「外銀志望」とはいっても、正直金融のことなんて何も知らないよ!!
そう嘆く方は多いはず。金融を専門にしていない人はもちろん、経済学部や経営学部に所属していても、実務レベルの単語となると全くわからない……というのはよくある話です。
しかし、選考プロセスではそうした知識はバンバン問われます。
就活生に人気の投資銀行部門(IBD)をはじめとして、外銀の多くの部門の選考プロセスには「ジョブ」と呼ばれる1日~数日のケーススタディ・グループワークが行われることがあります。
その際には実在する企業の財務諸表を参考にしながらワークを進めることも多いため、実務で使われる単語を理解できていると、スムーズにワークに入り込むことができるでしょう。
専門用語を知らなくとも、語学に堪能であったり、ずば抜けた洞察力・考察力があったり、何か1つ卓越した能力があれば別ですが、(私をはじめとする)一般的な就活生は、こうした単語も押さえておくべきでしょう。
そこで、有名外資系金融機関に内定を獲得した複数の18卒トップ就活生からのインタビューを参考に「投資銀行志望」志望なら知っておきたい単語30をリストアップしてみました。
今回は学生に人気の「投資銀行-基礎編」です。
投資銀行部門は、必ずといっていいほどジョブ選考が行われ、実際のM&A案件を題材にしたワークが行われます。
外銀の中でも専門知識が非常に問われる部門といえるでしょう。
この基礎編では、投資銀行の仕事の中枢ともいえる「M&A」について理解していきましょう。
次回の「投資銀行-財務諸表編」では、M&Aや企業経営に欠かせない「財務諸表」の中身について解説していきます。
絶対に知っておきたい投資銀行の基礎単語
1. M&A(現金買収、株式買収)
M&Aとは『Mergers(合併)and Acquisitions(買収)』の略です。企業の合併買収のことで、2つ以上の会社が一つになったり(合併)、ある会社が他の会社を買ったりすること(買収)です。M&Aの広義の意味として、企業の合併・買収だけでなく、提携までを含める場合もあります。
この企業の買収のためには資金が必要になります。資金調達手法としてはいくつかの種類があり、代表的なものとして「現金買収」「株式買収」の2つがあります。前者の「現金買収」は、企業の手持ちの現金や借入金、社債・株式の発行などを利用して買収を行うものです。後者の「株式買収」は、買収する側の企業が新たに株式を発行して、買収される側の企業の株式と交換して買収を行います。
参考:日本M&Aセンター https://www.nihon-ma.co.jp/service/aboutma/」
http://www.nsspirit-cashf.com/re-org/ma_choutatsu.html
2. ディール
M&Aの案件のこと。
3. エグゼキューション
M&Aにおける一連の事務手続き等の管理や、実行をすることをいいます。
4. 水平統合
同一の製品やサービスを提供する企業がM&Aもしくはアライアンス(事業提携)を行うこと。規模の経済を実現し、コスト優位を企図する戦略です。
5. 垂直統合
自社製品の仕入先、あるいは販売先とのM&Aないしアライアンスを行うこと。原材料の調達力強化などを狙って自社事業領域の上流方向へ展開する「川上統合」と、販売機能・市場管理の強化などを狙って自社事業領域の下流方向へ展開する「川下統合」があります。原材料調達から最終消費者による購入までの開発・製造・販売というプロセスを統合し、効率化することを企図する戦略です。
6. In-Out, In-In, Out-In
それぞれ、「In-Out」は日本企業が海外企業を買収するM&A、「In-In」は日本企業が日本企業を買収するM&A、「Out-In」は海外企業が日本企業を買収するM&Aのことを指します。
7. シナジー(売上シナジー、コストシナジー)
企業のM&Aによる「相乗効果」のこと。「1+1が単純合算の2になることにとどまらず、3に4にもなるようなメリット」と説明されることが多いです。代表的なシナジー効果としては、「売上シナジー」「コストシナジー」などがあります。売上シナジーとは、商品サービスの拡充、販売網の新規獲得、営業ノウハウの獲得、ブランド力UP、シェア向上による市場での影響力UPなどによる売上の向上のことを言います。次に、コストシナジーとは、仕入れコスト削減、販売コスト削減、物流コスト削減など合併前の二つの企業がもっていた資源を補完することでコストを削減することを言います。M&Aをして事業を提携するモチベーションとなる現象のことです。
8. 規模の経済
生産量の増大に伴い、原材料や労働力に必要なコストが減少する結果、収益率が向上すること。「scale merit」と英語では呼称されます。例としては都市銀行の大規模再編によるメガバンクの誕生などがあげられます。
9. 範囲の経済
事業の多角化や、製品・サービスの多様化を通じて、シナジー効果で利益率が高まり、より経済的な事業運営が可能になること。なお、「規模の経済」が単一の事業を拡大する効果であり、「範囲の経済」が複数の事業を展開する効果です。例としては大手私鉄各社が沿線の不動産開発も行うことでシナジー効果を生んでいることなどがあげられます。
10. 時間を買う
「短期間で新規事業の展開が可能である」というM&Aの特徴・メリットを表した言葉。M&Aでは既に出来上がった状態で買収する為、買い手にとっては大幅な時間と労力の削減になります。
11. バリュエ―ション
企業価値評価、つまりM&Aの際に会社を具体的にいくらで買うのか、「会社の値段」を算定する作業のこと。手法としては数種類あり、通常であればいくつかの手法で企業価値を算出し、判断材料とします。大別すると以下の通りになります。
①アセット・アプローチ(コスト・アプローチ)(asset approach)
・簿価純資産法
・修正簿価純資産法
・時価純資産法
②マーケット・アプローチ(market approach)
・類似会社比較法
・市場株価平均法
・類似取引法
・過去取引事例法
③インカム・アプローチ(income approach)
・DCF法
・収益還元法
・配当割引法
以下では代表的な「類似会社比較法」、「市場株価平均法」、「DCF法」の3つを紹介します。
10. 類似企業比較法(マルチプル法)
評価対象会社と事業内容や規模などが似ている会社を抽出し、その比較から会社の値段を決める方法です。
具体的な計算式としては、類似企業の株式時価総額等を各種指標(EBIT、EBITDA、売上高)で除した倍率を、評価対象会社の指標にかけ合わせて企業価値を算定する方法です。時価総額=企業価値を前提としています。簡潔にいえば、「ライバル企業B社の時価総額は、B社のEBITのX倍であるから、A社の時価総額はA社のEBITのX倍だろう」というような手法です。
この手法をとって企業価値を算定する際には、ビジネスモデルが似通っていることが大前提となります。特に、リスク・リターンの関係性が似ていない場合には、価格を正しく評価することができません。
11. 市場株価平均法
過去1ヶ月~6ヶ月程度の市場株価をもとにした平均株価を評価額とする方法です。 上場(公開)企業のみが採用できる方法になります。
この手法を用いて企業価値を計算する際には、株価に影響を与えた大きなイベントがないかチェックする必要があります。例えば、上場したばかりの企業では、上場直後の期待感によって株価が高くなっているかもしれません。それにも関わらず、単純に平均をとってしまうと、企業価値を正しく評価することができないのです。
12. DCF法
将来のキャッシュフローの現在価値を算出する方法です。「将来的に企業が生み出すお金の現在の価値=企業価値」とする考え方です。ファイナンス理論に最も忠実的な評価方法といえ、実務的に様々な場面で利用されています。
この手法を用いて企業価値を算出する場合、キャッシュフローの予測シナリオを用意する必要があります。このシナリオは、理論的には算出者が自由に描くことができるため、恣意的なシナリオにならないように注意する必要があります。一般的に、株価が上がるだろう、という楽観的なシナリオ、下がるだろう、という悲観的シナリオ、中間的なシナリオ、の3つを用意することが多いといえます。
13. デューデリジェンス
対象企業に関する詳細な調査を行うこと。「データルーム」と呼ばれる、対象企業の契約書類や財務に関するファイル資料が備置された部屋を、売り手がホテルやオンライン上のバーチャル空間に設営し、買い手候補に解放します。買い手候補は1週間ほどの期間内に開示が認められた資料を閲覧・分析します。
14. フリーキャッシュフロー
企業価値の源泉となる、企業が自由に使うことができるお金。「営業利益 ー 営業利益に係る税金 + 減価償却費 ー 設備投資額 ー 運転資本増加額」で算出されます。
15. SWOT分析
企業を取り巻く事業環境の分析に用いる考え方。企業価値算出の時にはこの検証が欠かせません。強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats) という4つの頭文字を取ったものです。以下のように4項目を考え、分析していきます。
強み:目標達成に貢献する組織(個人)の特質。
弱み:目標達成の障害となる組織(個人)の特質。
機会:目標達成に貢献する外部の特質。
脅威:目標達成の障害となる外部の特質。
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投資銀行志望者ならこうした単語を知っているのは当たり前です。
知っているだけでなく、ジョブの際に使いこなせるようになるべく、ワークや企業分析に取り組んでみてください!
参考WEBサイト、書籍
新宅純二郎(2011年)「経営戦略入門」日本経済新聞社
M&A財務コンサルティング株式会社 http://www.mazaimu.co.jp/glossary/in-in/
森生明(2001年)「MBAバリュエーション」日経BP社
保田隆明(2008年)「実況LIVE 企業ファイナンス入門講座 」ダイアモンド社
野村証券 証券用語解説集 https://www.nomura.co.jp/terms/
一次情報を得て、自分の未来を見つけに行こう
採用ホームページやニュースなどのメディアを読んで、業界・企業研究に励むことはとても大事なことです。 しかし、それらの多くは二次情報に過ぎません。何かしらのバイアスがかかっており、正しい情報であるかどうかは自身で選択していかなければなりません。
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