こんにちは!ビズリーチキャンパス編集部です。
毎年上位大学生の多くがその門戸を叩く外資系投資銀行、通称「外銀」。
ビズリーチキャンパスではこれまで外銀の概観を紹介する(https://br-campus.jp/articles/report/106)とともに、投資銀行部門で必要とされる知識などを紹介(https://br-campus.jp/articles/report/155)してきました。
しかしながら、その人気に反して投資銀行部門の内定者数は、日系でも各社20名程度、外資だと各社5名程度と非常に狭き門となっています。
就活業界最難関とも言える投資銀行部門に内定するために、どのような対策が必要なのか。
前回までの「ジョブの対策法①」ではジョブの全体的な概要を、「ジョブの対策法②」では対象企業の課題の見つけ方を、「ジョブの対策法③」では買収先企業の選定の方法を解説してきました。
今回は、その次のフェーズ、買収先企業の企業価値の算定について解説していきます。
前回までのおさらい
投資銀行の「ジョブ」「インターン」とは、選考の一環として行われる2〜5日間のグループワークのことを意味します。
その内容としては、「企業価値を向上させよ」というお題目のもと、ある企業が提示され、その企業に対し「M&A」の提案をするという形式のものが大半です。
具体的な流れとしては以下のようになっています。
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1.社員から企業価値の算出方法や過去に事例についての講義を受講
2.今回のインターンシップの対象企業の発表
3.対象企業について、強みや弱み、課題を調査
4.買収先企業の選定
5.買収先企業の企業価値評価(バリュエーション)
6.買収に必要な資金調達手段の選定
7.発表資料の作成
8.発表
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結論、
「①A社は現在この分野にこんな感じの弱みを抱えているよ
②それを解消するためには、B社を買収するといいよ
③買収金額は○円になるよ
④B社を買収するとこれくらいの利益が出るよ
⑤買収するための金額はこういう方法で調達するよ」
という発表を行うことがゴールです。
今回は、買収先企業の企業価値を算定する手法について説明していきます。このフェーズは非常に手間と時間を要する部分ですので、二つの記事に分けて紹介します。
買収先企業の企業価値を算定しよう
今回のフェーズで行うことを簡潔に申し上げると、「何円で買収先企業を買うのか」を決める、ということになります。
忘れがちなことですが、M&Aも「企業」を一つの商品としてみた商取引です。
決して「まぁなんかこの企業はもうかってそうだし、10億円でいっか」というような大雑把な価格付けがされているわけではなく、各買収先企業に応じた、適切な価格を算定する必要があります。
投資銀行部門のジョブにおいて、最も時間と労力と、そして事前の知識量を必要とするのがこの企業価値評価のフェーズです。
ですが、正直に申し上げて、約3000字程度のこのコラム1本ですべてを網羅的かつ詳細に記述することは、実際問題不可能です。
本来であれば、通期の大学の授業1つ分、1時間30分×12回の講義を通して理解に至るような内容になります。
多くの投資銀行内定者は、専門書を数冊熟読してからジョブに臨みます。
「外銀志望なら絶対読んでおくべき本」のコラムの中でも何冊か参考文献を紹介していますので、そちらを参考にして勉学に励んでください。
そもそも買収価格って何なの?
端的に結論から申し上げると、買収価格とは、企業の「株主価値」の事を意味します。
まず、「事業価値」、「企業価値」、「株主価値」という3つの語句について説明させてください。
事業価値とは、企業が行う「事業活動」によって直接生じる価値を意味します。
パンを作る企業であれば、パンを作る事業そのものの価値を意味しています。
企業価値とは、先述の事業価値に非事業資産価値を足したものを意味します。
企業には、事業とは直接関係のない、遊休資産などの非事業用資産というものが存在します。
先ほどのパンを作る企業を例にするのであれば、パンを作るのに用いていない、何にも利用していない土地などが非事業用資産に該当します。
株主価値とは、先述の企業価値のうち株主に帰属する部分を意味します。
企業は、株式などの自己資本と、債権や借入金などの他人資本の2つの方法で資金を調達し、事業を運営しています。
であるならば、先ほどの企業価値は、自己資本に帰属する価値と、他人資本に帰属する価値の2つに大別することができます。
このうちの前者を株主価値を呼称するのです。
これらの関係を示したものが図①になります。
そして、企業の買収価格とは、この株主価値のことを意味しているのです。
この企業価値ないし株主価値を求める作業を「バリュエーション(企業価値評価)」と呼称します。
このフェーズでは、いかにしてこのバリュエーションを行なって行くかについて、説明していきます。
なぜ高いお金を払って会社を買収するの?
さて、ここまで企業価値について説明してきましたが、なぜわざわざ会社を買収するのだろう……?
と疑問を抱いた方が多いかもしれません。
そこで、再度M&Aの意義を確認しましょう。
こちらの図をご確認ください。
「時価総額」は資本市場における会社の値段です。八百屋さんでキャベツに値札がかけられているところを想像してください。一般の投資家・企業に公表されている値段そのものです。
しかし、公表されている値段がその企業の価値そのものではありません。
資本市場では限られた「売り上げ」「利益」「株価」などの情報から企業価値が決められていますから、必ずしも正確にその経営者の手腕、経営力を判断できているとは限らないからです。
そこで、一般的にはM&Aの際にはこうした「情報の非対称性」を考慮して、少し高めに「実際の企業の価値」が見積もられます。
ですが、その価格のままでは経営者は自分の会社を手放しません。M&Aによって経営者が変わり、経営がより効率化するのではないか、と見込まれた場合には、その価格を上乗せします。
PEファンドなど、事業を持たない会社が企業買収を行う際には、この価格でM&Aが行われます。しかし、企業の買い手が事業会社である場合には、「シナジー」という概念が登場します。
例えば、パン屋さんがパン焼き機メーカーを買収するとしましょう。すると、これまでパン屋さんがパン焼き機を買う際に払っていたコストや時間が節約できます。すると、これまで以上に企業価値が向上することが見込まれます。これが「シナジー」です。
会社を買うことで、単体以上の価値が見込まれる……そう考えるからこそ、M&Aが存在するのです。
どうやって株主価値を算出するの?
バリュエーションの手法は、コストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチの、大きく3つに分類することができます。
コストアプローチとは、買収先企業の貸借対照表の純資産から企業価値を評価する手法です。簡潔に説明すると、資産と負債の差額を株主価値とする手法になります。「簿価純資産法」、「時価純資産法」の2つの手法が一般的です。
マーケットアプローチは、株式市場における価値や類似する企業における価値を基準として価値を算出する手法です。株式市場での株価を用いて評価を行う「市場株価法」、もしくは買収対象企業と事業内容が類似している上場企業の財務数値を比較し相対的な評価を行う「類似企業比較法」の2種類の手法が一般的です。
インカムアプローチとは、株主が将来獲得すると予想される収入に着目して、その収入を期待収益率で割りもどして計算する手法です。「DCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)」が一般的な手法になります。
多くの投資銀行部門のジョブでは、この数ある手法の中でも、「市場株価法」、「類似企業比較法」、「DCF法」の3つを用いて、企業価値評価を行うことが求められます。
(3日間の短期のジョブを行う投資銀行部門においては、「市場株価法」、「類似企業比較法」の2つの手法のみが求められる場合もあります)
そこで、次の記事では「市場株価法」、「類似企業比較法」、「DCF法」の3つの手法について説明していきます。
終わりに
ここまで読んでくださった読者のみなさま、ありがとうございます。
本記事ではバリエーションとは何か、どういった意義を持つのか、背景をご紹介しました。次の記事で、実際にバリエーションを実践して行きましょう。
参考文献
http://www.dir.co.jp/souken/consulting/report/consulting_rpt/12051601consulting_rpt.pdf
https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/jp/Documents/mergers-and-acquisitions/jp-ma-basic-ma_08_20140827.pdf
https://www.y-bc.co.jp/ma/knowledge/post/valuation/market/
http://ontrack.co.jp/finance/ev%EF%BC%88enterprise-value%EF%BC%89%E3%81%AF%E4%BC%81%E6%A5%AD%E4%BE%A1%E5%80%A4%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%84/
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