「パーパスから考えるDX」―Principal渡瀬博文
コロナ禍で、国内のデジタル化の動きは拡大しました。一方、経済産業省「DXレポート2 中間取りまとめ」によると、日本企業の95%がDXに未着手、もしくは開始段階にあり、DXに先行して取り組んでいる企業と平均的な企業では進捗状況に大きな差があると報告されています。
IMDによる「2020年世界デジタル競争ランキング」では、日本は前年から4ランクダウン。63か国中27位と低迷しており、トップ10に入ったアジアのライバルである香港や韓国からも引き離されているのが現状です。
2つに分類されるDXで競争優位性を創出したケース
DXはコスト削減や生産性向上に限らず、部門を横断した推進によって売り上げ拡大やイノベーション創出に成果をもたらします。しかし、グローバルの動向を見てもDXの成功は通常の企業変革より難しく、デジタルツールの導入にとどまることも少なくありません。計画段階から困難が続くため、DX疲れに陥る企業すら出始めています。
DXによる競争優位性を創出した事例を見ると、バリューチェーンの最適化を通じて収益回復を実現したケースと、自社の強みをベースに事業領域を再定義したり新規事業に参入したりして再生したケースの2つに分類できます。
グローバルな成功事例に共通事項、目的を持ちデジタルを使い体制を組む
グローバルのDXの成功事例を分析すると、3つ共通事項があるのが分かってきました。
1つ目が「パーパスドリブン」、すなわち、誰の、何のための会社・サービスなのか、自分たちは何を成し遂げたいのか、といった存在意義や意思を明確に打ち出して行動することです。
DX推進には、人の意識や文化といったソフト面の変革が不可欠です。関係者全員が腹落ちする目的を定義し、磨き上げていくことが変革への歩みの進化につながります。別の言い方をすれば、DXはパーパスを実現するための経営戦略そのもの。各事業戦略に組み込まれることにより、一層の効果が生まれるのです。
2つ目が「デジタル活用による戦略の実行」です。経営戦略に関する考え方はいろいろありますが、これまで強かった領域をさらに強くする「コア事業強化」、競争原理を変えて成長する「事業ポートフォリオ改革」、将来を見据えて新しい事業を創造する「新規事業創造」の3つに分類可能です。
これらすべてにDXを当てはめればいいというわけではありませんが、横串で捉えて、できるだけ多くの領域に適用することがポイントです。これが、結果を出す時間を短縮し、効果を倍増させ、優位性の確立へとつながっていきます。
3つ目が「推進する組織」です。DXを推進する組織の形態には「独立した事業でデジタルを推進するケース」「全社的に推進するケース」「外部に企業を出して出島として展開するケース」など、いくつかのパターンがあります。
それぞれの形態に一長一短がありますが、共通して重視する必要があるのが外部との接点です。最初から全社展開や新事業創造を推進する場合は、特に外部とのつながりを意識し、戦略実行できる新しい組織を構築する必要があります。
いくらきれいな戦略を描いても、組織が実行できなければ意味がありません。実行しても効果がない場合も同様です。内部の論理だけでなく、最初から外との接点を重要視し、知の探索を進める必要があります。
組織は戦略に従う、やることを決め実行機能を整えることは必要です。戦略は組織に従う、新しい組織が新しい戦略を導き出すこともあります。重要なのは、組織が先か戦略が先か、対立ではなく、状況に応じ使い分け、協調させること。自分たちのパーパスを実現することを最優先に、戦略と組織を考え、常に変わり続けていくこと。これが我々の描く日本企業のDX進化論であり、日本の競争優位性の創出につながると確信しています。
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「パーパスから考えるDX」
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