伊勢丹新宿店では、2022年3月23日(水)より「デニム de ミライ ~Denim Project~」を開催します。
この「デニム de ミライ ~Denim Project~」とは、伊勢丹新宿店が主体となり、株式会社ヤマサワプレスが所有する約20トンもの<リーバイス® 501®>をアップサイクルしていくプロジェクト。
東京の下町、竹ノ塚にあるヤマサワプレスで見た大量のユーズドストック※のデニムの塊から、未来を考える大きな課題を得た私たち。強みでもある、“ファッション”をキーワードに、今までに出会ったデザイナーやクリエーター達にこのプロジェクトの話を持ち掛けました。賛同してくれたのは約50社以上。150型以上のアイテムを展開できるまでに広がり、その他にも、企業の垣根を越えて、阪急百貨店うめだ本店、岩田屋本店、st company(群馬県・桐生市)、MIDWEST NAGOYA(愛知県・名古屋市)、GEA(山形県・寒河江市)とタッグを組むことが実現。業界が一丸となり、ファッションの楽しさを発信しながら、未来へつなげていくためのメッセージを届けていきます。
今回は、「デニム de ミライ ~Denim Project~」のプロジェクトリーダー神谷将太と株式会社ヤマサワプレス 代表取締役 山澤亮治氏に、発足までのストーリーや想いを訊きました。
※ユーズドストック=着用されたデニムパンツ、デニム生地
動画「デニム de ミライ~DENIM PROJECT~|伊勢丹新宿店」
「デニム de ミライ ~Denim Project~」、プロジェクトリーダー神谷将太が語る発足までのストーリー
神谷将太
伊勢丹新宿店 リ・スタイル バイヤー
リ・スタイルは2021年に25年周年を迎えました。最新コレクションからヴィンテージまで、国内外のブランドを衣服に限らず独自のコンセプトで編集・発信しつづける、スタイリングショップ。ひとりひとりの価値観・生き方というスタイルに、美しい選択を提案していきます。
■はじまりは2020年9月。ヤマサワプレスで出会った約20トンの<リーバイス® 501®>のユーズドストックのデニム
世界中の素敵なファッションを見続けてきた私には大きな宿題がありました。過剰生産や大量廃棄が課題として認知されている中、今までのファッション業界の当たり前は当たり前ではなくなり、いま、業界全体で変化が求められています。小売店・百貨店という立場からはどのような価値を提案できるのだろうか、と常に考えていました。そんな中、去年の9月にヤマサワプレスを訪れたことをきっかけに、頭の中でプロジェクトが構築されることに。このようなファッションにおける社会課題は、一企業だけでは到底解決できるものではなく業界全体で手と手を取り合い、共感の輪を広げる事で成し遂げられると思い、さまざまなクリエイター、社内外のパートナー探しなど、半年以上かけてじっくりと仲間を募っていきました。
■ヤマサワプレス社長の一言から、こみ上げる高揚感と膨らむ妄想
山のようなストックを目の当たりにしたときには非常に驚きましたが、同時に生地として活用すれば面白いと直感的に思いました。お客さまに興味を持っていただける、プロダクトにするためにはデザイナーやクリエーターとのコラボレーションが必要と考えました。「この20トンのデニムを活用してファッション業界や世の中、未来のために楽しいことをやりましょう!」と言う山澤社長の言葉を受け、高まる気持ちとともに、その場で妄想が膨らみプロジェクトがはじまりました。
■私たちにできる、私たちらしい発信方法とは
小売りは自分たちでものづくりができる立場ではないですが、川上に存在するデザイナーやクリエーター達とお客さまをつなぐ重要な立場を担っています。提携する阪急阪神百貨店、岩田屋三越、エスティーカンパニー、ファッションコアミッドウエスト、佐藤繊維株式会社(GEA)とは、メッセージ性・時期・リソースをともに発信をしていきます。さらに文化服装学院の卒業制作に生地を提供し、次世代のファッションを担う学生が表現するクリエーションを伊勢丹新宿店にて展示をします。さまざまなものづくりの人々と協業することで、モノだけでなく強く思いを伝えていけたらと考えています。
■プロジェクトに賛同を得た60以上のブランドとクリエーター
婦人服・紳士服・リビング・雑貨・靴など、社内のバイヤーを通して声がけをしたところ最終的には60ブランド以上の賛同を得ることができました。<リーバイス® 501®>の古着自体珍しいものではないですが、これだけの量があるおかげでより創造性の高いものづくりにもつながると社内からも良い反応をいただいています。
>>参加ブランドを見る
<Chika Kisada>
<BASICKS>
<Golden Goose>
<Y's for living>
<Bobby Dazzler>
■ファッションの未来について
大きな社会課題に対しては業界全体で新しく進化をする必要があります。価値観や生活様式、生き方が見直される中、一人ひとりが新しい未来を考え、自分自身がどうありたいかという軸の中で、私たちはそれが一人ひとりにとって美しい選択になるような提案をしていきたいです。ファッションと地球の新しい関係はまだ始まったばかりです。そしてファッションが生活の豊かさや心を支える必需品であることを、ファッションを通して伝えていきたいと考えています。
業界を俯瞰するヤマサワプレスの新視点。株式会社ヤマサワプレス 代表取締役 山澤亮治氏が語る、 職人らが紡ぐ、デニムが蘇るまでのストーリー
山澤亮治氏
株式会社ヤマサワプレス 代表取締役
洋服のアイロンプレスや検品、補修をメインとする株式会社ヤマサワプレスの二代目社長。廃棄寸前のリーバイス501を蘇らせるために足立区竹ノ塚でリサイクルを行い、リメイク、アップサイクルしたデニムを販売するショップもオープン。
■ヤマサワプレスとは
プレスとは店舗に並ぶ前の衣類を洗浄したり、検品してアイロンをかけて袋にかける仕事です。需要の変化に応じながら25年間大切に商品を取り扱ってきましたが、過剰生産や大量廃棄を目の前にしたり、矛盾を感じることが増えてきたんです。これからは自分の好きな古着を綺麗にしてなにかできないかと考えていたときにロスで大量の<リーバイス® 501®>のユーズドストックのデニムに出会いました。
■なぜ<リーバイス® 501®>なのか
世界を代表する名品だというだけで、あえて<リーバイス® 501®>で拘ったのではないんです。ただそこに世界中から大量の501が集まっていたという事実があったことがスタートのきっかけでした。初めて古着屋で購入したのが501だったように、思い入れもありましたから、穴だらけだったり汚れまみれではありますけど、501という素晴らしいデニムを手に入れて再生できることもまた魅力ひとつだと感じています。
■デニムが蘇るまでの作業工程
箱型に圧縮された500〜700キロのデニムの塊が到着すると、まず解体作業。荷解きしたデニムを1枚づつランク分けが行われます。40℃の洗浄水に半日間漬けて汚れと匂いをおとしたら、1本1本手作業で馬毛のブラシで洗浄。その後大型の洗濯機で2度目の洗浄を終えたら、天日干しをして乾燥機へ入れ、完成です。通常の洗濯機でここまで蘇ることは難しく、25年の実績がこの工程と品質を後押ししてくれました。
デニムを愛するデニムのプロ集団!この3人の目利きによってデニムがABCランクに仕分けられます。
「デニムの中から、自分たちのベストデニムを探しています。持ち主だった人を想像すると面白いですよ!このデニムを履いてガレージにペンキを塗ったのかな?とかね。」
■ヤマサワプレスを支える女性たち
従業員の中には、元々アパレル業界で働いていたり、服の専門学校に行っていた方も多いんです。能力のある方でも子育てとの両立が難しく結婚を機に家庭に入っているという現状に触れ、弊社では子育て中の女性たちを意識的に雇用しています。夏休みは会議室を開放して子どもたちが宿題をしたり、安心して親を待つことができるようにしています。今後はさらにサービスを広げて、もうひとつの家に帰ってくるような感覚を作ってあげることで、その子どもたちがファッションを好きになって次の世代へつなげてくれたらと願っています。
女性の職人が活躍。馬の毛のブラシで丁寧に汚れを取ります。
一つのデニムからベルトループやタグまで分解してパーツを作っていきます。
■ヤマサワプレスと「デニム de ミライ ~Denim Project~」
アップサイクル生地は大量生産に向かず営業で苦戦していたところ、伊勢丹さんが一つひとつ違う古着の個性に目をつけてくれたんです。自分たちの力だけでは到底届かない素晴らしいクリエーター達につながることになり、壮大な規模に広がりまるで夢が叶ったようなプロジェクトとなりました。
■人々の物への関心を再定義していきたい
壊れたら直してでも持っていたいほど愛着を持てる物や、物だけでなく気持ちとしてつながっていけるものが作っていけたらいいですよね。アップサイクルを通して物に手をかけることの魅力や意義が再認識されると、本来のファッションの楽しさである自分の感性という指標軸の再認識にもつながります。トレンドに踊らされるのでなく、カルチャーを自分で選んでいくように、自分のストーリーをそれぞれが自分らしく紡いでいきながら、ファッションの高揚感を楽しんで欲しいです。
デニム de ミライ ~Denim Project~
ファッションを通じて新しい未来を示唆していくプロジェクト
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