日本タタ・コンサルタンシーサービシズ(以下、日本TCS)は、ITサービス、コンサルティング、ビジネスソリューションを提供する、インド発のグローバルITサービス企業、タタコンサルタンシーサービシズ(以下、TCS)の日本法人。同社の特徴は、世界各地のTCS社員と最適なチームを編成しプロジェクトを進める「ハイブリッドモデル」。その中で日々どのように働いているか、入社5年目の社員お二人に話を聞いた。
企業紹介
インドを代表するタタ・グループは、世界100カ国以上で幅広い事業を展開するコングロマリット。その一員であるTCSは、従業員50万人以上、46カ国で事業を展開するグローバル企業だ。世界中の一流企業をITやデジタル技術で支え、変革を後押している。日本TCSはTCSの日本法人。数々のグローバル企業に価値をもたらしてきたTCSが持つ、業界最高水準のITサービスやソリューションを日本企業向けに最適化。世界各地のプロフェショナルとコラボレートしながら、多様な業界におけるビジネスの成功を支援する。
人物紹介
日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社
デジタルトランスフォーメーションサービス統括本部
佐藤 元氣(写真:左)
文系出身でもエンジニアとして成長できるIT企業を志望し、2017年に日本TCS入社。新入社員研修後、海外派遣プログラムのGlobal Deployment Program(以下、GDP)でインドとイギリスの駐在を経験。現在は帰国し、国内航空業界のクライアント向けシステム開発のチームリードを担当。
日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社
デジタルトランスフォーメーションサービス統括本部
渡辺 美優(写真:右)
業界の成長性やTCSの世界的な知名度・実績に魅力を感じ、2017年日本TCS入社。現在は、損害保険会社向けのWebアプリケーション開発を担当するなど、数々のハイブリッド案件に携わる。
技術力もグローバルマインドセットも学べる、充実した研修内容
―――まず、お二人がどんな就職活動をしたのか聞かせていただけますか?
佐藤:最初は、IT業界を全体的に見ていました。文系でプログラミング経験がない人にも、トレーニングを積んでエンジニアに育ててくれるところが多く、魅力を感じていたんです。学生時代から英語や海外にも興味があったので、グローバルの経験が積める環境であることも大事にしたかった。この2つの軸に絞って会社を選んでいたのですが、どちらもできる会社って結構多いんですよね。その中でも、日本TCSは特に研修内容が充実していると感じました。研修だけでも半年間、また当時は1カ月のインド研修も予定されていて、海外に行けるチャンスもある。どの会社よりも自分が志す2つの軸を実現させることができると確信して、日本TCSへの入社を決めました。
―――研修はどんな内容だったのでしょうか。
佐藤:当時は、英語クラスと日本語クラスに分かれていました。僕は英語クラスだったのですが、インド人講師から、英語でJavaを学びました。日常会話だけではなく、技術を英語で理解するという経験がものすごく大きくて、グローバルで働く土台を培うことができたと感じています。他には、ミニプロジェクトを組んでチームでシステムを開発し、できあがったものをプレゼンテーションすることも。研修が終わった後、仕事がはじまるのが楽しみになった研修でした。
―――渡辺さんの就職活動はいかがでしたか?
渡辺:私も、今後も必ず伸びていく業界であるIT企業に絞って就職活動をしていました。いくつか内定をいただいて悩んでいた時に、アメリカで起業している大学の先輩に相談したんです。するとすぐに、TCSがいいよ、と返事が。世界的に知られている企業であり、ファーストキャリアで経験を積むには最適じゃないかというアドバイスをもらえたこともあり、最終的に入社を決めました。
―――心強い後押しがあったんですね。日本TCSの方にはどんな印象を持っていましたか?
渡辺:選考段階でお会いした社員の方の雰囲気が良いなと感じました。エンジニアというと、なんとなくお堅いイメージを持っていたんですが、お会いした女性がすごく気さくな方だったところも自分に合っていると感じたポイントです。
―――お二人の現在の仕事内容を聞かせてください。
佐藤:日本の航空業界のクライアント向けに、予約サイトのシステム開発をしています。今は大規模リニューアルに向けて、進めているところです。プロジェクトに入って1年になるんですが、開発メンバーは自分以外全員インド人という中で、チームリーダーを担当。自ら開発をしながら、インドで入社した新入社員を育成するのも自分の役割です。マネージャーもインド人なので、基本的にクライアントと話すときは通訳を入れているんですが、意図がちゃんと伝わらなかったり、時間がかかってしまったりすることもあります。そこで、プレゼンテーションもやってくれないかということで、私が直接クライアントに説明する機会が多くなりました。
渡辺:私は損害保険会社の社内向けWebアプリケーション開発がちょうど終わったところです。製作したのは、医療に関係のある情報をデータベース化するシステムです。損害保険会社と協力関係にある大学研究室にもご協力をいただきながら、AIを使って分析した結果をそのアプリに反映したり、検索の精度をより高くしたりするもので、約6カ月程度のプロジェクトでした。このあとは、同じクライアントの別プロジェクトに、開発チームリーダーとして携わる予定です。
多国籍の環境で働く、やりがいと難しさ
―――これまでのキャリアの中で、一番思い出深い仕事を教えていただけますか?佐藤さんは1年目でインド駐在をご経験されたそうですね。
佐藤:日本での半年間の研修を終えた後すぐ、インドに興味ないか?と言われ、現地に行くことになったのは貴重な経験でした。こんなに早くチャンスが巡ってくるのかと驚きましたが、もともと海外で働きたいと思っていたので、すぐに「YES」の返事をしました。ただ、日本でのプロジェクト経験はゼロ、さらに海外で普通に行われているアジャイル開発についてもまったく知らない状態で、はじめは本当に苦労しました。しかも向こうでは、仕事以外だとみんな英語ではなく現地語で話すんですよ。そこで孤独を感じることもあったりして、かなり苦しい状況でのスタートでした。
―――初めての経験が、インドで一人はだいぶ大変でしょうか。それはどうやって乗り越えたのでしょうか。
佐藤:担当したのは、eコマースのサイトなんですが、最初は手も足も出ず、先輩社員におんぶにだっこでした。でも、だんだんと仕事ができるようになっていった実感があります。eコマースのWebページだと、どれくらい早くページが表示されるかといったパフォーマンスがすごく大事なんですが、分析をできるようになるほど技術面で成長できました。インドに行って1年半ぐらいたった頃には、開発のチームリーダーを任せてもらえるようになりました。クライアントのイギリス人と直接コミュニケーションをとったり、3週間ほどロンドンのオフィスで働いたり。大きなやりがいと達成感がありました。インドの開発拠点に行き、メンバーとして経験が積めたことは今のプロジェクト活動にしっかりと活きています。技術とグローバルチームに理解があることが、クライアントとコミュニケーションをとる上で力になっていると実感しています。
―――渡辺さんの、一番思い出に残っている仕事は何ですか?
渡辺:苦い思い出の方でもいいですか?(笑) 私もやっぱりハイブリッド案件です。小売店向けの在庫状況を管理するモバイルアプリ開発をした時のことですが、この時、モバイルアプリの開発自体も初めてで、インドのエンジニアチームと働くのも初めてでした。インドから来日したメンバーと隣り合わせで働いていたんですが、彼らは相手の年齢や職歴をかなり重要視する文化なんですね。そこで下の立場として見られてしまい、仕事をしている間、中々意見や提案が通らない関係性になってしまったのです。コミュニケーションには一工夫が必要なのだと気づくとともに、多国籍の環境でチームを組む難しさも痛感しました。
―――そんな時は、どのように解決していくのでしょうか?
渡辺:直接のコミュニケーションがうまくいかないときは、周りのメンバーや、もっと上の上司に自分の考えを伝え、相談しつつ味方につけます。そうすると、すんなり話が通るんですよ。相手の文化を踏まえて働くことの重要性を実感した経験でした。
佐藤:私も似た経験があります。自分が直接言ってうまくいかないときは、メンバー全体のリーダーと話すようにしています。一方で、見習いたいと思う文化もあるんですよ。インドって、地域によって文化も言語もまったく違うんですが、それぞれが自身の伝統や文化へ強い誇りを持っている。そういうところはすごく好きです。あとは家族や友達を大切にする人たちなので、日本と比べて、人と人とのあたたかさみたいなものを感じますね。
―――ほかに、多国籍の環境で働く良さはどんなところに感じますか?
渡辺:TCSの社員は、プロジェクト成功の為なら自分の意見をしっかりと主張する人が多いと感じます。帰国子女や留学生が少なくないので、そういった傾向があるのかなと思います。個性的な人が多いので、ぶつかることがないわけではないのですが、他人の個性を尊重しようという気持ちをみんなが持っている。なので、頭ごなしに何かを言ったり、ルールで縛ったりすることも一切なく、働きやすい環境はありますね。
チャンスを与えてもらえる会社
―――お二人が感じる、貴社で働く魅力を聞かせてください。
佐藤:最初にお話ししたように、研修が充実しているので、技術力を身に着けたいという人には間違いなくいい環境です。たとえ文系であっても、エンジニアとしてキャリアを進めるチャンスがあります。そして、海外の方と仕事をすることが多いので、英語でのコミュニケーションも必須です。「英語を学びつつ、技術力も深められる」というところは、他の会社にはない強みかなと思います。ここは太字にしてもらいたいくらい、自分からのキーメッセージです(笑)。
渡辺:手を挙げたひとにチャンスを与えてくれる会社だなと思います。先ほども自分の主張をする人が多いとお話ししましたが、主張をしても怒られる文化ではないので、こういうことがやりたい、と日頃から上司と話をすることで、比較的その仕事を与えてもらえます。もちろん主張するだけではダメで、それに伴った自分の技術・知識を学んでいくことが大事ですが、希望が通りやすい会社なのは間違いないと感じています。私の場合、違うプログラミング言語を希望したこともありましたし、配属後の研修プログラムを自ら提案して採用してもらうこともありました。今でもうちのチームの研修は、その時のものがベースになっています。今も自身の希望を上司に訴え続けています(笑)。
―――最後に、就職活動中の学生に向けて、アドバイスやメッセージをお願いします。
佐藤:就職活動は選択肢がたくさんあるので悩むことも多いと思います。自分を知るためには自己分析をすることが大事ですが、実際にやってみても腑に落ちないことってあるんですよね。自分にとってはお金が大事だと思っても、実際に給料の高い会社を選んでみるとちょっと違うなと感じたり。自分の本音がどこにあるのかをあきらめずに探してほしいです。僕にとっては、自分がどういう仕事をしてどう成長できるのかという具体的なイメージを持てることが最終的な軸になりました。悩むこともあると思いますが、それも全部学びになるので、楽しく就職活動をしてほしいなと思います。
渡辺:その後見つけた軸をブラさないことも大事だと思っています。一度決めたら、それだけを見てとことん突き進む。就職活動がうまくいかない人を見ていると、あっちこっちに興味がいって最終的に軸が決まらず、結局面接でもうまく伝えられないという人をたくさん見てきました。私の場合は、IT業界であることと給与が高いこと。そういうものでもいいので、軸を決めたら動かさない。そうすると自然に、一貫性のあるアピールができるようになると思います。それから、今はSNSも有効活用してほしいですね。就職活動に関する情報もたくさん出まわっているので最新の情報をキャッチして、参考にしながら、悔いのない就職活動をしてほしいです。
―――グローバルで活躍されている方ならではの生の声、たくさん聞かせていただきました。本日はお忙しい中、ありがとうございました!