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蝶理株式会社

合成繊維業界におけるサステナブル事業の拡大

プロジェクト

人物紹介

A.S
繊維第一事業部 繊維原料部第2課(課長) 社会学部卒 / 2009年入社

Prologue

サステナブル商材の重要性については理解を示しつつも、従来の素材と同程度の品質と価格を求める。いや、むしろ高品質かつ低価格であってほしい、というのがアパレルメーカーの本音だろう。中には「回収ペットボトルなんて所詮ごみでしょ」との声もあった。そこの意識改革が本プロジェクト最大の難所と言えた。

STORY - 01

エコ素材を、ビジネスとして成立させるために
ファストファッションの登場により、アパレルメーカーはその時々のトレンドに合わせた服を大量に生産するようになった。そして、その半数近くが売れ残り処分されている。近年、アパレル業界が与える環境負荷の大きさが取り沙汰されているが、服は使い捨てるもの、という考え方が世の中に浸透したことも要因の一つと言えるだろう。


衣類の製造工程においては、膨大な資源やエネルギーが使われる。糸の製造工程において合成繊維は化石燃料を消化し、一見環境にやさしい印象のある天然繊維も製造時に大量の水を使う。その次のテキスタイル染色工程もまた多くの水を必要とし薬剤を使用、やっと完成した製品も上述の通り消費者の手に渡るのは半数程度だ。繊維業界は長らくこのような環境対応から目を背けてきたが、その解決のため社会システムの大きな変容が求められている。持続可能な社会を作る、世界共通の目標こそがサステナビリティなのだ。

今回のプロジェクトリーダーのA.Sが所属する繊維原料部では、合成繊維の原糸販売を行っており国内外での原糸販売のシェア拡大が繊維原料部の至上命題である。昨今のビジネス環境においてマーケットの支持を得るためには環境に配慮した素材事業を推進することが必須だが、蝶理は先駆けて2007年から廃棄ペットボトル製素材「ECO BLUE®(エコブルー)」の販売を開始し、世の中でサステナビリティが謳われる前から環境事業に着手していた。当時はまだ世間に認知されておらず、日の目を見るのはその10年以上後のこととなる。

加えて、「ECO BLUE®(エコブルー)」事業との相乗効果を狙い、原材料である再生チップを製造する企業と協働することで、リサイクルチップ事業にも2019年から参入。回収したペットボトルを新しい樹脂に生まれ変わらせるためのリサイクル押し出し機に設備投資し、メーカーポジションの確立も行ってきた。

近年、販売先のテキスタイルメーカーでも環境に対する意識は年々高まっている中で、A.Sはサプライヤーや協力糸加工場と連携しながら、マーケットに新たな商品と仕組みを提案すべくプロジェクトを推進していった。

STORY - 02

サステナブル商材に対する意識改革が必要
2009年に蝶理に入社したA.Sは、研修期間を経て繊維原料部の配属となった。まずは世界的に繊維品質や技術力の高さを評価されている北陸産地の糸加工場の生産管理業務に就き、産地の匠たちに揉まれながら糸・織布工程のいろはを学んだ。その後、スポーツ・カジュアル衣料やインテリア資材用途向けの営業を担当し、2022年から現職の繊維原料部第2課課長を務めている。

日本の繊維産業において、国内メーカーの原糸生産量だけでは消費の全てを賄うことができないのが現状だ。また、安くてよいものを求める最終消費者の要望に応えるためにも、海外から安価な糸の使用は避けて通れない。実際、既に日本市場の半分以上が輸入糸となっている。それゆえ蝶理のサステナブル商材の拡販にあたっては、適切なサプライヤーの選定と他社が追随できない商品開発が必須だとA.Sは考えた。


環境配慮型素材事業を拡大させるためには、市場の要望に対して感度の高いパートナーが必要である。蝶理が投資するベトナムのサプライヤーは、環境意識の高い欧米の大手スポーツブランドの生産を数多く請け負う等実績豊富で、その点は申し分なかった。工場の屋根には太陽光発電システムが搭載され、生産工程はAI管理、使用する原材料に関してのサステナビリティも問題ない。「ECO BLUE®(エコブルー)」の生産拠点として最適と考え提案を開始した。

回収ペットボトルを使用したリサイクルポリエステル糸の「ECO BLUE®(エコブルー)」は、当初からエンドユーザーに受け入れられていたわけではない。サステナブル商材の重要性については理解を示しつつも、アパレル企業は当然、従来品と同程度の品質と価格を求める。いや、むしろ高品質かつ低価格であってほしい、というのが本音だろう。中には「捨てるものを使っているからコストは安いんでしょう?」との声すらあった。そこの意識改革が本プロジェクト最大の難所と言えた。

STORY - 03

サステナブル商材の環境への貢献度を見える化
蝶理の販売先はテキスタイルメーカーであり、その先には洋服を買う最終消費者がいる。サステナブル商材の価値をどれだけアピールしても、伝言ゲームになれば、伝わる内容はどうしても薄まってしまう。A.Sは環境対応の見える化(数値化)に取り組んだ。

ペットボトルから糸を作る場合、同量の糸を石油から作るよりも原料製造時のCO2排出量が77%削減できる。また、「ECO BLUE®(エコブルー)」は年間で約5.2億本のペットボトルを再生し原料ペレットや糸として取り扱っているが、それをTシャツに換算すると約3,800万枚にも相当する(当社試算)。スケールが大きくなればなるほど、プラスチックごみ問題の解決や温室効果ガスの削減に対する貢献度も大きくなることは明白だった。

着実に「ECO BLUE®(エコブルー)」の認知や評価が高まりつつあった中で、想定外のトラブルが起こった。ベトナムのサプライヤーから出荷される輸入糸の品質不良が発生したのだ。販売用途は、日本で特殊な加工を施した欧米や中国の高級婦人衣料向け。これはまずいと思い、A.Sはすぐに現地の工場に赴き検品を実施。担当者にも事情を確認したところ、事前相談なく紡糸条件を変更していた。よくよく聞いてみると、生産条件の変更はサプライヤー側が良かれと思ってやったことだった。国が違えば商習慣やビジネスに対する考え方も違うため、こういったトラブルは珍しくない。損失も発生し、販売先のテキスタイルメーカーには多大な迷惑をかけることになったが、真摯に対応することで理解を得られ、同事業は今も続いている。

蝶理の先人は「半工半商」という言葉を残している。ただ単に商品を右から左に流すのが商社の仕事ではない。特に繊維事業は工業的側面が強いため、「工」の意識を疎かにしてはいけないのだ。生産の現場を深く知り、高い専門性を身につけること。そして、そこで得た情報を迅速かつ正確に顧客に伝えるのも、商社パーソンの重要な役割である。

新しい製品を生み出すのがメーカーだとすれば、世の中の人々から何が望まれるのかを予測し、いち早く行動を起こすのが商社である。A.Sが身を置くのは合成繊維業界。衣料繊維素材としては全体の半分を占めるボリュームゾーンだ。登場人物は強豪揃いだが、知恵を絞り戦略を練る。立てた予測が的中し事業化したときにはきっと商売人冥利に尽きる、と感じることだろう、A.Sはそう嬉しそうに語った。

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