将来にむけて、より意欲的に仕事に向き合えるようにするために、例えば外部との人事交流や研修等のほか、自ら手を挙げて海外戦略や生活サービスなど新たな成長戦略にチャレンジできる制度の更なる活性化、より生産性の高い働き方への見直し等に力を入れます。また、ダイバーシティを一層推進し、多様な社員が意欲をもって活躍できるフィールドを更に広げ、個々の能力に合った育成プログラムやより柔軟な異動の在り方の検討などにも注力していきます。

— 最後に、学生にメッセージをお願いします。

これまでの自らの人生を振り返ると、自分の能力よりも少し上の仕事を任され、一生懸命頑張ってやり遂げることで人はクッと成長すると感じます。まずは目の前の仕事を好きになって、がむしゃらに頑張ってみる。そうすることでやりがいが見えてきます。問題解決力、リーダーシップ、交渉力、コミュニケーション力など、仕事に求められる能力は、皆仕事の経験を通じて学んでいくものです。たとえ自分が希望しない仕事に就いたとしても、無駄な経験など一つもないと思うのです。 「仕事の成果は能力、熱意、考え方の掛け算」であると言われます。いくら能力が高くても熱意がゼロなら成果は上がらない、ましてやマイナスの考え方では結果はマイナスになってしまう。 いつも笑顔を忘れず、明るくプラス思考で、高い目標と熱意をもって努力を惜しまないこと。そして周囲の方への思いやりと感謝の気持ちを忘れないことが、大切なのではないかと思います。 会社に入って仕事をする上では、きっと我慢を強いられることもたくさんあるでしょう。でも一人だけの力では決して成しえないような、大きな変革の実現にかかわる可能性もあります。 昨年度の当社の採用プロモーションで掲げたキャッチフレーズは「次の当たり前をつくろう」でした。自分が手掛けたその新たな仕事が、もしかしたら10年後には世の中の「当たり前」になっているかもしれません。 人生100年時代。学生の皆さんにはまだ、これまでの人生の3、4倍もの長い人生が残されていますが、「日日是好日」という言葉を贈ります。どうか一日一日を大切にすごし、働くことを通じてより一層充実した人生となるよう祈念しています。

— 本日は貴重なお話、ありがとうございました。