男女雇用機会均等法が施行されて34年。しかし、日本の女性社長の割合は7.9%(2019年4月末現在※帝国データバンク調べ)にとどまっています。
その数字が示すとおり、日本経済における女性の活躍の形は、まだまだ試行錯誤が続いている状況。それは体力的にも精神的にもタフさが求められるM&A業界においても同様で、最前線で活躍しているM&Aアドバイザーといえばほとんどが男性です。
そんな中、女性M&Aアドバイザーとしての活躍の道を開拓しようと奮闘しているのが、今年新卒入社した千葉です。元男子校だった伝統校で応援団長を務めた彼女。 「やりたいことをやれる環境がたまたま男性社会で、私が女性だった。ならば女性の私らしさが活かせる道を探していこうと思いました」 と笑顔で語ります。今回は、バイタリティ溢れる千葉が、FUNDBOOKで見つけた新たな夢について聞きました。
■多くの人の心を動かす“陰の立役者”に感じる愛
――高校時代には、歴史ある伝統校で応援団長を務めていたそうですね?
千葉:はい、高校自体も1900年に設立した学校で、応援団も私の代で96代を数える長い歴史を誇る団体でした。私が入学する7年前に共学になったばかりという背景からも、もともと男子生徒の割合が高く、なかでも応援団となればみなさんがイメージされる通りの男性社会でした。
――もともと応援団に憧れがあったのでしょうか?
千葉:いえいえ(笑)。もとはディズニーが大好きな普通の女子高生になる予定でした。きっかけとなったのは、毎年5月に行われるライバル校との定期野球大会に向けた全校応援でした。毎年1年生は全員、応援団の厳しい指導のもと応援歌を練習するんです。
コワモテの先輩が、学ランを着て、怒鳴りながら指導する状況に多くの1年生はネガティブなイメージを持っていたのですが、私は逆で……。1年生よりもずっと早く学校に来て、準備をして、全力で指導してくれるなんて 「こんな大変なこと、愛がないとできないな」 と思ったんです。
というのも、小さい頃からスノーボードやバレエの大会に出ていて、運営側で頑張ってくださっている人たちによく注目していたんです。 陰の立役者となって、多くの人の心を動かす人に惹かれる ところがありました。なので当時、思い描いていた将来の夢も「ディズニーランドを運営する会社で働く」だったんです(笑)。応援団に入ったのも、“愛を持って全校に向き合う、この人たちと一緒に活動したい”と思ったのが理由です。
――女性応援団長は珍しかったのではないですか?
千葉:私が史上3人目でした。団長選挙というものがあって、3年生になる前に全校生徒集会で公約を書いた巻物を読み上げて立候補するんです。団長となった後も女子だからといってナメられたくなくて、当時はクールに振る舞うよう心がけていました。私物は全部黒に統一して、歩き方もガニ股に。座るときはヒザを開いて、手もげんこつにして置いて。常に堂々とした動きを意識して、団長らしいオーラをまとう努力をしていました。
髪の毛はロングヘアでした。というのも、応援団長を目指す団員は男女問わずに髪を伸ばすしきたりがあったんです。それは先程もお話した毎年5月にあるライバル校との野球大会での願掛けのため。負けたら、その場で髪を切って、坊主にするという誓いを立てて、全力で応援するんです。実は私の代では負けてしまって。全校生徒の前で土下座をして謝り、後輩に頼んで髪をその場で切り落としました……って、話だけ聞くとすごく怖く聞こえますよね(笑)。でも、それくらい本気で取り組むだけのやりがいがありました。
――高校卒業後は、一変して女子大へ進学されたんですね。
千葉:はい。女子学生しかいない環境ではありましたが、特に違和感を持つことはありませんでした。相変わらず力仕事も率先してやりましたし、より一層「男だから」「女だから」という考えに縛られなくなっていったように思います。
大学では特にダンスサークルの思い出が印象深いです。副部長として定期公演の会場手配からストーリー作り、演出、集客……と、あらゆる事務作業と全体をマネジメントしていく経験をさせてもらいました。そのとき、自らトップに立って引っ張っていくのも好きでしたが、自分には組織のために動くポジションがしっくりくるなと気付きました。
■夢を叶える場所が、M&A業界にあった
――就職活動では、どのようなことを重視していましたか?
千葉:大きく2点あります。1点目は、ベンチャーであること。大学のダンスサークルでの経験を通じて、組織を自分の手で動かしていく醍醐味を知り、会社が創り上げていく時期から参画したいという思いが強くなりました。
2点目は、「地方創生」「地方活性化」というキーワードに繋がるビジネスであること。東京で暮らし始めてから、出身地の宮城、祖母が住む岩手にもいいところはたくさんあるのに、若者が都心へと流出してしまうことへの危機感を持つようになっていったんです。その土地独自の魅力が強められ、地方が活性化していく、そんな陰の立役者になれたらと考えたのが理由です。
とはいえ、その2点が叶う会社がどの業界にあるのかわからず、観光やホテル、不動産など、業界を絞らず幅広く会社を見ていくことにしました。
――FUNDBOOKとは、どのように出会ったのでしょうか?
千葉:知人から教えてもらった逆求人スカウトイベントに参加したのがきっかけです。人材会社が企画したイベントで、自分のプロフィールを公開し、興味を持ってくださった企業が話を聞きにくるというもの。そこに1日だけ参加したところ、FUNDBOOKを知ることができました。実はFUNDBOOKも1日しか参加していなかったようで、まさに奇跡的な出会いだと思いました。
それまで、M&Aは聞いたことがある程度の知識しかなく、 地方にある企業の後継者不足を救う選択肢になる ことをそこで初めて知りました。その土地の会社を残すということは、雇用を守ることができる。その結果、そこに住む人、お金、物、情報を留めることができる。地方の良さを高めたいという私の夢が、まさかM&A業界で叶えられるとは予想もしていない発見でした。
そのイベントの後も、FUNDBOOKのHPを見てビジョンに共感し、M&Aの成約事例に感動し、「ここしかない」という気持ちが高まっていきました。 また調べる中で驚いたのは、商社や金融、メーカーなど大手有名企業から中途入社されている先輩方の存在です。ベンチャー企業の勢いに加えて優秀な方々から選ばれている会社というのも、ますます魅力に感じました。
■入社数ヶ月で経営者の方々と話せる環境に感謝
――入社前の不安はありませんでしたか?
千葉:M&Aの概要はなんとなく理解できたのですが、そこに至るまでどのような努力や苦労があるのか、実務レベルのイメージがつかないという点では、自分に務まるのかどうか少し気になりましたね。
ただ、地方企業の経営者様をサポートするとなると、物理的な移動が多いこと、そして責任も大きな仕事なので、体力的にも精神的にもタフでなければならないのは想像できました。その点は、20代のうちはバリバリ働きたいという私にとってむしろ求めていた環境ですし、応援団長時代に培ったバイタリティには自信があったので、大きな不安はありませんでした。
――実際に、入社してみていかがですか?
千葉:まず、新人研修に感激しました。コロナ禍で急遽リモートでの研修となったのですが、すぐに対応してくださって。きっと前例のない中で準備も大変だったのではないかと思うと、FUNDBOOKという会社が抱いている「社員を大切に育てていこう」という愛を感じずにはいられませんでした。
研修は、例えるなら法学部と経済学部に同時入学して、3週間で習得して半期テストを受けるような凝縮度です。3週間ずっとテスト前といった緊張感でしたね。会社法の理解を深めたり、契約書のどこにどんな内容が書かれているのかを覚えたり、財務諸表を見て会社の状況を判断したり……と、知識を覚えることと、それをどのように使うのかを、短期間で習得していくのは簡単なことではありませんでした。
そんな研修を通じて、本当にいい同期に恵まれたなと感じました。名門大学を出た秀才もたくさんいるのですが、単独プレーに走る人がいないんです。リモート中は基本的に自宅で1人でしたが同期とZOOMで繋いでいたので、孤独を感じることもありませんでした。勉強が得意なメンバーが知識を教え、コミュニケーションが得意なメンバーが仲間を支え、個性はバラバラなのに熱量が同じくらい高い から、それぞれの良さを発揮しながら活躍していて、組織として理想的だと思いました。
――5月からはインサイドセールスチームへ配属されたそうですね。
千葉:インサイドセールスは、M&Aアドバイザーとなる前に必ず経験する電話での営業活動です。企業情報を入念に調べ、FUNDBOOKを背負い、経営者の方々にアプローチをしていきます。
そこでも、配属直後には先輩がロールプレイング形式で練習をしてくださいました。インプットした知識を、実践で使っていくところまでレクチャーしていただけるのは、本当にありがたかったです。
――新卒メンバーの中で常に累積商談獲得数1位をキープされているそうですが、早期活躍のポイントは何かありますか?
千葉:実績を出している先輩たちの通話内容を聞くこと。そして、同期の中でも結果が出ているメンバーに、メモを片手にインタビューをしていきました(笑)。商談を取れたときと取れなかったときの違いは何かを仮説立てて、自分なりにトライして、また検証して……と繰り返していきました。
その中で見つけたのは、電話先がどなたであれ電話を終えた後に、いい気分を残すように努めること。インサイドセールスは定期的にフォローしていくのも醍醐味なので、1回目の電話の後味悪いと、2回目に繋げられない。3回目、4回目……と長期のお付き合いになることを見越して、1回1回のお電話に「出てよかった」と思っていただけるような言葉遣い、抑揚を心がけるようにしています。
――現在のやりがいは何ですか?
千葉:新卒入社して数ヶ月というタイミングにも関わらず、こんなにも最前線で経営者の方々と会話ができること。そして、いい提案があれば年齢や社歴に関係なく、すぐに採用してもらえることです。
先日、教えていただいた内容をマニュアル化して上司に報告したところ、すぐに全体に共有されました。本業であるコールのみならず、こうした地道な事務作業も丁寧にやろうというモチベーションにも繋がります。
――逆に厳しいなと感じる部分はありますか?
千葉:これもベンチャーの特徴ではありますが、スピード感ですね。組織、仕組み、制度がどんどん更新されていくので、1週間単位、場合によっては1日単位のレベルで変化していきます。その度に、自分自身をアップデートしていく必要があるので、成長していく会社にも仲間にも、置いていかれないよう毎日気が抜けません。
■女性M&Aアドバイザーとして長期活躍するロールモデルになりたい
――千葉さんが思い描く、今後のキャリアについて教えてください。
千葉:目標は、女性M&Aアドバイザーのパイオニアになることです。現状、M&Aアドバイザーはほとんどが男性です。FUNDBOOKでも、女性M&Aアドバイザーの活躍はこれからという段階。ならば、私がその開拓者になりたいと思っています。
実際、経営者の方は男性が多いですし、対等に話せる頼れる存在として選ばれるのもやはり男性が多くなります。もちろん、自分の子供のように育ててきた会社の未来を託すのに、新卒で若い女性の私に「任せよう」とならないのも理解できます。なので、早くそして着実にステップを踏んで、知識と経験を手に入れたM&Aアドバイザーになりたいと思っています。
そのためにも笑顔や物腰の柔らかさといった女性ならではの強みを伸ばしながら、声が高く軽い印象にならないよう口調を落ち着いたトーンを心がけるなど、応援団長のときのようにできるところから努力をしています(笑)。
また、体力と精神力のバランスをうまく取っていくことも、大事だと思っています。気合や根性に自信はありますが、M&Aは短期戦ではありません。長期的に活躍していくためにも、そしてたくさんの女性M&Aアドバイザーが続いていくためにも、そのバランスの取れたロールモデルを目指します。
具体的な時期については、1年目はインサイドセールス部、企業概要書の作成やバリュエーションなどを行うセールスアナリティクス部で経験と知識を身につけ、2年目でM&Aアドバイザーとしてフロントに立ち、3年目で実績を出せるように動いていきたいと考えています。
これから先、きっと日本でも女性の経営者の数は増えていくことでしょう。そのとき、女性だからこそ頼りになるという案件も手がけられたらと思います。そして、いつかは性別に関係なく「千葉さんだから」と言っていただけるような得意分野で勝負できたらと思っています。