商社業界研究
商社というビジネスモデルは海外には存在しません。海外では原材料の輸入や製品の輸出を自社で行うのが一般的です。韓国など後発的に発展した国に商社はありますが、日本の総合商社ほど規模は大きくありません。そこで、商社を志望する就活生なら、まず商社は日本独自の業態であることを覚えておきましょう。
総合商社と専門商社の違い
総合商社と専門商社の基本的な違いは、まず扱う品目です。総合商社は、私たちの身近な食料品からロケットまで多種多様な商品を扱い、世界中で事業展開を行っている日本にしかない経営体です。最大手ともなると10兆円を超える年間売上高があり、規模がとても大きいことが特徴です。 専門商社は、食品、繊維、機械、医療など特定の商品分野に特化した事業を行う商社です。専門性が生かせるため、メーカーなど顧客とのパイプがあり、ノウハウや情報を入手しやすい点はメリットです。専門商社は数多くあり、規模もさまざまで、総合商社またはメーカーの子会社もあれば、系列会社の専門商社も存在します。
総合商社の事業変化
トレードが生業であった商社でしたが、メーカーが独自で販路を築くようになってから、「商社冬の時代」と呼ばれた時期がありました。その後、商社は試行錯誤の結果、それまでのビジネスで培った経験値を活かすことで、成長が見込まれる企業の経営に参画し収益を得るという事業投資もビジネスの柱としています。近年では事業投資のウェイトが大きくなっていることが顕著です。 投資の対象は、不動産や証券会社、または海外政府など多岐にわたります。とりわけ、近年注目されている新エネルギー・環境の分野は、再生可能エネルギーへのニーズが世界中で高まっているため、今後の需要拡大が期待されます。 事業投資例として、三菱商事と三井物産が共同出資した最大規模のエネルギープロジェクト「サハリンプロジェクト」は、総合商社志望者ならおさえておきましょう。
5大総合商社の特徴
総合商社のトップ三菱商事は「エネルギー事業」に強みがあり、石炭とLNG(液化天然ガス)が主力です。非資源では「生活産業」と「機械」に強く、「生活産業」では三菱食品、ローソン等を有し、「機械」ではいすゞ自動車、三菱自動車と組み海外でも自動車事業を展開しています。その他にも「地球環境・インフラ事業」、「新産業金融事業」などの分野で世界規模を超えた事業展開をしています。
日本最初の総合商社三井物産は、資源分野に強く、「原油・ガス」は商社トップの生産量を誇ります。また、非資源分野への投資も積極的に行っており、海外IPP事業(独立系発電事業)、ブラジル農業事業、アジア最大の病院チェーンであるIHH社への900億円の出資参画などに今後の期待も高まっています。
住友商事は「金属事業」を始め5分野で事業展開しています。特に食品や不動産といった「生活関連事業」に強いことが特徴です。資源分野では非鉄金属が強く、非資源分野ではケーブルテレビ「ジュピターテレコム」をはじめ、スーパー「サミットストア」、ドラッグストア「トモズ」などを傘下に安定した収益を上げています。
伊藤忠商事のビジネスはみなさんがよく知っているブランドや商品など、消費者にとって近い、生活消費関連のビジネスの割合が大きいことが特徴です。 繊維事業は総合商社トップの取扱量を誇り、ブランドビジネス(アルマーニ、コンバース、ポール・スミス等)で成功を収めています。食糧事業では伊藤忠食品と日本アクセスを抱え、規模では三菱商事と並んでいます。
丸紅は食糧や電力に強みがあり、非資源・資源の両分野でバランスのとれた事業を構築しています。資源分野では、チリの銅鉱山の権益獲得など積極的な投資も行っています。非資源分野では紙パルプや食糧をはじめ、電力・インフラの強さが卓越していることが特徴です。電力IPP事業では商社トップの実績があり、安定的な収益を保っています。
2総合商社で求められる人材とは
総合商社で求められる人材は、主に下記の3点です。
①高いコミュニケーション能力
商社マンにはコミュニケーション能力が不可欠です。新しい分野を開拓しなければならない商社にとって必要なのは情報です。情報を提供してもらうためには、日ごろから取引先との地道なコミュニケーションをとることが営業に必要です。 コミュニケーション能力は、商社マンに限らずどの会社でも求められますが、外部からの情報が必須の商社マンにとって、よりハイレベルのコミュニケーション能力が求められます。 儲けられるところがあれば、国内外問わず事業を展開することが商社の強みなので、当然英語力は必須です。近年は東南アジア市場も賑わっており、英語以外に中国語などができると就活で有利になるかもしれません。高い語学力で多様な人と信頼関係を築きコミュニケーションを取れる人が適材といえます。
②実行力
商社マンはさまざまなプロジェクトを進める中で人と人を結びつけ一緒に仕事を行うため、リーダーシップが必要です。リーダーシップに必要なのは実行力。周りの人を巻き込みながら目標を達成する能力が求められます。仕事は必ずといっていいくらい障害に見舞われますが、そんな障害を一つまた一つと乗り越え、決して諦めない、強い実行力のある人材が求められています。
③柔軟性と先見性
変化の激しい現代では、新たなビジネスの開発が商社には重要です。そのため、既成概念に囚われず、斬新なものを生み出す柔軟な考え方ができる人材が必要といえます。現在のビジネスがこのまま続いていくとは限りません。今あるものに固執することなく、常に時代の流れを読みつつビジネスチャンスにつなげるなど、先見性も求められます。
3総合商社で求められる能力を満たすエピソード
過去の内定者の志望動機を見ると、総合商社で求められる能力を自分の経験に紐づけて伝えています。例えば、大学で勉強してきた内容、アルバイトや部活動などの経験の中で、志望する会社の業務や求められる能力に結びつけられることがあれば、エピソードとして志望動機に含めましょう。志望した理由がより具体的に企業側に伝わります。
4自分のキャリアプランと総合商社の環境のマッチング
総合商社の志望動機では、どんなビジネスパーソンになりたいか、入社したらどんな仕事をやってみたいかなど、将来への具体的なビジョンが重要視されます。そのためにも、企業研究は怠らず、OB訪問も積極的に行い、リアルな情報を吸収しましょう。その上で、自身の経験や人となりといったものも加えて、自分のキャリアプランと志望している総合商社の環境と上手くマッチングさせます。
5総合商社の志望動機例文
ここでは、先述した志望動機の書き方のポイントをふまえて、例文を3つご紹介します。
◆大学のサークル活動で海外の大学生と新たなシステムを構築した経験がありますが、いくつもの障害を乗り越え、新しいものを開拓していくことにやりがいを感じました。その経験から、御社がさまざまな商材を組み合わせながら、次々と新たなビジネスを創り出している点に非常に魅力を感じています。私も、自分が主体となって、周囲の人と一緒に新しいビジネスを生み出せるような仕事をしたいと思います。
◆貴社はアジア等の途上国においてインフラ事業に積極的に取り組み、また、産業の基盤となるエネルギー事業では、他社を引き離して大きな収益を上げています。貴社で、人々が豊かに暮らせる基盤づくりの仕事に携われると考え志望させていただきました。
◆大学の部活動では部長として、部員が力を発揮できる環境作りに徹した経験があります。また限られた時間の中で、どれだけ多くの仕事を正確に出来るかということについても常に考えながら行動していました。これらの経験を活かして、日々変化していく総合商社のビジネスモデルに私自身も柔軟に対応し、仕事に関わる人すべてが働きやすい環境を作り出したいと思います。
おわりに
非常に人気が高くハードルが高い商社ですが、面接まで進めるためにも、エントリーシートの決められた文字数の中で、自分が伝えたいことすべてを伝えましょう。予めポイントを列挙しておくと、要素をしっかりと入れた志望動機を作れます。5大総合商社の特徴をよく理解し、企業研究をしっかり行った上で、自分の言葉で採用担当者の心を動かす志望動機を書いて、憧れの商社の内定を手に入れてください!
一次情報を得て、自分の未来を見つけに行こう
採用ホームページやニュースなどのメディアを読んで、業界・企業研究に励むことはとても大事なことです。 しかし、それらの多くは二次情報に過ぎません。何かしらのバイアスがかかっており、正しい情報であるかどうかは自身で選択していかなければなりません。
情報収集で重要なことは、「どれだけ新鮮な一次情報」を得られるか、ということ。 そしてその一次情報を得る手段としては、「とにかく人と出会う」ことが重要になります。
ビズリーチ・キャンパスでは、様々な社会人と出会える機会をご用意しています。 学生ならではの特権を使って、今しか聞けない話を聞きに行ってみませんか?