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OB/OGが語る

商社の枠を超えたビジネスへ挑む。再生可能エネルギー領域で広がる、稲畑産業の新規事業

専門商社をわかりやすく紹介する「専門商社の魅力とは!?」シリーズ。今回は、化学品分野を中心に事業を拡大する稲畑産業。インタビューしたのは、再生可能エネルギー領域で活躍する入社19年目と5年目の社員の方々。商社の枠を超えて、自ら新規事業を立ち上げたお二人に、詳しく話を聞いた。

企業紹介
1890年、フランスで染料技術を学んだ創業者の稲畑勝太郎が、京都で合成染料の輸入販売をする稲畑染料店を開業したことから歴史がはじまる。以来、情報電子・化学品・生活産業・合成樹脂の4つの領域に事業を拡大し、現在では海外に18カ国約60拠点を展開。これまでに取り組んできた「自動車分野」「ライフサイエンス・医療分野」「環境・エネルギー分野」へ引き続き注力するとともに、「農業を含む食品分野」への新たな展開も進めている。


人物紹介
稲畑産業株式会社
情報電子第三本部 第三営業部 大阪第二営業課 課長代理
宮本 忠明(写真:右)
2004年入社。1年目より合成樹脂分野に従事し、13年目で情報電子分野へ。太陽光発電システムを担当する中で新しい可能性を見出し、新規事業を立ち上げ。2022年、新会社を設立するとともに発電ビジネスをスタートさせる。

稲畑産業株式会社
情報電子第三本部 第三営業部 大阪第二営業課
大畑 祐貴(写真:左)
2018年入社。バイオマス発電関連の輸入販売に従事。自ら新規事業を提案し、4年目にして事業開発を経験。2022年2月、バイオマス発電の事業化を実現する。メイン担当者として、発電所の本格稼働に向けて邁進中。


発電設備を売るのではなく、発電所を運用するビジネスへ

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―――学生時代、どんな就職活動をされてこられたのか聞かせてください。


大畑:学生時代は工学部の電子工学科で、大学院まで進みました。就職先には、工作機械や産業用ロボットを製造する電気機器メーカーや自動車関連メーカーなども考えましたが、それではまわりの誰もが選ぶ道で面白みがないなと。もっと自分の専攻が珍しがられるような業界に行きたいと思ったんです。軸にしていたのは、若いうちからガツガツ仕事をまかせてもらえる会社。そこで、興味を持ったのが商社業界です。中でも、総合商社ではなく専門商社の規模感で活躍したいと思い、就職活動をしていました。

宮本: 僕はちょっと不真面目だったので、参考になるかどうか・・・(笑)。金融系、人材系、メーカー系など、ほとんどの業界において1社ずつ、興味を持った企業を受けました。ドイツに留学していた経験があったので海外で働くこともしてみたいと思い、商社業界、総合商社と、専門商社では稲畑産業しか受けていません。稲畑産業だった理由は、あいうえお順で一番最初に上がってきたから(笑)。偶然ではあったものの、話を聞いてみたらすごく良い会社だなと感じて、興味を持ちました。

―――きっかけはいろいろありますよね(笑)。最終的な入社の決め手は何だったのでしょうか。


大畑:専門商社でもいろんな企業を受けましたが、稲畑産業が一番自分を必要としてくれていると感じたからです。人事のトップの方から、大畑君だから来てほしいということを強く言ってもらえたことが大きかったですね。期待してもらえる環境の方が働きやすいなと思い、入社を決めました。

宮本:大畑は“鳴り物入り”の入社でしたからね。人事からトレーナーを任せると言われた時、すごい優秀な子を採用したから完璧にフォローするようにって、念を押されましたから。

大畑:それは全然知らなかったんですけど(笑)。身に余るお言葉です、、、

宮本:僕自身はいろんな業界を見ていく中で、そのほとんどがスペシャリストの道だなと思ったんです。今でこそ、スペシャリストを目指したいと思うこともありますが、当時はもっとオールラウンダー型に成長したかった。商社であれば偏ることなく全体的に関わることができるなと思い、方向性を定めました。そして、最初に内定をいただいた稲畑産業に行くことを決めました。

―――お二人の所属する「情報電子セグメント」は、どんな商材を扱う部署なりますか?


宮本:情報電子は3つの本部に分かれています。第一本部で主に扱っているのは、液晶・有機ELを中心としたフラットパネルディスプレイやLED 関連の部材。第二本部では、インクジェット、電子写真、3Dプリンターなどのデジタル印刷やイメージング関連の原材料。我々の所属する第三本部は、再生可能エネルギー関連、電池、半導体・電子部品、工業材料など、かなり幅広いビジネスフィールドを取り扱う部署になります。

大畑:第三本部の中でも3つに分かれていまして、私たちの所属している第三営業部は、主にエネルギー関連です。太陽光システムや水素エネルギー、バイオマス発電、蓄電池に関連した設備や材料、それを運用するための燃料、IOTシステムなどを取り扱っています。

―――お二人のこれまでのキャリア、現在の仕事内容について教えてください。


大畑:1年目はキッチン材料を輸入する業務を引き継ぎで担当していました。2年目から、生物由来原料を燃料としたバイオマス発電システム販売をメインに扱っています。ヨーロッパから発電設備を輸入し、補助金を使って発電事業を導入する日本の自治体向けに販売していたのですが、そのうち、自分たちで発電事業をした方が継続的に儲かるのではないかと思うようになって。発電設備を売る側でなく、運用する側をやりたいと上司に相談し、4年目から事業開発に取り組みました。その結果、実際に事業化を実現させることができ、複数社での共同出資でバイオマス発電所の開発が進んでいます。発電所の運転開始は、2025年の予定です。

宮本:入社から12年間は合成樹脂を担当していて、13年目に情報電子第三本部へ異動してきました。イギリスにある半導体のベンチャー企業に出資した直後だったので、2年間はそのフォローがメインでしたね。5年前から軸足を太陽光システムに移して、主に太陽光パネルの材料や製品を販売していました。ただ、在庫リスクを抱えないスタンスの稲畑産業では、パネルを売る仕事に限界があるだろうと思いはじめたんです。一番儲かるのは、発電所を保有して電気を売ること。そこで、稲畑産業の出資で太陽光発電所を保有する新会社をつくり、運用もすべて自分がやろうと動き出しました。コロナの影響で2年ほど遅れもありましたが、2022年末頃から太陽光発電ビジネスが始動します。


誰もやったことのない新規事業の立ち上げ、その苦労と面白さ

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―――お二人とも、それぞれの別の領域から自社で発電所を運用するビジネスに目を付けたということなんですね。新規事業の立ち上げは、社内でも多いのでしょうか?


宮本:大畑のように、若いうちから新規ビジネスを立ち上げるというのはなかなかないでしょうね。個人の能力があることはもちろんですが、事業化まで二人三脚でとことん付き合った上司もすごいなと思いますよ。

大畑:本当に上司には感謝しかないです。バイオマス発電事業を立ち上げる時、一番協力してくれたのが今の本部長なんです。その方のおかげもあって、すごいスピードで事業化まで実現できたと思います。

宮本:バイオマス発電という完全な新規ビジネス領域に、会社がブレーキを踏まなかったことも本当にすごいなと。4年前、私が新規事業にトライした時は結局だめだったんですよ。今は再生可能エネルギーの機運が高まっていることもありますし、会社として積極的に投資していこうという風土が醸成されているので、徐々に変わってきましたね。

―――新規ビジネスの立ち上げを経験されて、その難しさと楽しさの両方を聞かせてください。


宮本:自分がはじめた太陽光発電ビジネスは、1から会社を立ち上げて経営することになるので、それに伴う業務をすべて自分でやらなきゃいけないことがものすごく大変でしたね。会社設立の法律関係もそうですし、出資金の振り込み方、お金の借り方、税金の支払いまで。会社からのサポートもありますが、窓口は基本すべて自分。銀行や会計事務所との交渉など、一人で専門家と闘っていかなくちゃいけない。わからないことがあっても、社内で誰も答えを知らないから誰にも教えてもらえない。精神的にも時間的にも、これが一番しんどかったですね。

大畑:それ、すごくよくわかります。新しい取り組みが多く手探り状態だったので社内外の色々な人の助けなしでは厳しいですよね。僕は新規事業をはじめるにあたって、社内の理解を得るのが難しかったなと感じました。今まで輸入や輸出などの商社ビジネスがメインで、発電事業への投資の前例がなかった。そんな中で、本当に儲かるの?何でやるの?リスクは?と聞かれることに、納得して、応援してもらえるまで説明するのが難しくて。それでも、合理的な説明をするために法務、経理、資金、リスク管理など沢山の方々にご協力いただきました。なんとか営業部と管理部門が一体となり事業化できて、本当に嬉しかったですね。

宮本:楽しさで言えば、誰も答えを知らないので逆に自由だということですね。こういうことをやりますと言って承認をもらえたら、あとは個人の判断で動かすことができる。極端なことを言えば、運用をすべて自分でやる代わりに、価格や売り方も自分次第。当然責任は伴いますが、この大きな裁量権の中で事業を動かすことができるのは、楽しいですよ。

大畑:新規事業の立ち上げは自分が第一人者になるので、主体的に動けるのが嬉しいですね。5年目の社員にまかせてもらえるということもそうですし、動かすお金が大きいというのも、非常にやりがいを感じます。新しくはじめるバイオマス発電ビジネスが新聞に掲載されて、自分のしたことが世に出ていくのを実感した時にはとても感慨深かったです。

宮本:本当なら大畑のサポートもできたらよかったんですけど、お互い本当に余裕がなさ過ぎて・・・。もうちょっと手伝えたかなと。

大畑:今ならお互いにひとつ経験できたので、情報を共有しながらできることもありますし、今後に生かしていけそうですね。

―――稲畑産業で働くことによって身に付いたスキル、どんなものがありますか?


宮本:どこに放り込まれても何とかできる、という自信はつきましたね(笑)。

大畑:自分の担当するバイオマス発電事業に特化して言うと、金融系のスキルはものすごく身に付きました。金融法務、会計税務、事業投資に対するリターンの計算など、1から事業を立ち上げるすべての要素が必要になりますから。

宮本:自分の力で会社を経営するスキルは身に付きますね。新規事業立ち上げに関して言えば、会社に許可をもらいながら、出資してくれる銀行を探して、一緒につくってくれるパートナー、つくらせてもらえるお客様、支えてくれる保険会社を並行してすべて探さなくてはいけない。経営につながるすべてのシナリオを描いて実現する経験ができました。

大畑:電力ビジネスは特に、利害関係者が本当に多くなりますからね。その方々とうまく調整していく交渉力やコミュニケーション能力も必要な要素になるのかなと。

宮本:僕らがやろうとしている新規事業は、商社としてというよりも、どちらかというとプロジェクトマネージャーみたいな役割が強いですね。

―――そのほか、稲畑産業で働く魅力はどんなところにあると思いますか?


大畑:何でも自由にやらせてもらえるところですね。利益が出て、社会的意義があって、リスクがうまく分散されていたら何でもまずは聞いてもらえる。商社とか関係なしにやらせてもらえるのは、うちの良いところだなと思います。

宮本:企画立案から実行まで、一人でやらせてもらえることですね。熱意があり、理論武装さえしていれば、認めてくれる土壌があります。稲畑産業だからこそ、一人で突っ走っていけるというところはあると思います。

助け合う仲間であり、負けたくないライバルでもある


―――稲畑産業の組織風土についてはいかがですか?お互いのことについても、どう思っているのか聞かせてください。


大畑:風通しはめちゃくちゃいいと思いますね。ボードメンバーの方々でも一社員の話を親身になって聞いてくださる方が多いです。宮本さんには入社からずっと5年間トレーナーをしてもらって、仕事からプライベートまで色々相談させてもらっていました。年齢はひとまわり以上違いますけど、僕にとっては年の離れた兄貴みたいな存在です。

宮本:僕は昔から、後輩に教えるのが苦手なんですよ。正直ちょっと、めんどくさいなって思っちゃう(笑)。でも大畑は本当に優秀で。お互いに議論することもよくあります。どっちが正しいとかではなく、考え方の違いですね。僕はリスクマネジメントの思考がめちゃくちゃ強くて、いつでも最悪の場合を想定してしまうんですよ。ある時、大畑が提案してくれたことに対して、マイナスを探してしまう癖が出てしまって。そのとき彼は、「これだけのプラス要素があるのに、なんでマイナスしか見ないんですか」と。言われてみて、確かにそうだなと。こういうところが、老害と言われてしまうんだろうなって(笑)。一緒に仕事をするようになって、本当に僕自身の考え方も大きく変わりました。いい刺激を受けていますね。同じチームで助け合う仲間だけど、負けたくないライバルみたいな感じですかね。

―――では、お二人の今後の夢・目標について聞かせてください。


宮本:直近のことではありますが、再生可能エネルギー関連のプロジェクトをまとめる立場に就くことになりました。今までは目の前の目的に向かって必死に仕上げていくのが仕事だったわけですが、これからはもっと全体の中長期的なビジョンを立てていくことが求められます。今、稲畑産業は「情報電子」と「合成樹脂」の2本柱。そこに「エネルギー」がもう一つの柱になれるよう目指していきます。

大畑:この3年ぐらいの目標で言うと、ようやく事業化が決定したバイオマス発電所の運転開始に向けての業務と、更なる新しい発電所の事業化に向けて、必死にやっていきたいですね。一方で、バイオマス発電の燃料は国産木材、山林を守る整備のために間引きする間伐材を使用しているんです。今後、発電所をたくさん建てよう考えると、燃料供給してもらえる林業を活性化していく必要がある。商社としてあまり絡むことのない林業の方々と商社機能を最大限に生かした、コラボレーションを加速させていきたいですね。


――最後に、学生に向けて就活アドバイスをいただけますでしょうか。


大畑:興味のある会社があれば、そこで働く人に直接会ってほしいです。ネットの情報は結構偏った内容もあるので、一番リアルな情報を手に入れることが大事だと思います。そして、その会社に入ることを目的にするのではなく、入った後で自分に何ができるのかを想像してみてください。これまでの経験は活かせるだろうか、欲しいと考えているスキルは身に付くのか。会社の一部である社員の方と話をしながら、自分の将来像とマッチングすることができれば、入社後のギャップも減らせるはずです。自分らしい志望動機にもつながるので、きっと面接にもいい影響が出ると思いますよ。

宮本:偽ることなく、素のままで臨んでほしいですね。面接では求められた正解を答えるのではなく、ちょっと自信のないことでも、正直に自分の言葉で話をしてほしい。本音で話してくれる人の方が魅力的に見えますし、想いも伝わるんですよ。自分を偽ってしまうと、入社した後にストレスを感じることにもなりかねません。あまり気張らずに、ありのままで就活を頑張ってほしいと思います。

―――これから本格的に動き出す新規事業についても、期待しています。本日はお忙しい中、ありがとうございました!