伊藤忠商事・丸紅・伊藤忠丸紅鉄鋼の3社が登壇する合同オンラインセミナー「商社丸わかりLIVE」。商社業界のビジネスモデルや各社の特色・魅力など、業界のリアルに迫る第1回に続き、開催された第2回イベントの内容をお届けします。各社1名ずつにご参加いただき、実際に働く社員さんの生の声を通じて、幅広い事業内容や海外で働くやりがいなど、商社業界のリアルを深堀しながら魅力をお伝えします。
【企業概要】
◆伊藤忠商事
伊藤忠商事株式会社は、1858年初代伊藤忠兵衛が麻布の行商で創業したことにはじまり、1949年に設立した大手総合商社。現在は世界62ヶ国に約100の拠点を持ち、繊維、機械、金属、エネルギー、化学品、食料、住生活、情報、金融の各分野において国内、輸出入及び三国間取引をおこなうほか、国内外における事業投資など幅広いビジネスを展開する。
◆伊藤忠丸紅鉄鋼
伊藤忠丸紅鉄鋼(MISI:Marubeni-Itochu Steel Inc.)は2001年10月1日に伊藤忠商事の鉄鋼部門と丸紅の鉄鋼製品部門が分割統合して誕生した、鉄鋼総合商社。いわば2つの総合商社の鉄鋼製品部門という位置づけの会社だからこそ成し得る、広範囲かつ専門性の高いサービスを提供。80以上の国々に及ぶ強力な海外ネットワークで、グローバルに事業を展開する。
◆丸紅
1858年に創業、世界132拠点のグローバルネットワークを持つ大手総合商社。生活産業グループ(ライフスタイル、情報ソリューション、食料、アグリ事業)、素材産業グループ(フォレストプロダクツ、化学品、金属)、エナジー・インフラソリューショングループ(エネルギー、電力、インフラプロジェクト)、社会産業・金融グループ(航空・船舶、金融・リース・不動産、建機・産機・モビリティ)、CDIO(次世代事業開発、次世代コーポレートディベロップメント)の5つのグループで、輸出入(外国間取引を含む)及び国内取引のほか、各種サービス業務、内外事業投資や資源開発などの事業活動を多角的に展開。
【第1回イベントについて】
商社業界のビジネスモデルや各社の特色・魅力など、業界のリアルに迫る第1回イベントは、下記からご確認ください! https://youtu.be/4KDovmJkWLo
【登壇者紹介】
◆伊藤忠商事株式会社
第8カンパニー Sさん(2014年入社)
◆伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社
海外現地法人 バンコク支店 Oさん(2017年入社)
◆丸紅株式会社
電力本部 海外電力プロジェクト第一部Mさん(2012年入社)
【目次】
1.海外の仕事を通じて自分の成長を実感する、商社業界
2.実現したい夢、なりたい自分があったから、商社業界を志望
3.伊藤忠商事「全社横断の新規事業開発に取り組む、第8カンパニー」
4.伊藤忠丸紅鉄鋼「お客さんに近い距離で働ける、海外駐在のやりがい」
5.丸紅「世界と競合する、丸紅の発電所ビジネス」
6.商社業界でさらなる成長を目指す、今後のキャリアプラン
海外の仕事を通じて自分の成長を実感する、商社業界
―――商社業界で活躍する3社の社員の方々にお集まりいただきました。どんな仕事をされているのか、実際の働き方を通じて学生のみなさんに商社業界の理解を深めてもらえる場になればと思います。本日はよろしくお願いします。でははじめに、自己紹介をかねてご自身のキャリアについてそれぞれ聞かせていただけますでしょうか。
(伊藤忠商事):入社時は、職能部という現在のIT・デジタル戦略部に該当する部署に所属していました。その後2016年には中国・上海に赴任し、ITシステムの企画・運用業務に従事。2019年に新規事業開発をメインにおこなう第8カンパニーが新設されるにあたり、社内公募に応募して異動しました。もともとデータとテクノロジーの融合領域でのビジネス開発に関心があったことも大きかったですね。デジタル化の進展がめざましい上海での経験を生かして、日本国内の事業開発に貢献したいという想いがありました。
(丸紅):私は入社後3年間、会計・技術専門人材を抱えるアジアのアセットマネジメントサービス子会社と協業するかたちで、中東・アジアの事業会社の管理業務に従事していました。その後営業部に異動となり、出産・育児休暇を経て現在に至ります。所属する電力本部は、海外に関わる事業割合が大きく、総合商社ならではの大きなプロジェクトに参加できることが魅力です。これまで事業開発と管理で、10か国以上に出張して現地の顧客・パートナー・当社現地人社員等と協議・交渉する経験があり、まさに思い描いていた「海外に関わる仕事」に従事していると感じています。
(伊藤忠丸紅鉄鋼):MISIは伊藤忠と丸紅の鉄鋼製品部門が分割統合して誕生した会社ですので、どの部署も鉄を取り扱う業務をしています。入社後3年間は、缶コーヒーやツナ缶などに使われる「ブリキ」と呼ばれる鉄鋼製品を扱う貿易部署に配属となり、日本材の輸出や、海外メーカーから海外のお客さんに販売する三国間貿易のトレード業務をおこなっていました。その後2年間、家電などに使われる「薄板」という一般鋼材を扱う部署で、東南アジア向けをメインにしたトレード業務に従事。海外駐在はずっと希望していました。4年目ぐらいからその想いが強くなり、上司に猛アピールをしまして(笑)。6年目で念願かなってタイ駐在が決まり、現在はバンコク支店で勤務をしています。
―――みなさん、海外のフィールドで活躍する経歴をお持ちなんですね。では、現在担当されている業務内容についても教えてください。
(伊藤忠商事):第8カンパニーは他7カンパニーと協働し、生活消費分野に強みを持つ伊藤忠商事のさまざまなビジネス基盤を最大限に活用していくためにつくられた組織です。カンパニー横断の取り組みを加速させ、市場や消費者ニーズに対応したマーケットインの発想で新たなビジネスを開拓することが求められています。特にファミリーマートの事業基盤強化や新規事業の立上げに伴走する役割があります。部や課がなく、プロジェクト単位で業務を進めているのも特徴です。私が担当するプロジェクトの一例として、ファミリーマート店舗をメディアとして捉え広告や情報を発信するリテールメディア領域の事業開発や、店頭で処方薬を受け渡すサービスの開発などに従事しています。
(丸紅):私は電力本部の中でも2つの部署を兼務しています。海外電力プロジェクト第一部では、主にフィリピンのスマートグリッド事業管理と新規開発を。もう一方の電力新事業部では、当社が出資済みの米国スタートアップ企業の製品の代理店営業活動に従事しています。前者は、日本およびフィリピンの電力会社さんと共に出資している案件で、各パートナーと既存事業運営に係る意見交換・すり合わせ、スマートグリッド技術に係るメーカーさんとの協議が主な業務です。後者の米国製品の販売営業では、日本・東南アジアをメインに、当社の現地人社員の協力を得ながら、オンラインや出張での対面で商談をおこなっているところです。
(伊藤忠丸紅鉄鋼):タイの現地法人でおこなっている現在の業務は、現地企業向けのトレード業務や合弁会社との提携業務です。たとえば、トレード業務で関係性を築いたお客さんから、「ここに鉄を加工するコイルセンター(鉄鋼製品の加工・在庫・流通機能を持つサービスセンター)があったらこんな事業ができるのに」という話が出てくることがあります。そこで、鋼材を供給するだけでなく、事業投資をすることで一緒に事業会社をつくろうという話につながっていく。MISIとして何かできないかを考えて、一緒に頑張りましょうといった寄り添い方をしていくことが仕事です。これまではトレードをメインでおこなっていましたが、事業投資案件に関わるようになって経営層の会議に出席することも増え、貴重な経験ができていると感じています。
実現したい夢、なりたい自分があったから、商社業界を志望
―――みなさんがどういう想いで就職活動をされてきたのか、なぜ商社を選んだのかについても、ぜひお聞かせください。
(伊藤忠丸紅鉄鋼):世界のインフラを支えたいという想いから、あらゆる産業や生活基盤に欠かすことのできない「鉄鋼」に興味を持って就職活動をしていました。ダイナミックで派手なもの好きの私にとって、鉄の世界は非常に魅力的だったんです。その中でも商社はメーカーと違い、自分たちで商材を作っているわけではありません。お客さんが必要とするものを探してきて、販売するのが仕事。自分自身を売り込んで信頼関係を築いていく、「人間力」を資本に働いているのがかっこいいなと単純に思いました。
(丸紅):私は法学部出身なのですが、学生時代に専攻していた国際取引法のゼミで、他国の学生と模擬仲裁の試合をする大会に出場したことがあるんです。そこで語学面もプレゼンテーション面も自分達より優れた他国の学生に多数出会い悔しい思いをした経験から、日本だけでなく世界で活躍できる人になりたいという想いが芽生え、海外に関わる仕事がしたいと考えて総合商社を志望しました。
(伊藤忠商事):ビジネスの基本である「人・モノ・金・情報」、これが全部そろっているのが商社だと考えました。また、学生時代に出会った国内外の友人からものすごく刺激を受けて、将来は一緒に世の中のためになる事業をつくっていこうという夢を描いていたこともありますね。彼らのプロダクトを日本に持ってきたり、日本の良いものを彼らに紹介したり、一緒に国を超えてサービスを創るというスケールで仕事をするためにも、総合商社の事業フィールド・自由度が魅力的でした。
―――それぞれの会社に入社を決めた理由についても教えていただけますでしょうか。
(伊藤忠丸紅鉄鋼):なぜ総合商社ではないのか、ということもよく聞かれます。実際に就活では専門商社に絞って受けていました。お客さんと直接話をして、世界のインフラを支えているという実感を得ながら働きたいという想いから、私のやりたいことはあらかじめ扱う商材が決まっている専門商社の方が近いなと考えていました。中でもMISIは、伊藤忠商事と丸紅の50%ずつの出資でできた会社のため、両方のネットワークが活用できる。そして、少数精鋭だからこその風通しの良い社風も魅力で。OB/OG訪問でたくさんの人とお会いしていく中で、自分の性格に合っているなと感じられました。
(丸紅):丸紅の会社説明会で海外営業について話していた女性社員がとてもいきいきとしていてかっこよかったことが印象的でした。明るくハキハキとした人が多くて、自分に似ているなと感じられたことも大きかったです。正直なところ、総合商社5社受けて、たまたま最後に内定をもらったのが丸紅だったということもありますね。だからこそ自分に合っている会社はここなんだという縁を感じて、入社を決めました。
(伊藤忠商事):伊藤忠商事はITテクノロジーを活用したリアルとバーチャルの融合領域でも時代を先進しており、宇宙・情報・マルチメディアカンパニーなどの目立った取り組みが自分の興味関心と合致していたことが大きな理由です。IT領域で一番活躍できる商社は伊藤忠商事だ、と考えるようになりました。商社は豊富にモノを扱っているけれど、それがデジタル化されていないのではないか。そこで自分に価値提供できることがあるのでは、と考えて志望しました。
伊藤忠商事「全社横断の新規事業開発に取り組む、第8カンパニー」
―――ここからは、お一人ずつもっと深堀してお聞きしていきたいと思います。ではまず、伊藤忠商事Sさん。縦割り組織になりがちな商社の課題を解決するべく、カンパニー横断の取り組みを推進する第8カンパニーに所属されているということなんですが。ファミリーマートの事業基盤強化とその課題解決がうまく結びつかないという方も多いのかなと思います。もう少し詳しくお話いただいてもいいですか?
(伊藤忠商事):ファミリーマートは全国に約16,600店舗ある小売店のフランチャイズビジネスを展開していますが、伊藤忠グループが取扱うさまざまな商材・サービスの最終的な消費者接点になっているんですよ。たとえば、ソックスなどの衣料品は、繊維カンパニーが原料の糸の調達から製品化まで企画して流通させています。おむすびは食料カンパニーがお米から商品企画を行い、商品の包装資材についてはエネルギー・化学品カンパニーが提供しています。その他、紙資材は住生活カンパニーから調達し、コンサートなどのチケット発券サービスは情報・金融カンパニーがシステムを提供しています。こう捉えるとファミリーマートは、伊藤忠グループが総力を結集しお客様に商品やサービスを提供するシンボルになっているんです。
―――なるほど!そこで、各カンパニーとファミリーマートの間に立って事業開発をする役割を第8カンパニーが担っているというわけですね。ご自身が担当されている新規事業開発プロジェクトについても、聞かせてください。
(伊藤忠商事):一つはリテールメディア領域の事業開発です。米国の小売は消費者接点のメディア価値に着目して広告収入を得ながらお客様に情報発信するビジネスを拡大しています。日本のファミリーマートでも実証実験を経て全国3,000店超に大画面のサイネージを設置しており、今後も拡大予定です。また、顧客IDや購買データを活用したデジタル広告配信の事業会社も設立しました。顧客属性に応じたデジタル広告の配信と、配信後の購買効果の検証まで一気通貫で行うユニークな広告事業を展開しています。
もう一つはヘルスケア関連のプロジェクトです。コロナ禍になってニーズが高まったことをきっかけに、ファミリーマート店頭で処方薬の受け渡しサービスがはじまりました。パートナー薬局と連携しながら関係官庁や保健所を何度も訪問し説明・説得を重ね、実現に至っています。基本的にNOと言われる覚悟で準備を重ね、交渉に向かうところからのスタートでした。もちろんこれらは一人で実現できるものではありません。社内のさまざまな力を借りながら、チームで動いて進めています。
ファミリーマートの顧客ネットワーク・集客力を活用しながら、顧客ニーズに合わせた新しいビジネスモデルを創造・実証し、全国のファミリーマートに展開する他、良い結果が得られた仕組みについてはドラッグストアやスーパーマーケットなど他の小売店に広めていく提案活動も積極的にしているところです。
―――働いている中で、やりがいはどんなところに感じますか?
(伊藤忠商事):これまで商社というと、鉄だったら鉄鋼メーカーさん、食品だったら食品メーカーさんと、対面業界が決まっていたんですよね。我々はそういう枠に捉われず、いろんな業界の方にアプローチできます。消費者のために資すると思ったら、提案して一緒に実証実験をしたり、事業提携に向けた商談をしたり。それらがうまくいったときは、やはり達成感があります。共通の価値観を持つ上司や同僚と、前例のないチャレンジングな仕掛けや仕組みづくりを構想し、互いに知恵を絞りながらディスカッションを重ねていく。そしてその過程で賛同を得ながら仲間を増やし、取り組みが一つずつ形になっていくことにやりがいを感じます。
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伊藤忠丸紅鉄鋼「お客さんに近い距離で働ける、海外駐在のやりがい」
―――では続いて、伊藤忠丸紅鉄鋼Oさんにお聞きしていきます。現在念願かなってタイに駐在中とのことですが、実際に働いてみていかがですか?
(伊藤忠商事丸紅鉄鋼):海外駐在していて思うのは、お客さんの近くで働けることがすごく楽しい、ということです。もともと日本にいた時も海外のお客さんとやり取りはしていましたが、そこでのやり取りや出張で現地に行った時に聞ける情報には、足りない部分があったんだなと感じました。今は相談してもらえる内容も広がり、仕事の幅も増えて、すごくいい環境だなと思います。難しいなと思うところは、やはり文化の違いですね。当たり前だと思っていたことが上手く伝わっていなかったり、お互いの考え方が違うことによってズレが生じることが多少なりとも起きてしまうので。そういう時には、近い距離にいるからこそ海外で働く難しさを感じることがあります。
―――伊藤忠丸紅鉄鋼ならではの強みはどこですか、と聞かれたら何と答えるでしょうか?
(伊藤忠商事丸紅鉄鋼):やはり、伊藤忠商事と丸紅という2社の総合商社のネットワークやリソースを活用してビジネスができるという点ですね。たとえば、鉄のトレーディング業務や事業投資をしていく中で、日本企業が進出できていない国もたくさんあるんですよ。そんな時、MISI独自で支店を持つことが難しかったとしても、伊藤忠か丸紅のオフィスがあれば、そこを活用して話を進めることができるというのも大きな強みになります。そして、これまで先輩方が築いてくれた実績も大きいです。おかげさまで、どの客先に行っても「MISIにお願いしたい」と言ってもえらえることが多いです。これまでみんなでつくり上げた信頼や実績を壊すことなく、つなげていこうという気持ちが、鉄鋼流通のフロントランナーとして走り続ける背景にあるのだと感じます。
―――商社ではたらくやりがいは、どんなところに感じますか?
(伊藤忠商事丸紅鉄鋼):トレードビジネスは、一度きりの商売ではありません。そのお客さまとどれだけ信頼関係を築き、長く商売を続けられるか。「三方よし」という言葉にあるように、商社の商売はお客さまにとっても、メーカーにとっても、私たちにとっても利益が出ることが理想です。その関係が崩れてしまうと、商売は続きません。そこを踏まえて関係性をつくり上げていくことが、この仕事の面白さだと思います。少数精鋭を強みとするMISIでは、若手のうちから実践の場に身を置く機会が多くあります。プレッシャーは大きいですが、それだけ成長もできる環境です。「MISIだから、Oさんとだから、ここまでやります」と言われた時は一番うれしいですね。必要とされていると感じることが、私にとってのやりがいとなっています。
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丸紅「世界と競合する、丸紅の発電所ビジネス」
―――では続いて、丸紅Mさんにお話をお聞きします。電力はかなり専門的で難しい分野なのではと感じてしまうのですが、入社前から知識は必要とされるのでしょうか?ほかに、入社後ギャップを感じたことなどがあれば聞かせてください。
(丸紅):私自身も法学部出身なので、まったくの畑違い、電力や発電所の知識は何もわからない状態で入社していて、今でも、技術的な会話にはついていけないこともあります(笑)ただ、もちろんプロジェクト現地にも東京本社にも技術者がおりサポート体制があるので、技術的な知識が必要な商談がある場合は、そういう方々を巻き込んで支障が出ないように対応しています。ギャップを感じたことはほとんどないんですよ。一番の軸にしていた海外で働ける環境かという点においても、実際に当社ビジネスは圧倒的に海外に関わる事業の方が多く、電力本部以外の本部を考えても、完全に国内だけで完結する事業しかカバーしていない本部はないので、そういう意味でも自分には合っていたなと思います。
―――海外案件に多く取り組まれているからこそ感じるやりがい、また苦労する点はどんなところですか?
(丸紅):今ちょうど、米国のスタートアップ企業の製品を東南アジアの電力会社さん向けに営業販売する仕事をしているのですが、社外の方と面談する時はいつでも、丸紅の代表として、さらには日本の代表として見られているという意識で臨んでいます。緊張感はありますが、その分上手くいったと感じた時は、日本企業、また、日本人のイメージ向上にほんの少しでも貢献できたのではないか、とやりがいを感じますね。電力本部はチームで取り組む仕事が多いので、商談がうまくいった時はチームに貢献できたという実感を得られることからも、二重にうれしく感じます。
苦労する点でいうと、東南アジアでのビジネスは意思決定者にたどり着くまでのプロセスが極めて長いケースが多いということを痛感しています。簡単な契約書を交わすにも、お互いに内容を確認してサインをするまで1カ月程度で済むかなと放っておくと、永遠に終わりません。どんなに確認を入れても、有耶無耶にされてしまって、とにかく粘り強くリマインドしていかないと全然進まない、という経験が過去多数あります。特に、新規事業の開発ではありがちなのですが、なるべく早く終わらせましょうという明確な期限のない案件を進めるのは、至難の業です。正当な理由をつくって締め切りを設定して一歩一歩進めていく、話術とタイムマネジメントはすごく重要になってきます。
―――他の総合商社と比べてどんな特徴がありますか?ということもよく学生から聞かれると思います。そのあたりはいかがですか?
人の雰囲気という点では、他の商社で働いたことがないの比較となると難しいですが、日々働いている中で負けん気の強い人は多いなと感じています。国内外問わず競合他社には負けない、とか、絶対にこのプロジェクトを成功させる、とか士気の高い人がとても多いと思います。
ビジネスという点では、担当する電力ビジネスは歴代の先輩方のおかげで。電力会社に匹敵する発電容量の発電所建設・運営プロジェクトへの参画実績があり、その実績をとおして得た世界中の電力会社との関係性を基盤としたビジネスが実施可能であるという点は、特徴だと思います。
また、会社独自の制度で魅力的だなと思うのは、社内ビジネスコンテストが開催されていることですね。参加者は、勤務時間のうち15%を自身の担当業務に関係のない業務であっても費やしていいことになっていて、その時間で準備を進めることができます。当日は丸紅の経営陣や外部から招いた審査員の前でプレゼンし、選ばれると賞金として開発費がもらえるというものです。もちろんその後、事業化を実現できるかどうかはさらに自分次第ではありますが、業務に関連のないまったく新しい事業でもビジネス化できるチャンスがあるというのは、面白い取り組みですよね。
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商社業界でさらなる成長を目指す、今後のキャリアプラン
―――では、みなさんにお聞きしたいと思います。今後のご自身のキャリアについては、どのように考えていらっしゃるのか聞かせてください。
(丸紅):自分の子どもに自信を持って楽しいと言える仕事を続けていきたい、というのが私のキャリアの軸です。入社5年目の時に出産をして育休を取得したので、海外駐在の希望を出す時期を逃してしまいまして。子供がもう少し大きくなって環境が整った頃に、海外駐在は是非経験したいですね。ただ、年次を重ねれば重ねるほど、現地で求められるスキルや役割も大きくなります。現時点から、国内外問わず活躍できるマネジメント人材になることを意識して、業務に取り組んでいきたいと思っています。
(伊藤忠商事):伊藤忠商事が総力を発揮できる新たなマーケットに着目し、全社横断的に取り組む事業のグランドデザインに携わっていたいですね。まだ世の中にないけれど、将来あるといいなと思うものを自分で企画・発信して形にしていきたい。その過程でもし、学生時代に出会った国内外の友人らとビジネスの場で一緒に事業を生み出すことができれば、それも夢の実現になるのかなと。長期的な目標と短期的なゴールを意識しながら、一歩ずつ経験を積んでいきたいです。
(伊藤忠丸紅鉄鋼):海外駐在が一つの目標だったので、正直、それが実現した現時点ではまだ模索中です。今の仕事にやりがいを感じているので、営業は続けていきたいですね。もう少しマクロな視点でMISIの事業を見て、自身が今後働いていく上での目標や働き方を考えたいと思っています。駐在してからは事業案件に携わる機会も増え、これまでになかった学びも数多くあります。商売の基礎となるトレードビジネスにも注力しながら、その先にある事業案件や会社経営に必要な視点をより近くで学び、経験していきたいと思っています。
―――それでは最後に、就職活動をする学生へ向けてアドバイスやメッセージをいただけたらと思います。
(丸紅):商社は、メーカーさんのように商品や技術力といった強みがありません。正直、「人」以外の強みが本当にない。なので、どんな仕事をするにしても、一人の人間として価値を発揮できなければ、お客さんやビジネスパートナーから振り向いてもらえなくなります。困難な状況の中でも、腹をくくって判断し、アクセルを踏みこみ、異なる価値観を持つあらゆる人々を巻きこんでプロジェクトを前進させること。つまり、人を動かすリーダーシップを発揮することこそが商社に求められる役割ではないかと思っています。丸紅はそれが備わっている社員が多いと感じており、私自身も意識しています。そういう姿を目指したいと考える方には、きっと向いている会社なのではないかと思いますよ。
(伊藤忠商事):なぜこの業界なのか、なぜこの会社なのか、なぜあなたの歩みたい人生と一致しているのか、ということは絶対に聞かれると思うので、そこはストーリー立てて話せるようになった方がいいですね。伊藤忠商事に浸透している価値観で、自分自身にも強く刺さっている言葉に「迅速な言行一致」というものがあります。やるべきことを一つずつ形にしながらコミットし、信頼を得ていくことが大事。そのために足りない力は人を巻き込みながら成し遂げていくことで、ビジネスの可能性も自身の成長の幅もさらに広がっていきます。ぜひ関心を持ってもらえたら嬉しいです。
(伊藤忠丸紅鉄鋼):今思うと、就職活動は自分がどう育ってきたのか、自分が何をしたいのか、どういうことをしているときにモチベーションが上がるのかということを深く考えられた良い機会だったと感じています。その中でもOB/OG訪問は、決められた時間の中で得られるものがとても大きかったです。自分の話を聞いてもらうことで大切な軸が確立していく感覚がありましたし、社会人の先輩方の話を聞くことで話し方や考え方を学べることも多い。積極的に活用してもらいたいですね。いろいろ焦ってしまうこともあると思いますが、どこの会社が自分に合っているのか、ここで働いたらどういう生活ができるかなというところまで考えて、自分も会社を選ぶ気持ちで就職活動をしてもらえたらなと強く思います。
―――本日はたくさんお話をお聞かせいただいて、ありがとうございました!学生の皆さんの参考になれば幸いです。もっと深く知りたいという方は、ぜひOB/OG訪問を活用してみてくださいね。