不動産業界の仕組みとは?
不動産業界は、「建設」「販売」「賃貸」「管理」の4種類に大別できます。
実際に物件を建てる「建築」は、大規模であればデベロッパーが土地を仕入れてゼネコンが建設を主導します。個人の一戸建てなどはハウスメーカーが担当します。
実際に建築された物件を「販売」するのは、デベロッパー、ハウスメーカーといった作り手自身の場合と、住宅・マンションの販売に特化した住宅販売会社があります。
物件を「賃貸」するのは、賃貸不動産仲介会社という賃貸を専門とする会社が存在します。一人暮らしをされている方は、利用したこともあるでしょう。
マンションやビルに関して「管理」をする会社があります。
入居者の満足度を高めるために、建物の保守・管理サービスを提供しています。
不動産業界の業種一覧と主要企業
不動産業界には、役割や事業領域に応じてさまざまな業種が存在します。代表的なものとして
・デベロッパー
・ゼネコン
・ハウスメーカー
・賃貸不動産仲介業者
・マンション管理会社
などが挙げられます。
ここでは、それぞれの業種ごとの事業内容や特徴、主要企業について詳しく紹介していきます。
デベロッパー
デベロッパーとは、一言で言いますと「街や土地を開発する不動産会社」です。
由来は「Developer(開発者)」から来ていて、ディベロッパーとも呼ばれます。
例えば、以下のような事業内容があります。
①街の再開発
②大規模な住宅街造成
③マンション開発事業
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①街の再開発
「街づくりをしたい」とデベロッパーを志望している学生も多いのではないでしょうか?
街の再開発とは、シンボルとなるような商業施設や周辺の住宅開発、インフラ整備までを行なう事業のことを指します。
「ららぽーと」のような大型の商業施設をシンボルとしてつくることで、街の魅力をつくります。また、商業施設は周辺に住み人たちの生活インフラの役割も果たします。
シンボルとなるような商業施設の周辺に住宅を充実させることによって、街に根付く人を呼び込むことができます。
そして、交通の利便性を良くするためにインフラ(道路など)整備をすることによって、人々が訪れたい・住みたい街をつくることができるのです。
街づくりのような大規模な事業は国土に関わる事業なので、民間デベロッパーだけでなく、国が主導する公的デベロッパーとの協力も不可欠となります。
②大規模な宅地造成
大規模な宅地とは、簡単に言うと戸建ての家が集まっている状態を指します。
そして、「造成」という表現が使われているように、土地を一から整備することが多いです。
草っ原になっているところは、除草し、盛り土や切土をすることで建設に適した土地にしていきます。その土地に、戸建て住宅を建築し、モデルハウスを構えて販売をしていきます。
デベロッパーは、土地の開発から販売まで一気通貫で管理しています。
③マンション事業開発
マンション事業開発とは、言葉のままで、マンション一棟を建築し販売することです。
マンションの場合は、一棟で数十戸~数百戸という規模感になるので、上手くいけば収益面でも非常に規模の大きな事業です。
マンションだけを専門とする「マンションデベロッパー」というデベロッパーも存在しています。
デベロッパーの主要企業
三井不動産株式会社
三菱地所株式会社
東急不動産株式会社
住友不動産株式会社
東京建物株式会社
野村不動産株式会社 等
ゼネコン
ゼネコンとは「総合建設会社」のことを指します。不動産を「造る側」の企業であり、「建築を請け負う」ことが仕事となっています。
由来は「General Contractor(ゼネラル・コントラクター)」が省略されてできた言葉です。
ゼネコンは、建築をするにあたって発生する業務を取りまとめる存在です。
例えば、商業施設を建築する場合、基礎をつくる業者、電気を繋げる業者、内装をコーディネートする業者などと多岐にわたる業者が必要となります。
それらの業者をゼネコンが取りまとめて、管理することによってスムーズな建築が可能になるのです。
デベロッパーとゼネコンの違い
デベロッパーとゼネコンの違いを明確化すると、
デベロッパーは土地を仕入れ、その土地をどう開発するかを考えます。販売などのマーケティングも担当します。
ゼネコンはデベロッパーの構想を、図面に落とし込み、実際に建築する指揮を執ります。
つまり、デベロッパーは「企画」と「販売」を担当し、ゼネコンは実際の「建設」を担当しているのです。
とはいえ、大手のゼネコンともなると、デベロッパーと共に開発についての構想をすることも多いようです。
ゼネコンの主要企業
清水建設株式会社
株式会社竹中工務店
鹿島建設株式会社
大成建設株式会社
株式会社大林組 等
ハウスメーカー
ハウスメーカーとは、主に戸建住宅の設計から建築、販売までを手がける企業のことを指します。住宅の部材を工場であらかじめ大量に生産し、現場で効率的に組み立てる「プレハブ工法」を採用することで、品質の安定と工期の短縮を両立しているのが大きな特徴です。
また、商品開発やデザインの提案、さらには耐震性や省エネ性能の向上にも積極的に取り組んでおり、顧客の多様なニーズに応える住宅プランを数多く展開しています。
業務内容も幅広く、営業や設計、施工管理、アフターサービスなど多岐にわたります。 特に個人のお客様と向き合う機会が多いため、丁寧なコミュニケーションや信頼関係の構築が求められる仕事です。
ハウスメーカーの主要企業
大和ハウス工業株式会社
積水ハウス株式会社
旭化成ホームズ株式会社
パナホーム株式会社
タマホーム株式会社 等
賃貸不動産仲介業者
賃貸不動産仲介業者は、賃貸物件を探している個人や法人の顧客と、物件を所有するオーナーとの間に立ち、契約の成立をサポートする役割を担う企業です。
顧客の希望条件に合った物件を紹介し、内見の案内から契約手続き、入居までのフォローまでを一貫して行います。特に、対人折衝力や提案力は非常に重要で、物件の魅力をどう伝えるかが営業成果に直結します。
さらに、空室を減らすためにオーナーへコンサルティングを行うこともあり、単なる仲介にとどまらない提案力も求められます。未経験からでも始めやすい一方、成果主義の傾向が強いため、自ら考えて動ける主体性のある人材が求められる業種です。
賃貸不動産仲介業者の主要企業
株式会社アパマンショップリーシング
株式会社レオパレス21
大東建託株式会社
東急リバブル株式会社 等
マンション管理会社
マンション管理会社は、分譲マンションの共用部分や敷地の管理・運営を支える企業です。
建物の清掃や設備の点検、修繕計画の立案・実施に加え、管理組合の運営サポートや会計業務まで、幅広い業務を担っています。
住民が安心して快適に暮らせる環境を整えることが最も重要な使命であり、そのためには高いコミュニケーション力や調整力が欠かせません。また、建物の老朽化への対応や住民同士のトラブル対応など、課題を柔軟に解決する力も求められます。
大手不動産グループの傘下で安定した経営基盤を持つ会社もあれば、地域に根ざした企業も多く、働き方やキャリアの方向性も企業によってさまざまです。自分のライフスタイルに合った選択がしやすい点も特徴といえるでしょう。
マンション管理会社の主要企業
株式会社大京アステージ
日本ハウズイング株式会社
株式会社東急コミュニティー
三井不動産レジデンシャルサービス株式会社
三菱地所コミュニティ株式会社 等
不動産業界の現状・課題
不動産業界の現状や課題についてみていきましょう。
不動産業界の市場規模
不動産業界は景気や金利、人口動態などの影響を大きく受ける業界ですが、全体の市場規模としては安定した推移を見せています。新築住宅の着工数は減少傾向にあるものの、その一方でリフォームや中古住宅の流通、収益不動産への投資需要などが伸びており、業界の中での主力分野が少しずつ移り変わってきています。
特にここ数年は、空き家の増加や高齢化社会の進行といった社会課題を背景に、既存住宅の再活用やバリアフリー対応住宅へのニーズが高まりつつあります。また、不動産テックの導入や脱炭素化への対応も進み、単に「物件を売る・貸す」だけではない、多角的なビジネス展開が求められる時代になっています。
今後も人口減少や都市再開発などの動きに注目しながら、業界全体は緩やかに進化していくと見られています。
不動産業界の抱える課題
◾️カーボンニュートラル対応と老朽建築の省エネ化
脱炭素社会の実現に向け、不動産業界でも環境対応の重要性が増しています。特に築年数の古い建物については、断熱性能の強化や省エネ改修が求められていますが、コストや技術的なハードルが高く、対応が進んでいないケースも多くあります。今後は、持続可能性を意識した建物管理や開発方針への転換が企業に求められます。
◾️住宅ニーズの多様化と供給体制の変化
少子高齢化や共働き世帯の増加を背景に、住宅選びの基準が「広さ」より「立地」や「生活のしやすさ」へと変化しています。こうしたニーズに応えるには柔軟な設計や中古住宅の活用が求められますが、従来の大量供給型モデルから脱却できていない企業も多く、需要とのギャップが大きな課題となっています。
◾️人手不足と建築コストの高騰
建設現場では職人の高齢化と若手人材の不足が深刻化しており、同時に資材価格や物流費の上昇によって建築コストも高騰しています。こうした背景から、特に低価格帯の住宅を安定的に供給することが難しくなっており、企業の採算性や価格競争力に影響を与えています。
不動産業界の今後の動向
不動産業界の今後の動向には、下記のようなトレンドが注目されています。
・少子高齢化による住宅市場の規模縮小
・空き家の増加に対する対応の必要性
・不動産投資市場の拡大
・インバウンド投資の拡大
これらのトレンドについてみていきましょう。
少子高齢化による住宅市場の規模縮小
今後の不動産業界において大きな影響を与えると見られているのが、少子高齢化の進行です。
人口の減少に伴い、住宅を新たに必要とする世帯そのものが減っていくため、国内の住宅需要は長期的に縮小していくと予測されています。特に地方では空き家が増加し、地域によっては市場そのものが成立しにくくなるケースも出てきています。
こうした環境下では、新築住宅の販売に頼るビジネスモデルは限界を迎えつつあり、今後は既存住宅のリノベーションや不動産の再活用、さらには高齢者向け住宅やコンパクトな都市型物件など、需要の質に合わせた戦略が求められていくでしょう。
空き家の増加に対する対応の必要性
全国的に空き家の増加が深刻な社会課題となっています。人口減少や高齢化が進むなか、相続後も住まわれずに放置される住宅が年々増えており、治安や防災の観点からも対応が急がれています。
不動産業界としては、こうした空き家を有効活用する新たなビジネスモデルが求められており、リノベーションによる再販、賃貸活用、地域活性化に向けた用途転換など、多様な取り組みが始まっています。
今後は行政との連携や法制度の活用も含め、空き家問題にどう取り組むかが、企業の姿勢や成長戦略を左右する重要なテーマになっていくでしょう。
不動産投資市場の拡大
近年、不動産を「住まい」ではなく「資産」としてとらえる動きが加速しており、不動産投資市場が拡大を続けています。背景には、低金利環境が長く続いていることや、年金不安などから安定した収益源としての不動産に注目が集まっていることが挙げられます。
国内ではJ-REIT(不動産投資信託)や私募ファンドを通じた投資が活発化し、オフィスビルや物流施設、ホテルなど多様な物件が対象となっています。不動産会社にとっては、開発や管理にとどまらず、投資家向けの提案力や運用スキルがより重要になっており、業界のビジネスモデル自体も変化しつつあります。
インバウンド投資の拡大
外国人投資家による日本の不動産への関心が年々高まっており、インバウンド投資の拡大が注目されています。背景には、円安傾向や海外に比べて安定した不動産価格、日本の政治・経済の信頼性などがあり、とくに都心部や観光地のホテル、商業施設などへの投資が活発です。
今後はこうした海外資本の流入によって、大型再開発や都市の国際化がさらに進むと予想されます。不動産企業にとっては、英語対応やクロスボーダー取引の知見、国際的な価値基準への理解などが求められ、グローバルな視点での対応力が重要になってきています。
不動産業界における仕事内容
生き馬の目を抜く世界で、多種多様な企業がしのぎを削る不動産業界には、さまざまな仕事内容があります。
・営業職
・企画開発職
・物件管理職
・事務職
上記の4つの仕事内容について解説します。
営業職
不動産業界の営業職は、個人や法人の顧客に対して物件の提案や契約を行う仕事です。
例えば、住宅販売の営業であれば、来店したお客様の希望条件をヒアリングし、物件の内見に同行、契約手続きまで一貫してサポートします。法人向けの営業では、オフィスや店舗用の物件紹介、賃貸条件の交渉、契約後のフォローなども担当します。
人と接する機会が多いため、信頼関係の構築やニーズを汲み取る力が重要です。成果が数字に表れやすい仕事である一方、粘り強さや丁寧な対応も欠かせません。未経験からでも挑戦しやすい職種の一つです。
企画開発職
企画開発職は、新たな土地や既存物件に対して、どのような建物や施設を建てるかを企画し、事業として成り立たせる役割を担います。
例えば、駅前の空き地に商業施設やマンションを建てる際、周辺のニーズ調査、収支計画の作成、設計会社や建設会社との調整、行政との折衝などを一貫して行います。
アイデアを形にする仕事であると同時に、綿密な数字の検証と多くの関係者との連携が必要となるため、論理的思考力と調整力が求められます。まちづくりに関わるやりがいの大きい職種です。
物件管理職
物件管理職は、マンションやアパート、オフィスビルなどの建物が安全・快適に利用され続けるよう、維持・運営を行う仕事です。
具体的には、設備の定期点検や修繕対応、清掃業務の手配、入居者からの問い合わせ対応、オーナーへの報告業務などを担当します。また、空室を減らすための提案や、トラブル発生時の迅速な対応も重要な役割です。
建物に関する幅広い知識に加えて、人と接する機会も多いため、技術的な理解と丁寧なコミュニケーション力の両方が求められる職種です。
事務職
不動産業界の事務職は、営業や管理、開発などの部門をサポートするバックオフィスの役割を担います。
具体的には、契約書や重要事項説明書などの書類作成、データ入力、物件情報の更新、電話・来客対応、経理処理など、多岐にわたる業務を行います。営業担当がスムーズに動けるよう、社内外とのやり取りを調整したり、顧客対応の一部を担ったりすることもあります。
正確さや丁寧さが求められる一方で、チームで支え合う姿勢や、コミュニケーション能力も大切にされる職種です。
【就活生向け】不動産業界の志望動機例
◾️例文①
私は「住まい」が人の暮らしに与える影響の大きさに興味を持ち、不動産業界を志望しました。大学時代に一人暮らしを始めた際、担当してくださった営業の方の丁寧な対応に安心できた経験から、私も人の生活を支える仕事がしたいと思うようになりました。顧客の立場に立って物件を提案し、信頼関係を築くことで、人の人生に前向きな影響を与えられる仕事に魅力を感じています。
◾️例文②
まちづくりに携わりたいという思いから、企画開発職に関心を持ちました。人々の暮らしや地域のニーズを反映した空間づくりに携わることで、形として長く残る仕事ができる点に惹かれています。
◾️ポイント
不動産業界の志望動機では、「暮らしへの関心」「人生に関わる仕事への共感」「空間づくりへの想い」など、具体的な経験や視点と結びつけて語ることが大切です。業種や職種ごとの視点を意識しましょう。
不動産業界に向いている人の特徴
不動産業界に向いている人には、下記のような特徴があるといわれています。
・好奇心旺盛で勉強好き
・コミュニケーションが得意
・情報感度が高い
これらの特徴についてみていきましょう。
好奇心旺盛で勉強好き
不動産業界は、住宅や土地だけでなく、法律、税制、金融、建築、都市計画など幅広い知識が求められる業界です。物件の価値や魅力は常に変化しており、最新の制度改正や市場動向にも敏感である必要があります。
そのため、新しいことに興味を持って自発的に学び続けられる人は、大きな武器になります。特に「なぜこの立地が人気なのか」「どんな空間が求められているのか」といった疑問を持ち、調べたり人に聞いたりする姿勢がある人は、仕事を通じてどんどん成長できるでしょう。
コミュニケーションが得意
不動産業界では、個人や法人のお客様、オーナー、建設会社、設計事務所、金融機関など、さまざまな立場の人と関わる機会が多くあります。営業職はもちろん、企画や管理の仕事でも、相手の意図をくみ取って丁寧に対応する力が欠かせません。物件を紹介する際も、ただ情報を伝えるだけではなく、相手の不安や要望を引き出し、最適な提案をする必要があります。
話すことが得意な人だけでなく、人の話をきちんと「聴ける」人も、この業界では重宝されます。信頼関係の構築が成果につながる仕事です。
情報感度が高い
不動産業界では、社会の動きや経済の流れが物件の価値や需要に直結します。
例えば、再開発のニュースや金利の変動、法改正など、日々変わる情報に敏感であることは大きな強みです。こうした変化を早くキャッチし、自分の仕事にどう活かすかを考えられる人は、顧客にも的確な提案ができるでしょう。
情報を集めるだけでなく、その背景を読み解く力や、複数の情報を組み合わせて判断できる柔軟性も求められます。新聞やニュースを見る習慣がある人は、業界との相性が良いかもしれません。
おわりに
不動産業界は、人々の暮らしや都市の発展に深く関わるダイナミックな業界です。
時代の変化とともに求められる役割も広がり、住宅、投資、街づくりなど活躍のフィールドは多岐にわたります。将来に向けて課題もありますが、それをチャンスととらえて成長していける柔軟さを持つ業界でもあります。
自分の関心や強みがどこに活かせるかを見極めながら、ぜひ前向きにチャレンジしてみてください。
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