JTBについて
JTBは2019年度の就職人気企業ランキングでも、堂々と総合第10位に入る人気企業。JTBグループは一般に旅行業界の会社として知られていますが、それ以外にも商事会社、出版、そしてホテル業界など幅広く運営している大企業です。
また旅行業界のみに限っても、平成28~29年度の官公庁の旅行取扱高ランキングでは堂々の第1位。ライバル会社であるHISや日本旅行などを抑え、1兆4,771億円という素晴らしい取扱高です。
この記事ではOB訪問を実りあるものにするために、JTBの企業情報や最新のトピックス、業界動向の他、OB訪問前に準備しておくべき内容についてみていきましょう。
企業概要
JTBが設立されたのは1963年。それほど古い企業ではないのかと思う人もいるかもしれませんが、創立自体は1912年にジャパン・ツーリスト・ビューローとして始まっています。
当初は外国人の誘致を目的としていた会社でしたが、徐々に日本の国内旅行業も手がけ始めました。その当時はまだ旅行会社というよりは交通会社としての役割が大きかったようです。
現在ではJTBといえば旅行会社として知られていますが、実はツアーや旅行セットなどを手がけ始めたのはJTBの歴史からすれば最近のこと。そして実際にJTBという企業名と共にスタートしたのは1988年からです。
企業規模も拡大し、交流創造事業をドメインとして旅行事業の他、商品販売やコンサルティング、出版・広告、コンピューターによる情報処理事業、地域交流ビジネス、通訳・翻訳、ホテル業、旅行・観光業のセミナー開催や指導など幅広い分野に乗り出しています。JTBは枠にとらわれず成長を続けている企業だといえるでしょう。
事業内容
JTBグループは幅広い分野で事業を行っているので、それらをすべて把握するのは困難かもしれません。しかし、ある程度の大枠を知っておかなければ、OB訪問の際にも本気度を疑われてしまうもの。自分がどのような分野で、どのような活躍をしたいのかを見つめ直すきっかけにもなるので、しっかりと事業内容を把握しておきましょう。
旅行事業
個人を対象にした旅行商品の販売チャンネル(店頭、提携販売、コールセンター、Web)を持ち商品企画に取り組んでいるだけではなく、法人を対象にした推奨・招待旅行、視察・研修旅行、スポーツ観戦旅行、教育旅行、国際交流などのサービスも展開しています。
また、旅行関係の商品開発や企画運営に力を入れるのはいわずもがなですが、旅館やホテル、鉄道会社、航空会社などの事業パートナーとの連携も大切にしているのが特徴です。
地域交流事業
地域や地方が抱えるさまざまな問題にも取り組んでいます。地域交流事業は第1次・2次産業の活性化や商業の活性化を目指す地域マーケティング事業と、環境問題の解決や高齢化進展への対策をめざす地域マネジメント事業に大きく分かれます。
問題点を把握した上で観光戦略の立案をし、地域プロモーションやイベント、旅行商品などによる創客を目指します。
コミュニケーション事業
組織のコミュニケーションを円滑にするためのサーベイや、人材育成などのイベント、ビジネスイベントの企画運営や、国債・学術会議などの運営、株主総会企画の運営、インフラ事業などさまざまなコミュニケーション事業に取り組んでいます。
人々が抱える多種多様なニーズや課題に対し、プロフェッショナルが集結してソリューションを提供します。
総務系ソリューション事業
自社従業員の労働環境マネジメントや生産性アップを目指す事業。総務・人事系の課題に強く、福利厚生代行サービスやモチベーションをアップするプログラムなどを考案しています。CRM支援の他、交通手配や旅費精算、出張に関わるワークフローなどもこの事業で行っています。
グローバル事業
JTBのグローバルネットワークは巨大です。その地球を舞台にした「交流」を力に変え、世界中の地域と地域を結ぶ事業を請け負っています。それは、旅行に関するものだけではありません。
グローバル法人事業では、産業見本市や国際会議までを一手に手がけています。またBTMでは企業の出張やミーティングを。グローバル個人事業では世界中に点在する個人のお客様へ、さまざまな販売チャンネルを使用してサービスを提供。DPSでは現地発着ツアーの拡充などにも取り組んでいます。
プラットフォーム・シナジー事業
さまざまな業務を支えるには、教育研修や人材派遣、情報システムなどが欠かせません。それらを専門的に取り扱っているのが、プラットフォーム事業とシナジー事業です。
プラットフォーム事業では、会計や総務業務、海外アシスタントサービス、不動産管理、旅行関連情報などを中心に。そしてシナジー事業では、JTBの旅行情報誌「るるぶ」などの出版、所持、金融などをメインに各種サービスを展開しています。
スポーツ関連事業
スポーツ観戦スタイルの提案など、スポーツに関する事業に取り組んでいます。東京2020のオリンピック・パラリンピック競技大会のオフィシャルパートナーとなっているので、今後パラリンピック競技の体験イベントツアー実施などのさまざまな取り組みが期待されています。
訪日インバウンド事業
訪日外国人を呼び込むことに関する事業を行っています。外国人が日本で快適に過ごすことができるための受け入れ環境の準備や、訪日外国人向けの旅行商品の企画販売、インバウンドのマーケティングから戦略までの一切合切を提案しています。
過去3年間の売上/利益推移
これからはJTBの、過去3年間の売上と利益推移をみていきます。データは下記のサイトを参照しましたが、営業利益率は計算した後で、端数を切り捨てしています。
(単位/億) | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 |
売上 | 13,437 | 12,965 | 13,229 |
営業利益 | 161 | 101 | 51 |
当期利益 | 125 | 52 | 10 |
営業利益率 | 1% | 0.4% | 0.1% |
あまり大きな変化はなく、ほぼ横並びだといえるでしょう。売り上げは1兆円から1.3兆円前後で推移しています。営業利益は、2005年には200億円前後までいきましたが、この5年間では100億円から160億円という水準です。JTB利益の詳細は、公式ホームページの決算情報からもみることができます。
次年度の戦略
JTBグループは2018年の4月に、事業会社15社(旅行系)を、大規模統合しました。これを手始めに、今後本質的なビジネスモデルや収益モデルの改革をしていくそうです。今後は交流文化事業から交流創造事業を目指します。
- 人の「生活の質」の向上
- 「持続的な地域社会」の発展
- 企業の「社会的価値」の向上
上記の大きな事業開発の3つの領域テーマに合わせ、ベンチャー企業出資などを通した事業開発や、アクセラレータープログラムを通した提案募集型事業開発、社内インキュベーション型事業開発などを行うことにより、JTBならではの価値を創設していきます。
2018年のJTBに関するトピックス
JTBに関してどのようなトピックスが話題になっているのか、知っておきましょう。OB訪問の際にも先輩社員との会話の中に織り交ぜていくことができますし、今後面接などに進むにしても役に立つ情報です。
「第4回ジャパン・ツーリズム・アワード」の優秀賞を受賞
2018年の3月1日~5月31日までの応募期間を経て、過去最多の261件の応募と審査を得て、第4回ジャパン・ツーリズム・アワードの受賞者が決定しました。
大賞は一般社団法人雪国観光圏だったものの、JTBも見事に優秀賞を獲得。評価されたのは株式会社JTBの個人事業本部 海外仕入商品事業部(海外領域 ビジネス部門)で、取組名は「ホノルルフェスティバル」。
これはJTBが4半世紀にわたり続けてきた、日本とハワイの交流イベントです。冗長的なものに終わらず、常に進化を遂げながらも地域社会に定着したことが今回評価されました。
ホテル内覧を360度映像により実現。仮想現実(VR)接客の実験スタート。
2018年8月20日より、JTB、JTB情報システム、ナーブの3社が合同で仮想現実(VR)接客の実験をスタートさせました。これまでの紙媒体などでは室内の一部などしか掲載することができませんでしたが、今後はVR映像でホテル館内をみることが可能となっていきます。
ゴーグルのようなナーブのVR専用端末「CREWL(クルール)」が使えるのは、現在において以下の店舗です。地域は九州のみ。
- 福岡のトラベルゲート天神
- 岩田屋本館店
- 博多マルイ店
- 小倉店
- 井筒屋旅行センター小倉店
- イオンモール八幡東店
- イオンモール筑紫野店
- 長崎店
- 大分店
- 熊本店
- 宮崎店
- 鹿児島店
海外85件のホテル内を閲覧可能。今後も拡大していく予定です。
東京五輪のホテル不足問題に、船をチャーターして勝負
訪日外国人が急上昇しています。特に今後東京五輪・パラリンピックに向けて問題になってくるのが、ホテルの不足問題。オリンピック期間中は特に深刻で、東京だけでも1万室の不足が懸念されています。
そのような中、注目されているのが「ホテルシップ」。これは超大型クルーズ船をホテル代わりに利用するという方法です。
JTBもこれに着目し、豪華客船「サン・プリンセス」をチャーターして山下埠頭に停泊させる予定で、2,000人以上の収容が可能となります。金額は2泊3日あたり60~70万円。オリンピック観戦とのセット企画もあらわれるかもしれません。
旅行業界の動向
就職活動を進めるには、企業研究だけではなく興味ある業界自体の動向を知っておく必要があります。ここでは旅行業界の現状と今後についてみていきましょう。
旅行業界の業績推移
国内旅行の人数自体は若干増えていますが、平均消費額は低く推移すると思われます。海外旅行に関しては、過去最高であった2012年につぎ、1,820万人となりました。そして特筆すべきが、訪日旅行。なんと訪日外国人旅行者数は約3,200万人で、前年比プラス12.3%となっています。
傾向としては、旅行者の人数自体は増える傾向にあります。しかし、旅行にかける消費額は減少傾向にあるといえるようです。
インバウンドの増加と、日本人による国内外の旅行
民泊利用や免税制度の改正などにより海外旅行者の増加(インバウンド)は盛り上がっていますが、日本人による国内外の旅行消費額は減少傾向にあります。そこには国内人口の減少、団体旅行から個人旅行への変化、日帰り旅行や安い手段での宿泊が影響していると思われます。
今後JTBのように質で勝負しているような大手旅行会社を利用する人たちと、民泊など格安での旅行手段を使用する人たちに大きく二極化していくかもしれません。また海外旅行先に関しては、アジア中心の傾向が継続。引き続き近距離シフトの需要がありそうです。
JTBへOB訪問に行く前に準備すべき3つの項目
JTBのOB訪問の口コミをみてみると、熱意ある学生に対しては厳しくも親切に対応してくれるOBが多く、実のある経験になるようです。しかし、OBのハートをがっちりつかみ味方につけるには、自分自身の努力が必要。OBをがっかりさせないためにも、事前準備をしっかりと行いましょう。
「交流創造事業」という言葉の意味をつかんでおこう
JTB公式サイトの会社概要、会社案内冊子、戦略と体制を知る5wordsの中にも必ず出てくる言葉が「交流創造事業」という言葉です。これはJTBが事業ドメインに掲げている言葉であり、JTBの根幹。そのためこの言葉の意味するところを理解するのが非常に重要となってきます。
「交流創造事業」という言葉に固執する必要はありません。しかしその概要をつかみ、理解しておくことでよりJTBの追い求めるものを知ることができるでしょう。この言葉の深い意味に共感できないのならば、あなたとJTBの社風は合わないと考えられます。
JTBで何をしたいのか話せるように準備しよう
どの企業でも志望動機は聞かれます。しかしJTBグループの場合、内定後のファーストキャリアでなにをしてみたいのか明確だということは、強みの一つになります。なぜならJTBが行っている事業領域は非常に幅広く、よくいえば多岐にわたり、悪くいえば混沌としていて学生にはわかりにくいものだからです。
どの会社でも明確なビジョンを持っている学生は輝いてみえるもの。キャリアビジョンをはっきりとOBに伝えられるようにしておいてください。漠然と「JTBに興味があります」というよりも、「JTBが取り組んでいる○○というプロジェクトに心惹かれました。
自分自身もそのような分野に貢献できたらうれしいです」というように、具体的に話せたほうがよいでしょう。
ガイドブックを読んだり、仲間内の旅行企画をたてたりして観光知識をつけよう
内定者の口コミなどをみていると、これからの就活生へのアドバイスで「ガイドブックなどを読んで観光知識をつけておくと武器になる」というものがいくつかみられました。
別に旅行関連資格の取得までは、企業も学生には求めていません。大切なのは旅行が話題になったときに相手と円滑なコミュニケーションが図れること。そして、専門知識を少しでもつけようとしている努力がみられることです。
知識を得る方法というと書籍媒体にいきがちですが、生きた経験はさらによいものです。友人やサークル仲間などとの旅行企画が上がったときには、率先して仲間の要求にあったツアーを自分で考案してみましょう。それはよい経験になりますし、OB訪問や面接時での話題の中で、観光知識、問題解決能力、企画力などさまざまな旅行業界に必要な力をアピールすることにつながります。
OB/OGへの質問を準備
企業に対する知識や疑問点がないということは、JTBに対して興味関心が薄いというようにも捉えられかねません。またよくある質問例に載っているような質問をしても、印象には残らず「他の企業にも同じ質問をしているのでは」と思われることさえあります。しっかりとOB/OGへの質問を準備しておきましょう。
社風との相性を確認するための質問
OB訪問にかかわらず、面接などでも多いのが「逆質問」。そのときに相手がみているのは、応募者の意欲やコミュニケーション能力、そして社風との相性です。就職活動はいわば企業と学生のお見合いのようなもの。相性を確認しておくことはお互いに必要なことです。
- JTBの「交流創造事業」という理念に共感しました。地球を舞台に交流を作り出し、感動や共感を呼ぶ。そんな意味の言葉だと感じていますが、実際に会社で働いていてそのようなお客様の感動を知ることができますか?
ポイントは、JTBが事業ドメインとしている核の部分に思い切り踏み込んでみることです。こちらが企業理念を理解していることを伝えられる他、実際に働いている社員が理念をどう受け止めているのか知ることができます。
- 「OPEN」、「CHALLENGE」、「FUN!」というアクションポリシーがあると知りました。その中のチャレンジに「失敗を糧にしよう」という意味があるそうですが、失敗を恐れずチャレンジさせてくれるような社風がやはりJTBにはあるのでしょうか?
こちらも社風を問う質問内容です。この質問により、失敗を恐れずに難しいことにも挑戦していきたいという熱意を伝えることができますし、もしかしたらこの質問からOBの失敗談などを聞き出すことができるかもしれません。人は失敗をするものです。
そして、その失敗に対して企業がどのような姿勢を持っているかはとても重要。体験談を聞くことができれば、その企業が人材育成に対してどう思い、どう施策をとっているのかも知ることができます。
入社までに準備や勉強をしておいたほうがよい内容についての質問
OB訪問は、あくまで入社までの道筋の一つです。これから本選を勝ち抜いていくために必要な情報を、少しでもOBから得ておきましょう。OBは実際にその戦いを勝ち抜いてきた人たちです。入社までに準備や勉強をしておいたほうがよい内容について質問し、今後の選考を有利に進めてください。
- JTBのグループ総合職に応募すると、入社する会社などは選考を通じてJTBグループが決めるとききました。実は○○部門に興味があり、活躍したいと考えているのですが、どのような準備や勉強をしておいたらよいでしょうか?
JTBの募集コースは「グループ総合職」、「各社総合職」、「各社基幹職」の3つに分かれています。その選択によっては、入社後に希望の業務に就けないこともでてくるのです。希望と現実のギャップを少しでも減らすために今からできることがあるのならば、OBから情報を得てすぐにでも準備を開始しましょう。
- 先輩がJTB入社を勝ち取れた勝因はなんだったと思いますか?
短いですがズバリ切り込むことで、OBから内定を勝ち取るまでの経験談を聞くことができます。もしも自己PRや志望動機などの話が出た際には、自分の書いたものをOBにチェックしてもらえるチャンスがあるかもしれません。しかし、OBは仕事を抱えて忙しい社会人です。
JTBのOB訪問の口コミによると、厳しく指導してくれて内定力をつけてくれる塾のようだったというような内容のコメントもありましたが、力を貸してもらうときと遠慮してわきまえるときの柔軟性を心がけてください。
入社後覚悟しておいたほうがよいポイントに関する質問
学生はたとえアルバイトをしていたとしても、会社に勤めることも厳しさや難しさをすべて把握できているわけではありません。求人広告を読んで「夢のように素晴らしい会社だ」と思っていても、実際に働き始めてその期待を裏切られることは少なくないのです。
求人広告に書かれている表向きのアピールではなく、実際の社員が覚悟しておいたほうがよいと思っている内容も聞いておきましょう。
- 会社案内などをみると、総務・人事系の課題にも取り組んでいると書かれていました。働きやすい会社なのかなと思いましたが、肉体面、精神面など辛いことがあるなら知りたいです。
OBへの質問へのマナーとして、事前に調べればわかることを聞いたり、会社のことなどに触れずいきなり有給休暇や残業時間に触れたり、答えにくい質問をぶつけるのはNGです。そのため残業時間や離職率など負の部分を知りたいのならば、少し遠回しに話を引き出したほうがよいでしょう。
JTBは「総務系ソリューション事業」なども設けており、自社従業員に対する労働環境マネジメントを行っています。その当たりに触れつつ、入社後覚悟しておいたほうがよいポイントを探ってみましょう。
- 口コミなどではJTBの仕事にやりがいを感じる人が多いという一方で、「ルーチンが多い」、「大企業ゆえのデメリットがある」というのもみられました。実際にはどうなのでしょうか?
企業研究をしていると気になるのは、やはり現JTB社員や元JTB社員の生の口コミではないでしょうか。もしも気になったものがあるのならば、直接OBに聞いてみるのも一つです。特に退職した社員などの口コミは稀に悪意に満ちているものがあり、学生を不安にさせることもあるでしょう。その不安感を払拭させるよい機会です。
JTBのOBを味方につけて本番に臨もう
JTBは複数の事業に取り組んでいます。そのため少なくともOB訪問前までには、自分がJTBのどこに惹かれたのか、入社できるのならなにをしてみたいと思っているのかは話せるようにしておいてください。
OBを味方につけることができれば、JTB社員としてのプロ意識や、働く上でのやりがい、そして内定を勝ち取るために今の自分に欠けているものなどを知ることができます。内定の最大の勝因のひとつとなるように、OB訪問を実りあるものにしましょう。