商船三井とは
商船三井は、正式名称は株式会社商船三井といい、日本郵船株式会社、川崎汽船株式会社と共に日本における三大海運企業の一つです。1942年に三井船舶株式会社として設立され、大阪商船との合併を経て、現在の株式会社商船三井という名称となっています。
また、現在のように国民の観光が一般的でなかった1912年に、大阪~別府間を結ぶ航路を開設するなど、観光開発にも貢献してきたという経緯があり現在に至ります。現在は、フェリーを使った観光プランが充実しており、幅広い客層から指示されているといえるでしょう。
ここでは、海上輸送や旅客輸送を主な事業として成長を続けている商船三井について、事業内容や業界の動向などを理解し、OB訪問に向けて基本的な知識を身につけておきましょう。
企業概要
商船三井は、日本国内でも有数の大企業の一つで、東証一部上場しているということもあり広く知られています。海上輸送や旅客輸送を主な事業としている商船三井ですが、具体的にどのような事業内容を行っているのでしょうか。
事業内容
商船三井では、旅客輸送だけでなく、液化天然ガスを運ぶLNG船や原油を運ぶタンカーなど、さまざまな船舶を開発し運用しています。
ドライバルク船サービス
ドライバルク船サービスでは、鉄鉱石や穀物、木材チップ、塩などの私たちの生活には欠かすことができないさまざまな資源を輸送しています。このような資源は、残念ながら日本国内だけの供給だけでは間に合っておらず、そのほとんどを海外からの輸入に頼っているのが現状です。
また、輸送する資源ごとに特性のある専用船を設計することによって、小型船から大型船まで寄港する港の規模にも合わせた設計で作られています。
さらに、世界的に環境問題が深刻化している中で、重油に比べて環境に優しいといわれているLGNを燃料として使用することによって、環境問題にも積極的に取り組んでいるといえるでしょう。
油送船サービス
油送船サービスでは、世界各国のエネルギー需要に伴い、石油を始めとする液体貨物を輸送するプロダクトタンカー、液体化学品を輸送するケミカルタンカー、環境に優しいとして注目されているメタノールを輸送するメタノールタンカーなど、用途に応じたさまざまな専用タンカーが活躍しています。
また、商船三井のグループ会社にタンカーに特化した管理会社を設けることによって、タンカーの船舶管理を始め運行や荷役のノウハウや船員教育などを実施するなど、専門的な教育システムが整備されています。
LNG船サービス
LNG船サービスでは、日本だけでなく正解のエネルギー需要としての大部分を占めているLNG(液化天然ガス)などのエネルギー輸送を目的としています。
LNGは、環境に優しいエネルギーの一つとして世界各国から注目されており、商船三井では、東京、ロンドン、香港、ジャカルタ、マスカット、アルズーに拠点を置いて、高度な輸送技術のもとで運航されています。
また、「ヤマルLNGプロジェクト」という北極圏における未発見天然ガス資源の輸送手段に、商船三井が参入し、砕氷船を導入したことによってその輸送が可能となり、2018年から導入されています。
海洋事業サービス
海洋事業サービスでは、これまでのエネルギー輸送のノウハウを活かして、「浮体式LNG貯蔵再ガス化設備」や「浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備」などの海洋事業を展開しています。
これらの技術は、2013年にトルコにおいて世界最大の浮体式LNG貯蔵再ガス化設備のプロジェクトに着手し、2017年にはインドでのプロジェクトに参画することが決定しています。
自動車船サービス
自動車船サービスでは、欧米諸国を始めとする先進国を始め、自動車メーカーから世界各国への輸送手段として質の高いサービスを展開しています。この事業は、1965年に日本で初めて自動車船を就航させたのを皮切りに、当時の1,200台収容から、現在ではコンパクトカーであれば6,800台を輸送できる程に進化しています。
また、商船三井の自動車船は、「MOL ACE」というブランド名が刻まれており、自動車輸送のパイオニアとして世界各国で親しまれているという経緯があります。
コンテナ船サービス
コンテナ船サービスでは、世界各国の経済が目まぐるしく進化する中、工業製品を始めとするさまざまな製品を輸送しています。
2018年には、商船三井、日本郵船、川崎汽船の3社が定期コンテナ船事業を統合し、「Ocean Network Express」という名称でサービスを開始しています。このサービスは、世界最大級の超大型コンテナ船を始めとする240隻で90カ国以上の範囲で運航されています。
ターミナル・サービス
商船三井では、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸の5カ所を拠点として、コンテナターミナルを運営しています。ターミナル・サービスでは、環境や安全に配慮しながら、自動車船を始めとする在来貨物船の荷役サービスを担っています。また、アメリカ、ベトナムなどの海外の8カ所においてもターミナル・サービスを運営しています。
ターミナル・サービスの新たな取り組みとして、荷役機器の電動化やハイブリッド化を推進しており、より環境に優しく安全な運営に努めています。
ロジスティクス・サービス
ロジスティクス・サービスでは、商船三井のグループ会社を含む国内外224カ所を拠点とした物流事業を展開しており、航空、海上、陸上などのさまざまな輸送手段におけるノウハウを活かして、検品、倉庫保管などの物流におけるさまざまなサービスを担っています。
また、2017年にはケニアに支店も設け、今後、経済成長が見込まれているアフリカ圏における物流サービスの拠点としています。
さらに、重量物や大型貨物輸送に関わるあらゆるニーズに応えるために、商船三井では、2015年に「MOL」というブランドを立ち上げ、輸送業務が円滑に進むようなサービスを提供しています。
客船サービス
客船サービスでは、ワンナイトクルーズから長期間のクルーズまで、さまざまなテーマに富んだサービスを展開しています。船内では、ゆったりと過ごすことができるような配慮や寄港地の特産品を使った料理などを提供しており、船の旅ならではのサービスを受けることができます。
また、クルーズは客船「にっぽん丸」が運航しており、公式ホームページでは、各フロアや施設を360度のカメラ映像で楽しむことができる「船内ツアー」のページが設けられています。
フェリー・内航サービス
フェリー・内航サービスでは、カジュアルクルーズをテーマとして、新造フェリー「さんふらわあ ふらの」や名門大洋フェリー「フェリーおおさかⅡ」などを中心に運航しています。これらのフェリーは、気軽な船旅を楽しめることを目的としており、年間110万人以上が利用しており、大浴場やレストランなどの施設が設けられています。
関連事業サービス
関連事業サービスでは、巨大船や危険物積載船が入港する港において、船舶を安全に接離岸させ、進路警戒などのサポートをしています。特に近年では、LNGなどのエネルギー輸送量が増えたことによって、輸入基地の新説などのニーズが高まったため、専門的な質の高い技術が求められているといえるでしょう。
また、主に海運事業を展開している商船三井ですが、これまでの信頼やノウハウを活かして東京や大阪などの主要都市圏において、オフィスビルやホテルビルなどを所有しています。
技術開発
日本国内だけでなく、世界各国の環境問題が深刻化している中で、環境に優しい燃料を使用するなど、さまざまな分野においてより高度な技術開発が活発化しています。
商船三井では、大型船舶における最大50%の省エネを目指す「ウィンドチャレンジャー計画」の参入や、環境に優しい燃料として注目されているLNG燃料ダグボートを開発するなど、環境問題に対する技術開発に積極的に取り組んでいます。
過去3年間の売上/利益推移
これからは商船三井の、過去3年間の売上と利益推移をみていきます。データは下記のサイトを参照しましたが、営業利益率は計算した後で、端数を切り捨てしています。
(単位/億) | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 |
売上 | 17,122 | 15,043 | 16,523 |
営業利益 | 23 | 25 | 226 |
当期利益 | -1,704 | 52 | -473 |
営業利益率 | -9% | 0.3% | -3% |
商船三井の公式ホームページ上で公開されている損益状況を参考にしています。また、営業利益は、小数点以下を四捨五入して算出しています。
この表からわかるように、商船三井は2014年以降、営業利益が黒字となっており過去5年間を通して大きな変動がないということがわかります。2017年には、貿易事業が伸びたため、一見回復傾向にあるようにみえますが、日本を始めとする世界各国の世界情勢に左右されやすく、不安的であるといえるでしょう。
次年度の戦略
商船三井は、昨今の世界情勢に少なからず左右されながらも、2017年度には貿易の伸び率が上昇しています。また、2018年からは、日本郵船、川崎汽船と共に定期コンテナ船事業を統合し、「Ocean Network Express」としての新事業を開始しており、より質の高いサービスを世界に届けることをモットーとしています。
さらに、創業当初からこれまでの期間において、時代と顧客のニーズを先取りした戦略で周囲と差をつけてきた商船三井は、LNG船を始めとする専門船などの得意分野を強化しつつ、総合力を発揮していくことを目標に掲げています。
2017年度からは、経営計画を策定し、商船三井の企業として10年後にありたい姿や、それを達成するための戦略などが詳細に定められています。これには、日本だけでなく世界各国の顧客から、使い勝手がよくストレスフリーなサービスを提供することや、いつも顧客に寄り添い、強くしなやかな存在であることを目標に掲げています。
2018年の商船三井に関するトピックス
商船三井は、原油タンカーやLNG船などエネルギー資源の輸送から、カジュアルクルーズなどの観光産業まで幅広い分野で活躍しています。
このようにグローバルに事業を展開する商船三井は、日本国内だけでなく、世界各国が注目しているといっても過言ではありません。ここでは、2018年における商船三井に関する記事をいくつかご紹介していきます。
「グリーン社債」発行で、積極的に環境改善に尽力
「グリーン社債」とは、日本を始めとする世界各国の環境問題が深刻化している中で、環境改善に取り組む事業への資金を調達するために発行される債券のことです。商船三井では、このグリーン社債を個人を対象として、「商船三井ブルーオーシャン環境債」という名称で発行する国内初の取り組みを行っています。
このような取り組みの背景には、消費者に商船三井が行っている環境活動についてより多く知ってもらうことを目的としています。「商船三井ブルーオーシャン環境債」は、発行年限5年の無担保で、50億円の発行額となっています。
お得な船旅を展開!「フライ&クルーズ」とは?
「フライ&クルーズ」とは、港まで飛行機で行き、その後クルーズの旅を楽しむことができるプランで、商船三井では2006年からサービスが開始されています。近年ニーズが高まっているクルーズですが、日本一周や世界一周などその種類はさまざまです。
また、このようなクルーズは費用や時間がかかってしまうイメージがあるため、なかなか気軽に踏み出せない人も多いかもしれません。しかし、フライ&クルーズでは、週末の2泊3日からの短い期間でクルーズを楽しめるプランが盛りだくさんで、船室や施設なども質が高いことが魅力の一つです。
プーケットのフライ&クルーズでは、4泊6日で10万円代からという価格設定なので、飛行機と船を利用してリゾート気分も味わうことができます。
フルコンテナ船就航50周年を記念して企画展を開催
日本でフルコンテナ船が初めて就航してから、2018年で50周年を迎えます。この記念イヤーに、横浜市で「ならんで積んで半世紀~コンテナ船の歩み~」という企画展が開催されました。日本で初めて就航したフルコンテナ船は「箱根丸」で、コンテナの規格も世界共通のサイズで造られています。
企画展では、100分の1のサイズに縮小された箱根丸の展示や日本で初めて神戸港で導入されたコンテナクレーンなどの模型も展示されています。
商船三井|業界の動向
OB訪問をするにあたって、企業の事業内容や経営方針を把握するだけでなく、事前に企業が属する業界の動向を知ることは重要だといえるでしょう。ここでは、商船三井に関する業界の動向を順に解説していきます。
海運業界の業績推移
海運業界は、世界各国で物資などの輸送手段として古くから人々に利用されてきたという経緯があります。輸入に頼っている日本にとっては、エネルギー資源の輸送など、なくてはならない業界の一つであるといえるでしょう。
また、今後の経済成長が見込まれるアフリカ圏などにおいても、海運業界のニーズが高まっているといえるでしょう。
近年の燃料価格高騰が経営に打撃
海運業界において、燃料価格が高騰すると、残念ながら輸送するだけで大幅にコストがかかってしまうため、企業全体の経営に大きな負担となってしまうのが現状です。
また、世界各国が環境問題の改善に積極的に取り組んでいる中で、海運業界も環境に優しい性能の機材を導入するなど、高い質の性能を保ちながら環境に配慮することが必然となっています。
商船三井へOB訪問に行く前に準備すべき3つの項目
商船三井は、さまざまな新卒就職人気企業ランキングに毎年ランクインするなど、人気のある企業の一つです。ここでは、商船三井へOB訪問に行く前に準備すべき3つの項目を順に解説していきます。
日本の海運業界を牽引する他の2社と比較しておこう
同じ海運業界といっても、社風や経営方針なども企業によってさまざまです。商船三井は、日本郵船株式会社、川崎汽船株式会社と共に、日本における三大海運企業の一つです。商船三井にOB訪問に行くなら、他の2社の特徴などを理解しておき、商船三井のメリットやデメリットを研究しておくとよいでしょう。
関連会社をリサーチしておこう
商船三井は、国内外に約450社の関連会社を保有しており、不定期船を始めとする数多くの事業を展開しています。このような関連会社について事前にリサーチしておくことによって、商船三井の企業としての将来性などを知るきっかけとなることでしょう。
また、最近では、ビルなどの不動産管理サービスや国際物流・貿易業界に特化した転職支援サイトを運営するなど、幅広い分野での事業を手掛けています。国際物流・貿易業界に特化した転職支援サイト「商船三井キャリアサポート」では、業界未経験でも応募できる求人の紹介や、キャリアアップのための研修や講座などのサポートも実施しています。
企業としての社会貢献について知ろう
現在、日本では、企業による「CSR」という活動が注目されており、営業利益だけを目的とするのではなく、環境保全活動やボランティア活動、各種寄付活動などの社会貢献を積極的に行っている企業が急増しています。商船三井では、CSRに賛同し、これらの活動を通して成長する企業であることを目指しています。
商船三井では、CSR委員会、安全運航対策委員会、コンプライアンス委員会の3つの委員会にて、CSRに関する方針や対策を審議することとしています。また、人権と労働に関するコンプライアンス規定を定めており、人権意識の定着やハラスメントの防止にも積極的に努めています。
OB/OGへの質問を準備
実際にOB訪問をした時に、企業の取り組みや社風、施設に関することなどさまざまな疑問が浮かぶこともあることでしょう。しかし、事前に質問内容を準備しておくことによって、OB訪問の間に疑問が解消されたり、聞き逃しを防ぐ効果も期待できます。
海運業界で働くことに関する質問
海運業界では、営業、管理、技術などの陸上職の他に、航海士、機関士、通信士などの海上職の職種があります。
このように、数多くの職種で成り立っている海運業界ですが、勤務場所などもさまざまでコミュニケーションがどのようにとられているのか疑問に感じている人もいるのではないでしょうか。海運業界で働く数多くの職種に関する質問例は以下の通りです。
- 職種間におけるコミュニケーションの取り方や、海運業界で働く上で職種別のやりがいはどのような時に感じますか。
海運業界は、日本国内だけでなく世界各国に渡って事業を展開しているため、語学力はもちろん必要だといえます。しかし、企業を円滑に運営していくために、職種間のコミュニケーションは欠かせないといえるでしょう。また、海運業界で働いているからこそ感じるやりがいは、企業人としてのモチベーションに繋がります。
社員への教育制度などの整備について
多くの企業では、社内外のセミナーや勉強会に積極的に参加できるような体制が整備されているところも増えつつあります。社員への教育制度などの整備についての質問例は、以下の通りです。
- 英語以外のコミュニケーションスキルを身につけるにあたって、企業のサポートや検定などの推進はどのような体制になっているのでしょうか。
世界各国で活躍している企業にとって、英語だけでなく外国語のコミュニケーションスキルは必須といえるでしょう。また、生涯学習が叫ばれる中、与えられた業務だけをこなすのではなく、スキルアップすることが自信に繋がっていくといえるでしょう。
求められる人物像について
どのような企業であっても、社風や経営方針、業務内容などによって求められる人物像がイメージされていることがほとんどです。インターネットや企業のパンフレットだけでは把握することが難しいような、求められる人物像などの選考に関わる質問例は以下の通りです。
- 社内外の関係者と円滑なコミュニケーションスキルが必要であることは承知していますが、どのような精神力やビジョンを持った人物が求められますか。
このような質問は、自分と企業の価値観を知ることによって、企業に就職して働く自分を想像できたり、自分に合っているのかを判断する材料となることでしょう。
商船三井は自律自責型の要素を持つ人材を求めている
商船三井は、Challenge、Honesty、Accountability、Reliability、Teamworkという5つの価値観を共有し、企業の強化や成長を高めていくことを目的としています。
このような言葉の意味から、高い目的意識を持ちつつ、難題に直面しても常に前向きな姿勢で解決に取り組んでいくような、自律自責型の要素を持ち合わせている人材を求めているといえるでしょう。
まずは、商船三井の事業内容や経営方針などを理解して質問内容を事前に整理しておくことで、有意義なOB訪問を実現することができることでしょう。