<企業紹介>
「アドバイザリー仲介型」と「プラットフォーム型」の両方を掛け合わせた、独自のサービスモデルを強みとして2017年8月に設立されたFUNDBOOK(2021年7月、株式会社fundbookに商号変更)。高い専門性を持つ6つの部門と、エリアや業種を超えたマッチングを実現するプラットフォームによって、従来の課題である属人的なM&Aを解決し、精度の高いM&Aの実現をサポートしている。
<人物紹介>
株式会社fundbook
執行役員戦略人事本部長
市川 智久 ※写真一番左
大手住宅メーカーを経て、2014年に株式会社Buysell Technologiesへ入社。採用戦略策定、人事制度構築、労務管理、人材配置、組織活性、上場準備等に従事。2018年当時最年少で執行役員就任。翌年12月に東証マザーズへの上場を果たし、組織成長をリード。2020年2月にfundbookへ入社。2021年7月、当社執行役員に就任。
山下 ※写真中央
東京大学大学院
国際保健学を専攻。小・中・高・大と野球に打ち込んできた体育会系。自分の専門性をもって会社や人の成長を後押ししたいと考え、金融業界を中心に就職活動を行う。新しいスタンダードをつくり、社会に影響を与えられるような仕事を志す。
岡崎 ※写真一番右
慶應義塾大学
産業組織論を専攻。アーチェリー部に所属し、インカレにも出場する腕前の持ち主。日本社会を豊かにすること、そして自分の20代すべてをかけて没頭できる仕事を目指して就活中。M&A業界のほか、不動産ディベロッパーや証券会社を中心に就職活動を行う。
オフラインでM&A仲介サービスを疑似体験
―――はじめに、貴社で開催されているインターンシップの概要について教えていただけますか?
市川:fundbookでは、M&A実務の実践的理解と、ビジネスパーソンとしての能力開発を目的とした3日間のインターンシップを実施しています。内容は、第一部が譲受企業へのM&A戦略提案、第二部では選定した譲渡候補企業に対して実際の提案をする二部構成。企業の経営戦略の一環としてのM&Aを、疑似体験してもらうワークショップとなっています。
―――なぜ、このインターンシップが企画されたのでしょうか? 意図や背景を聞かせてください。
市川:大きく2つあります。まずは就職活動をする学生にとって、自分のキャリアのために本当に正しい選択をしてほしいということ。ビジネスに向き合うとはどういうことか、市場価値が高いスキルとは何なのかをこのインターンを通して理解してもらいたいんです。ときに、M&Aは「ビジネスの総合格闘技」と呼ばれます。どんな業界や仕事でも使える汎用性の高いビジネススキルを身に着けられる場所ですし、M&A業界は着実に伸びているマーケットでもあります。せっかくビジネスの世界に踏み出すのであれば、飛躍的に成長できる場所を選んでほしいという想いから、この能力開発型のインターンシップを実施しています。
もう1つは、単純にfundbookよりもM&A業界に興味を持ってもらいたかったから。この業界は金融やコンサル業界の一業種として認識されることが多いのですが、先程お話ししたように圧倒的な成長が約束されるだけでなく、自分の努力次第では高額なインセンティブももらえますし、社会的な貢献にも繋がります。まさに「三方良し」の業界にもかかわらず、まだまだ認知が不足しているんです。私は、M&A業界に属している人たちの能力がどれだけ高いかを知ってもらい、新卒の選択肢の一つにM&A業界を選んでほしいと考えています。このインターンを通じてそうした理解が広がっていくことで、業界全体が盛り上がるきっかけになればいいなと思っていますね。
―――実際に、ワークショップではどのような取り組みをされたのでしょうか。
市川:ワークは、3~4人が1チームになって取り組みます。まずは、譲受企業に対してリサーチや分析をしていただき、M&Aを活用してどう会社を成長させるべきかを考えることからスタート。譲受企業へのM&A戦略の骨子は、既存事業の拡大、バリューチェーンの効率化、既存のアセット(人・事業)を基軸とした新規事業創出に分かれます。これらの中から譲受企業の事業戦略にマッチした提案内容を策定し、プレゼンテーションを実施。その後は、譲渡企業の候補となるターゲットリストを提示し、最適な企業を選定します。このようにして、アポイント取得からM&A提案をするためのストーリー立案、プレゼンテーションまでの一連の流れを体験してもらいます。特に譲渡企業を選ぶためには、オーナー個人の想いだけでなく、会社の代表者としての感情や成長戦略、そして業界を取り巻く環境を理解することが重要です。また、ワークの合間には“事業戦略としてのM&A”についての説明や、実践的な営業スキルを身に着けるレクチャーの時間も設けています。ただの座学にならないよう、当社役員よりビジネスのリアルな話や、学生の実体験と照らし合わせた分かりやすい例え話を用いながら構成しました。
―――実際にインターンシップに参加した学生のお二人にもお話をお聞きします。それぞれ、参加されたきっかけを教えていただけますか?
山下:お恥ずかしい話なんですが、僕自身ずっと野球一筋の学生生活を送っていたため、ビジネスについてあまり理解のない状態で就職活動に臨むことになりました。とにかく何でも勉強しようとインターン情報を探していた時、たまたま見つけたのがfundbookのインターンシップだったんです。M&A業界は仕組みがかなり難しいですし、実態も見えにくい。学生であればなおさらです。だからこそ、実際に参加することによって、正しく理解したいと思いました。インターンシップの参加が決まって、第一線で活躍されている社員の方々と、直接交流できる貴重な機会なのですごく楽しみにしていました。
岡崎:僕が就職活動をはじめたのは、大学2年生の3月。そこから自己分析や業界分析、OBOG訪問をはじめていたので、自分の目指す姿や志望業界などの軸は早々に固めていました。不動産ディベロッパーや証券会社を中心に活動していたのですが、先輩の紹介でfundbookのインターンをすすめられ、説明会に参加したのがきっかけです。自分の企業選びの軸は、日本社会を豊かにできる仕事ができ、自分の20代をかけるに値する魅力ある会社で働くこと。fundbookであれば、それが実現できると確信し、インターンに参加してみたいと強く思いました。
―――インターンに参加をしてみて、率直な感想を聞かせてください。
岡崎:一言で言うと、お金を払ってでも参加したいインターンだと思いました。他の会社であれば、この業界がいかに素晴らしいか、その中で自社がどれだけアドバンテージを持っているかという説明にとどまっている印象があったのですが、fundbookのインターンは全然違っていました。本当の意味で、得られるものがあったインターンだったなと感じています。
山下:同感ですね。ほとんどの企業が自社の魅力を伝えるだけの説明会だったり、オンラインという形式でビジネスの実態が見えにくい部分が多かった中、fundbookのワークショップは仕事をリアルに疑似体験できるものでした。ワークの難易度は本当に高くて、3日間で終わらないのではと思ったぐらい。ただ、これが本当の仕事になった時、きついけどやりがいをもって取り組めそうだなというイメージがすごく沸きました。
たった3日間で、ビジネスの「本質」を捉えられるようになった
―――インターンシップで一番学びになったのはどんなことですか?
山下:レクチャーとワーク、両方で学びがありました。レクチャーを担当していただいた役員の方の説明がシンプルに構造化されていて、とても理解しやすかったので印象に残っています。話し方や内容も含めて、自分もこんな風に思考できる人間になりたいなと率直に感じました。ワークではロールプレイング形式で、社員の方が相手企業のオーナーを演じてくれたんですが、直接対面で商談をすることで、相手の表情や声色から読み取る有機的なコミュニケーションが、いかにビジネスで有要なのかを体感できましたね。
岡崎:僕にとって一番大きかったのは、「二項対立」という物差しを得られたことですね。これは論理的思考の基礎として教えていただいたものなのですが、たとえば、ここは自分の意見を通す場面なのか、通さない場面なのか。情理で攻めるべきなのか、論理で攻めるべきなのか。二分する考え方を意識することで、本質的な課題やその解決方法を明確にしていく。とてもインパクトがあったので、インターンの3日間だけでなくいまだにその思考法が身に付いています。fundbookのインターンは、一貫して相手の意思決定を促すワークになっており、それがいかに重要で難しいことなのかを肌で感じられたので、すごく貴重な経験となりました。
―――正直なところ、ワークは大変でしたか?その中でご自身が特にこだわったことなどあれば聞かせてください。
山下:ワークの負荷は非常に高かったです。参加している学生が優秀な人ばかりなので、他のチームに触発されて危機感を覚えたり、自分ももっとやらなきゃという気持ちになりました。ただ僕は、その中で顧客が何をしたいのかを忘れないようにしたことを、特に意識しましたね。チームで取り組んでいく上で、議論が進まなかったり脱線してしまったりすることのないよう、そもそも何のためにこれを考えているのか、という共通のゴールを常に意識していました。そもそもみんな優秀なメンバーなので、議論が脱線するような心配は必要なかったかもしれませんが(笑)、結果的にうまく進めることができたんじゃないかと思っています。
岡崎:負荷はもちろんあるんですけど、チームで一つの方向性を目指して、議論を深めていくことが一番大変でした。みんな個性があるし、頭の良い人が多いので、いろんな意見が出るんですよ。限られた時間でそれらをまとめて、個人ではなくチームとして一つのアウトプットを出すのは非常に苦労した点です。僕も、最初は目立ってやろうとか、自分をよく見せたいとか思っていたんですが(笑)、みんなそれぞれ良いところがあるので、どうすれば一人ひとりの良さを引き立てることができるのかと考えるようになりました。僕だけでなく、チーム全体でそういう流れになっていけたのかなという気がします。
―――参加した他の学生からは、どんな声が集まっているんですか?
市川:インターンの最後に回収するアンケートを抜粋して読み上げると、岡崎君が話してくれたように「一言で言うと、お金を払ってでも参加したいインターンだった」「採用担当者、現場で活躍している社員、役員と多くの方々が遠慮することなく、真剣に向き合ってくれた」「3日では考えられないほど得るものが多かった」「常に社員さんたちが近くにいて、アドバイスだけでなく、仕事の苦労ややりがい、キャリア等について真剣にお話しいただけた。気になった部分をしっかり聞くことができ、より仕事の解像度が上がった」」など、非常に多くのポジティブな声をもらっています。我々としても、全社一丸となって取り組んだインターンシップだったので社員に対する感謝のコメントも多かったですね。
業界が伸びているから、会社も人も成長する
―――お二人は他にもインターンシップに参加されていると思いますが、他社との違いを感じる部分はどんなところでしょうか。
岡崎:ビジネスの世界では「合理的且つ情理的」な振る舞いが求められるといいますよね。つまり、 市場や競争など経済の合理性に強いだけではなくて、人間性に対する深い洞察や思いやりなど、人の情理にも強くないといけないということです。その点ですと、fundbookは他の金融系企業と比べると「情理」にフォーカスする方が多かったように感じました。自分が話したときに相手はどう思うのか、どう行動すれば相手の心をつかめるのか。そういう観点でアドバイスをいただけたのがとても新鮮で、学べることが多かったです。
山下:そうですね。確かに、社員の皆さんは学生のことを考えながら、助言していたような気がします。ワークの途中、理解できない点があると社員の方に質問をするんですが、ワークに対するアドバイスや答えだけじゃなく、それを解決する上でどういう考え方をするべきかという、一つ視座の高いアドバイスをもらえるんです。ワークに参加すると、少しでも議論を前に進めるためにすぐ答えを求めようとしがちですが、もっと先を見据えて、僕らの未来のためにサポートをしてくれていると感じました。
―――やはり社員の方の存在は大きかったんですね。市川さんが、参加する社員の方に向けて伝えていることはあるのでしょうか。
市川:学生を一人のビジネスパーソンとして扱おう、ということは強く話しています。インターンシップは採用活動の一環ですが、先ほども申し上げたように自社PRが目的ではありません。このインターンシップを通して学生に少しでも“戦闘力”の高いビジネスパーソンになってもらうこと。そしてM&A業界を盛り上げるために、仕事の魅力をしっかりと伝えていくことを大切にしています。
―――きっと、それが学生にも伝わっているということですね。今後、改善していきたいポイントなどは何かありますか?
市川:まずはもっと多くの学生に参加してもらえるように、回数を増やしたいと思っています。また、ワークの内容とも改善の余地はまだまだあります。M&A業務をよりリアルに疑似体験できるように、細かい部分も改良していく予定です。次回のインターンシップはさらに期待してほしいですね(笑)
―――最後に、就職活動中の学生に向けて、アドバイスをいただけますでしょうか。
市川:採用活動は企業のPR合戦になりがちです。学生自身には、きちんと業界や会社、そして仕事の本質を見てもらいたいです。良いところばかりを見ると失敗してしまうことも多いので、業界や会社が抱える課題など、ネガティブな要素にも逃げずに目を向けてほしいなと思います。最後の意思決定は感情的要素が多いかもしれませんが、まずは冷静に「市場は伸びているのか」「会社は成長しているのか」「社会的意義があり、専門性、汎用性が得られる仕事か」といった要素を見定めるべきです。先程、「合理と情理」の重要性を岡崎君にお話しいただきましたが、就職活動においてもそれは同様。この2つのバランスを取りながら、有意義な就職活動をして頂きたいと思います。